ということで、調査している連中の1人であるイドラス、
早速調査のために、まずはとある人物の元へとやってきた、それは――
「え、またリリアさんを軟禁したんですか……
あの人、多分10年……いや、100年ぐらい閉じ込めておいてもピンピンしていると思いますけど――またやってるんですか……」
ラシルである、彼は唖然としていた。
「それで、今回は何ですか?」
イドラスはリリアリスの発言について訊ねた、すると――
「え? 病人ですか? さあ、そこまでは――僕は知らないですね。
僕よりももっと親しい人に訊いたほうがいいんじゃないですか?」
イドラスは考えた、親しい人……自分たちはあくまで貴族会の味方ゆえにその時点でフェアではないのだが、
だからこそ話を取り上げる相手は慎重に選ばないといけない状態である。
しかし、何も聞かずに話を進めるわけにもいかず、親しい人に訊けと言われてしまったからには――
間に置かれている彼にとっては非常に苦しい判断である。
少なくとも女性陣から聞いてはいけないとは言われているのでそこまでは守ろうと考えた彼だった。
このとおり、リリアリスへの嫌疑については基本的に濡れ衣であることはだいたいわかっているのだが、
これは貴族たちからの仕返しということである、何が何でも彼女を貶めたいということである。
次に彼が向かったところは――
「なんだ? まさか、リリアリス案件か?」
と、そいつは言った、クラフォードである……この人はいつもリリアリスからは嫌がらせを受けているから――
よし、いけそうだ! イドラスはそう考えて話を聞いた。
「え!? リリアリスが被疑者!? ……なにしたって?」
そもそも彼女が何故被疑者なのだろうか。クラフォードはしっかりと聞くことにした。
「つまりは横領に収賄ってことか……確かに知能犯ではあるが、
知能犯だからこそそういうところは避けて通っていると思いたいもんだな」
確かに、それは一理あるが――イドラスはリリアリスの言い分について訊いた。
「ん? ああ確かに、なーんか薬作ってるって言ってたな。
それに、一緒に作っているリファリウスとかは泣きながら作っている所とか見たことあるからな、
もしかしたらそれはあるかもしれないぞ――」
え、なんかむしろ彼女に味方する内容なんじゃないかそれは。
しかし状況証拠ゆえに真とも言い切れないか……イドラスはほっとしていた。
「そうだな、グレート・グランドの大使としては……
俺よりかは薬の効能を知っているリファリウスかヒュウガ、後はオリエンネストってやつか、
何ならうちとも関係がある薬剤師のイリアあたりを呼んでやるけどどうだ?」
だんだん話が広がっていく……イドラスは焦っていた。
「なんだと!?」
イドラスは上司にこっぴどく怒られていた。
「それでもしも、もしも貴族会様がご機嫌を損ねられたらどう落とし前をつける気だ!」
イドラスは平謝りしていた。
「そ、そんなこと言われたって……誰に聞けばいいのかわからないじゃないですか――」
「誰にって決まっているだろう!? 騎士たちに聞けばよいのだ!
それなのに、よりにもよって何故グレート・グランドの大使に訊いているのだ!?
あの国の大使の証言を無視しようものなら、それはそれで問題となるだろう!?」
イドラスは反論した。
「お言葉ですが、騎士たちから訊いた結果に彼に行きついたのです。
最近やたらと出入りしているようなので彼に訊いたほうが早いですよと口をそろえて言いますし――」
「そんなもの無視すればよかろう!」
「それがそうもいかないんですよ、というのも例のあの”ポリト”なるもの……
あれの記録では大使は頻繁にリリアリスさんの元へと出入りしているようなので――」
「な、なんだとっ!? この役立たずがぁ!」
それは問題発言では……?
「も、申し訳ございません。
あ、あの、でしたら――今回の調査から私を外してはいただけませんか?」
だが、それについては――
「何を言っている! 貴様がやらぬば誰がやるというのだ!」
ブラック企業はまだここにも残っていたようだ。
「これ以上は無理ですって! 以前にも家宅捜索したでしょう!
あの人はとにかくクリーン……いえ、暴くのはムリなんですって!
なにせあのアガロフィスを暴くほどの人なんですから自分の脇なぞしっかり固めているハズです!
例え何かしらの悪いことをしていても……いえ! 企みをとにかく暴かれんとばかりに!」
どうやらイドラスはリリアリス擁護派のようだ、そんな発言が時折感じられる。
だが――
「そうとも! だからそれをやれと言っておるのだ!
あの女にアガロフィス様を暴けて我らにあの女を暴けぬはずなどないのだ!
そうだろう!? さあ! さっさとやるのだ! 無論、捏造でもいい!
あの女を貶め、貴族会様が満足するような報告をするために行ってくるのだ!」
完全にブラック企業だな――イドラスは悩んでいた。