焼き鳥の大将の女性の好みに関連する話としてこんなことがあった。
それはクラウディアスの1階の横庭でのこと、クラフォードは悩んでいた。
「どうしたんだ?」
イールアーズは何事か訊いてきた、内容が内容なのでクラフォードは言おうかどうか悩んでいたが――
「この際だからお前がどう考えるか訊いてみるか。
いやな、実はバフィンスがとんでもないこと言っててな――」
そのとんでもないことというのはある意味想像を絶する内容だった。
ティルアのシステムルームなる場所へとやってきたクラフォード。
「わかった、クラフォードのやつはあんまり役に立ってねぇってこったな!」
そこではバフィンスがモニタ越しに誰かと話をしていた――って、リリアリスじゃないか……。
んだよ、陰口かよ……クラフォードは悩んでいた。
「そうなのよ、できるとこはできるんだけど――」
「だな、修行が足んねえってこったな!」
どーせそーだよ、クラフォードは話を聞いて呆れていた。
「さてと、そろそろお暇するわね。」
「おう! また連絡してくれや!」
などと言いつつ、ウェブ会議を終えていた。そして、バフィンスはクラフォードの存在に気が付いた。
「ん? なんだよ、帰ってきてやがったのか」
クラフォードはキレ気味に言った。
「ああ、まさか陰口叩いているたあ夢にも思ってなかったけどな!」
しかしバフィンスはそんな話題には一切触れもせずに話し始めた。
「にしてもリリアリスってイイ女だよなぁ!
どうせだったらああいう女を嫁にしろ!」
はぁ!? クラフォードは耳を疑っていた。
「いやいやいや! だって、リリアリスだぞ!? 俺はパスだ!
大体なんであんなのがいいんだ!?」
訴えるように言うクラフォードだが、バフィンスは――
「はぁ!? なんでってなんだぁ!? おいおいおい……テメェの目は節穴かぁ!?
ちゃんと見てみろよ! どっからどう見ても美人のイイ女じゃねえか!
スタイル抜群でぼんきゅっぼんで乳もすげぇでけぇしセクシーな女だろ!」
むしろ妙に前向きで、クラフォードはずっこけていた。
「あのな……。
言っとくけどあの女、見た目はそうかもしれんが結構な破天荒だぞ、
言ってしまえば無茶苦茶だ――男勝りで、下手すりゃあ地獄を味わう……」
それに対して賢者バフィンスは語り始めた。
「けっ! まだまだガキだな、テメェは!
いいか!? そもそも女ってのはなぁ、得てしてそう言う生き物なんだよ!
女ってのはもともと強え生き物なんだよ!
だからその分には腹くくるしかねえわけだが……そいつがわかってりゃ別に大した問題じゃねぇ!
だが最初っから強ええんだったら返って好都合じゃねえか!
最終系が見えてる以上は特別がっかりすることもねえからな!
だったら美人でおっぱいおっきいセクシーな姉ちゃんのほうがいいに決まってるわなぁ?
それにリリアリスっつったら頭いいしいろんなもの作る能力とかもあるし、
そして何を隠そうクラウディアスの特別執行官様じゃねーか!?
こんな見た目ステータスと実利ステータスを両立した無茶苦茶スペックが高ぇ完璧な女、滅多にいねぇぞ!
こりゃぁ早いうちにキープしとかねえとぜってぇに誰かに先を越されるぜ!」
なるほど、それはそれは――確かにそういう観点では魅力的な物件なのか――
クラフォードは呆れながらそう考えていた、だからと言って彼がリリアリスを恋愛対象に含むことはないが。
それに確かに……もしかしたらあのオリエンネストに先を越されるかもしれないが、
別に越されたところであのリリアリス、まったく惜しくはないな――クラフォードはそう思った。
つか、あの女がそもそも将来の相手にあの男を選ぶこと自体微妙なんだが。
だが――バフィンスの考えについては実はある程度年齢いっている方々なら同調する意見であり、何気に男人気もあるリリアリスだった、
特に妻子持ちの男性陣、しかも年齢層があがるにつれてリリアリスを支持する悟りを開いた賢人ジジイが多い傾向である。
「しかもプリズム族の血を含んでいる精霊様ってことは、
歳いってもおっぱいおっきい美人のセクシーな若い姉ちゃんのままってことなんだろ!
こんなん損するどころか得でしかねえじゃねえか!」
……クラフォードは話の続きを訊かずにそのまま立ち去って行った――。
そんな話を聞かされたイールアーズ、この手の話題には関心を示すわけないだろうと思ったクラフォードだったが――
「そうだな、バフィンスの言うことには一理あるな――」
何だと!? クラフォードは耳を疑っていたがそこは流石のイールアーズ、彼らしい返答が返ってきた。
「見た目も恋愛も興味ねえからどうでもいいんだが、
確かにリリアリスっつったら無茶苦茶スペックが高ぇ女ってのは同感だな、
しかも最強の”ネームレス”を謳い……随分前の仮も返してねえしな――」
と、最後らへんはなんか妙に闘志を燃やしていた、それって言うのはつまり――
「お前、まさか――」
イールアーズは頷いた。
「でも確かに――今の俺にはバフィンスの言ういい女ってのがよくわからねえんだが、
それだけの女を死闘の果てに負かして自分の女にしちまうってのも面白いかもしんねえな!」
こいつ――やっぱり頭の中はバトル中心かよ、クラフォードは呆れていた。
だが、彼のような存在は実はあまり珍しくもなかった。
「これはこれはリリアリス様! わざわざお越しいただいて――」
クラウディアスの1階の横庭、先ほどの話が終わってしばらく待っていたクラフォード、
今日もか――と思いながらその光景を見守っていた。
「ったく、人気者は辛いわねえ、早速始めちゃう?」
「はい! よろしくお願いいたします!」
が――
「おっそい。」
リリアリスは相手の男に対して強烈な蹴りを一撃! 男はその場で崩れ去ってしまった。
「や、やはり強い……」
リリアリス、悟りを開いた賢人ジジイ以外にも”そんなに強いのなら一度手合わせ願いたい層”にも人気がある件について。
「あら? クラフォードじゃん、相変わらず暇なのね。あんたもやる?」
いいえ! 結構です! 間に合ってます! クラフォードは全力で首を振っていた。
「いいからこっちに来なさいよ!
あんたんとこのオッサンにも修行が足らないって言われたばっかりでしょ!
私がブチころ――鍛えてやっから遠慮すんじゃねえ!」
いや本音! その後、クラフォードの姿を見たものはいない……