クロノーラ・クロニクル

第3章 旅は道連れ世は情け、人はデコボコ道中記

第44節 破壊の灯

 あの後、ラーシュリナはシャルアンとずっといろんな話をしていた。 彼女は思い悩んだりいろいろとどうしようか悩んでいるようだったが、シャルアンはずっと真剣に話を聞いていた。
 ディアは例のシェルターを試すため、その場で展開してみると……これは簡易型のテントとしてはとてもちょうどいいものだった。 無論、そうなるとクラナの夜の過ごし方次第となるわけだが、そこはやはりシルグランディア製というだけあってか、 なんとも素晴らしいベッドが! このシェルター……使える!
 するとそんな中、ラーシュリナがシャルアンを連れてシェルターへとやってきた。
「すみません! みなさんにお願いがあります!  あの……彼女を、シャルアンを――彼女があんなことしておいて頼むのは承知の上でなんですが…… みなさんの旅のお供として同行させていただけませんか――?」
 マジで!? それにはレイとディアとウェイド……いや、前者2人が食いついた。
「ええ、是非にお願いいたします! ええ、是非にお願いいたします! ええ、是非にお願いいたします!」
 色ボケクソウサギはそう即答した……ラーシュリナが仲間になる時のレイと同じリアクションすな。
「ごめんなさい! 私、あなた方にすごい迷惑をかけてしまいました!  だから、その――贖罪としてみなさんのお手伝いをさせてください!」
 うーん、どーしよ――レイは考えながらクラナに訊いた。
「一応、あんたが旅のリーダーなんだから、あんたが決めちゃいなさいよ」
「是非にお願いいたします! 是非にお願いいたします! 是非にお願いいたします!」
 うっさい色ボケクソウサギ黙れ。
「そっ、そっか……なら……ラーシュリナが言うんだから私はいいんじゃないかなって思うけど……」
 そう、ラーシュリナが言うのなら大丈夫! レイの中ではそれだけである。
「いやったあ! ということで、シャルアン様が仲間になった!」
 色ボケクソウサギは興奮していた。
「そして色ボケクソウサギを外す――フッ、我ながら名采配だな――」
 レイはそう言ってかっこつけていた。
「そっそんな! いえ……大変申し訳ございません! 美しき、素敵なレイ様!  どうか、どうかこのクソウサギめにもチャンスをお与えください!」
 調子のいい色ボケクソウサギは土下座を……ウサギの土下座ってどんななんだろう。

 シャルアンが仲間に加わった。結局、彼女はどういう扱いなんだろうか。 プリズム族の掟? なんか、結構しごかれそうな予感……
「すみませんみなさん、シャルアンの件については他言無用でお願いします、 もちろん、私たち同族のプリズム族にもです。 もし、ダメというのなら……その時は仕方がありませんが――」
 ラーシュリナはそう言った、まさかの内密案件か。
「うん! 私はヒミツにしておくよ、だって、そのための贖罪の旅なんだよね?  みんなもそれでいいよね? ウェイドさん!」
 レイは元気よくそう言うと、ウェイドは焦っていた。
「は……えっ!? な、なんで私に振るんですか!?」
「シャルアンは色っぽくて可愛いからウェイドさんなら二つ返事で”はい”って言ってくれるかと思ったんだよ♪」
 冷や汗が止まらないウェイド、どうしてこんなことに――彼はむしろ悩んでいた。
「ふっ、何のための掟なのやら――」
 マグアスは呆れていた。
「かといって、これから反省の旅に出ようという娘を応援しないって言う選択肢は私にはないよ。 それに……マグアスっていう偏屈と話をするのも疲れるから私としてはちょうどいい話し相手が増えて大助かりだけどね」
 クラナにそう言われてマグアスは悩んでいた。

 この山の洞窟遺跡らしき場所に”破壊の灯”がある―― ガトーラからそう聞かされていたレイたち、それらしい場所を見たことがあるって言うシャルアンの案内でその場所へとやってきた。 確かにそこには洞窟があったが、そんなに深くはなく、中には泉のようなのものが広がっているだけだった。
「まさか――これは”アーティファクト”か!?」
 マグアスは驚いていた、アーティファクトだって!?
 アーティファクトというのは、平たく言えば大いなる力を秘めたアイテムのことであり、 人の手によって作られたものというのが前提にある。 似て非なるものとして”オーパーツ”というものもあるが、 そちらはどうやってそれが存在しているのか、そもそも人の手で作られた代物なのか、それがわからない点で区別される。
「この灯は世界が滅びを迎えるときに燃え上がるのだ……まさか、聖獣ラグナの古い記憶の通り、存在していたとは――」
 えっ、存在していることを知っていたのか、クラナは訊いた。
「いつの記憶だい?」
「……それは10億年前のことだ、その当時、この炎が燃え上がったことがある。 しかし、時代の英雄たちによってこの炎はとどめられた――当時の邪悪を滅ぼした結果ということだな」
 なんだかやたらとその10億年前のアーカネリアスの時代に縁のある冒険だな、レイはそう思った。
「うーん……10億年前か、私じゃあ記憶を引っ張り出すには時間がかかるね。 まあいいさ、で、どうやって回収するんだ?」
 クラナはそう訊いた、確かに、灯というからには炎があるはずだがそんなものは何処にもない、泉が広がっているだけのようだが――
「ディア、エンチャント素材を持っているか?」
 マグアスはそう訊くとディアは何やら透き通った鉱石を取り出した、エンチャント鉱石ってやつか。
「よし。本当はもっとパワーの強い”精霊石”という代物が欲しいところだが、 流石にお前が持っているだけあって純度の高いものだな……」
 そう言われたウサギはなんだか得意げだった。

 そして、マグアスは何やら魔法を唱え、泉の上に炎を発射すると、泉は炎で燃え上がった! どうなっているんだ!?  そのうち炎は収まり、やがて消えていった……炎がそのエンチャント素材に吸い込まれていくようだ……。 すると、その素材は青い炎のような揺らめきを宿した物体へと変わっていた。 それを、マグアスはレイに手渡した。
「これが”破壊の灯”だ」