とにかく、何でもかんでも(本人の意に反した男人気が好調な以外は)うまくいっているように見えるリリアリス、
水面下では数倍も努力していて実を結び、なおかつ運まで味方をして追い風気味に順調に行っているように見えるのだが案外そうでもない。
「リリアさん……本日もよろしいですか?」
いつものテラス、とある者が彼女にそう訊くと、リリアリスは……
「またー? まあそうね、しゃあないか――」
リリアリスは悩みつつもしぶしぶと立ち上がり、建物の中へと消えていった。
その様子をアリエーラが心配そうに見つめていた。
問題は数か月前からさかのぼる。
何人かはリリアリスだからあっさりと交わすハズだろう――
そう思っていたのだが問題はどうやらそう簡単に解決することはなかった。
「遅いぞ! 何をしていたのだ!」
リリアリスがとある部屋へと入っていくと、何者かが急に怒鳴りつけてきた。
「何って何よ、”いつ”呼びつけて、それから私が来るまでどのぐらい時間がかかっていうのよ?
情報の伝達手段は? 人伝オンリー? 火急の要件だったらもう少し前もって、
人伝以外での伝達手段だって――」
と、いつものリリアリス節ではあるのだが――
「口答えをするな! 貴様は被疑者なのだぞ!」
そう、被疑者リリアリスという件である、彼女にはとある嫌疑がかけられていたのだった。
目の前にはお城の大役3名……例の貴族会の息がかかった連中の残党といったところである。
まだ残っているのか貴族会、しつこいな。
「あら? 被疑者だったかしら? 前回そう言って空振りだったことお忘れではないかしら?
つまり今回も参考人……任意よねぇ? 前回わざわざ自分から出頭してあげたって言うのにまた随分な言いようねぇ。」
「だから口答えをするんじゃない! さては貴様……隠蔽を図ろうと時間を稼いでおったな!」
「口で答える以外にどうやって答えんのよ? 手話とかのほうがよかったかしら?
ちなみにこう……で”言っている意味伝わる?”って表すのよ。
いやいやまさか、しゃべれるのに筆談って非効率なことはしないわよねえ?
それに隠蔽だなんて……私が何を隠さなきゃなんないのよ?」
相変わらずの彼女節だが大役3名はただただ黙れの一点張りである。
「はいはい。
なんでもいいけど時間のムダ……あんたたちにはいくらでも時間があるんでしょうけど私にはやることがあんのよ。
だからさっさと話を始めてくんないかしら?
あんたたちこそ、下手に時間稼ぎするつもりならそれ相応の責任を取ってもらうわよ。」
「何を言うか!? 勘違いしているようだが貴様は国家を冒涜するような行為を行ったのだ!
そんなことをしておいてタダで済むと思うか!」
「だから証拠もなければ根拠もないって言ってんでしょ。
前回それで人のことを3か月も閉じ込めておいたくせに何にも出てこなかったんでしょ?
それで私の潔白が証明されたんだから言いがかりはよしてくんないかしら?
それに……私の用事ってのは人の命がかかっていることなのよ。
だからそれでもしものことがあったら……あんたたちまとめて訴えるからそのつもりでいろよな。」
「ふっ、自分が不利だとわかった途端に……そのような世迷言を誰が信じるというのだ?」
「そう、信じてないから訴えるのよ、とりあえず警告はしたからね。」
「だからそのような嘘を誰が信じるのかと言っている!」
「私は本当のことしか言ってないんだけど。
リファリウスが薬作ってんでしょ? 共同制作ってやつで、私がいないことには完成しないのよ。
その薬の薬効成分を調べれば十分その根拠になると思うんだけど?
有識者なら100%白だって認めてくれるでしょうね。」
大役3名を相手にしてもリリアリスは譲らない。彼女は呆れていた。
リリアリスを取り調べしている間、連中の調べも進んでいた。
「あの女、変なこと言い出したらしいぞ」
「人の命がかかってるって話だろ? もう少しマシな嘘をつけばいいものを――
これまで散々クラウディアスをひっくり返してきたクセになんともまあお粗末な言い分だな」
連中の息がかかった者たちは話し合っていた、取り調べの情報はすぐに彼らにリークされるのだった。
「だが、上は一応調べとけって言ってきたぞ?」
「はぁ? 調べるのかよ? そんなん調べなくたってわかりきってることだろ?」
「それこそアガロフィスを暴いたりエルクレンシャルを買収したりする女だぞ、あっさりな……。
だからとりあえず調べとけってお達しだ。
それこそ、その内容が嘘だったら偽証罪に問えるからな、そういう判断じゃねえのか?」
「なるほどな! それなら手っ取り早く送検できるしな!」
「それに例え真だとしてもあの女が急ぐほどなのかっていうこともあるだろうしな。
このご時世……自分で医療制度整えておいて何言ってんだって言う判断もできるしな!」
「なんだよ! 案外、あの女を落とすのも簡単だな! まさか墓穴まで掘っているとは!」
と、何から何まで彼女にとっては不利な状況であることが物語っているようだ。
無論、嫌疑と言っても決定的な証拠があるわけでもなく、ただただ時間だけが過ぎていく……。
しかし、その時間さえも惜しいらしいリリアリスなのだがそちらの根拠もこれまでの話からはまだまだわかりにくいことがある。
さて、この話はどこに落としどころがあることやら……。