エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ライフ・ワーク・ログ 第1部 風精の戯れ 第3章 安定の策士ライフ

第33節 ねぎらい

 大人女子会は始まった。 最初は腹ごしらえとしてレストランで食べる!  まだ最初の店なのにリリアリスはいきなり飛ばしている……。
 続いて……スイーツバイキングの店に行くこのタイミングで、 もはやこれがメインと言わんばかりに数多の女子たちが合流してきた、 やっぱりエンブリアでも女子は甘いもの大好きか。 なお、レストランもパティスリー工房も、そしてこれから行く焼き鳥屋もシルグランディア系列である。 お支払いについてはいずれの店でもオーナーによる優待割引が利いている。

 多くの女性たちと別れた後、次に向かうは隠れた名店の焼き鳥屋。 リリアリスも足しげく通うほどの店ゆえに期待は高まる。
「これはこれはリリアリス様! 本日はようこそおお越しくださいました!」
 と、そのセリフがどう考えても似合わない少々厳つめの大将が言うと、リリアリスは――
「こーら! だから、それやめろっつってんでしょ!」
 と、もんくを言った。
「あははははっ! 冗談だよ冗談!  また来てくれたんだな! オーナーの姉ちゃんよ!」
 と、今度はその見た目にぴったりのセリフだ。
「えっ!? 席数これだけ!?」
 フィリスは驚いていた、大将の前のカウンター席12個と妙に少ない小さな店である。
「だから隠れた名店なのよ。ねっ! 大将!」
 リリアリスは嬉しそうに言うと大将は嬉しそうだった。
「にしても、いつもいつもオーナーの姉ちゃんが来てくれるたぁ嬉しいねぇ!  さあさ、姉さん方! お好きな席に座った座った!」

 リリアリスはいつもの大将の目の前、そしてカスミはその隣である……やっぱりいるのね。 そしてそれ以外の女性陣は思い思いに座っていた。
「またその話……。だからってなんで私なのよ! ホント、マニアックな男って多いわよねぇ!」
 それは大将の好みの女性の話だった……それがまさかのリリアリス……
「そうよねぇ! やっぱりリリアって頭一つ抜けてる感じがするわよねぇ!」
 フロレンティーナが話に参加してきた。
「んなわけないでしょ!  こんな、男とくれば平気でボコボコにするような女のどこがいいってのよ……」
 リリアリスは呆れていると大将は答えた。
「んなこと言ったらうちの母ちゃん(=妻)も似たようなもんだぞ?  昔はあんなんじゃなかったんだが今ではなぁ……。 言っても、女ってのは基本的に強えぇもんだからなあ、オーナーの姉ちゃん見てっと改めてそう思うよな」
 フロレンティーナは考えた。
「母は強し……女性は子供ができると必然的に強くなるってやつね。 そう考えれば女はリリアみたいに最初から強かろうがそうでなかろうが大した違いじゃないってわけね」
「そういうこった! だから俺としてはオーナーの姉ちゃん様が一番!  そして敏腕秘書の姉ちゃん様が二番って決めてんだ!」
 敏腕秘書? まさか……
「え? それって私!?」
 フロレンティーナは驚きつつも、調子よく答えた。
「あら♪ 大将のお眼鏡に叶うだなんて光栄ね♪」
「姉ちゃん、色っぽくて気が強ええとこがまたたまんねえんだよなぁ……」
 気が強いのが好み……
「だったらフローラ一番にしなさいよ! なんで私を一番にすんのよ!  ったく! どいつもこいつも物好きな連中ね!」
 リリアリスは呆れていた。 リリアリス、オーナーの言い分のようにやたらと人生の先輩方に人気な件。

 会食スタート。オーダーはおまかせストップ制、 それとは別にあれ食べたいと言えば特別に出してくれることもあるというスタイルである。 但し、飲み物は別で……
「嬢ちゃん何飲む? 今日は嬢ちゃんのためにいいもん仕入れといたぜ!」
 大将は気さくに訊いてきた、今度はカスミだ。
「じゃあそれ飲む」
 大将の後ろにいる弟子がカスミの前に出した。
「はい! 龍殺しっす!」
 純米酒だ!
「あら! グレート・グランドの隠されし銘酒!  いよいようちにも入ってきたってわけね! 私にも注いでくれるかしら?」
 リリアリスは嬉しそうに言った、それに対してフロレンティーナが心配……
「あれ? リリアって飲めないんじゃなかったっけ?」
「ちょっと弱いだけ、飲めないなんて言ったことないわよ。さあさ、早く早く♪」
 リリアリスは嬉しそうにしていた。
「カスミさんが全部飲むんだろう? ボトルごとでいいかい?」
「オッケー♪」
 と嬉しそうに言ったのはカスミである。
 焼き鳥、野菜、魚からその他諸々……焼き鳥だけと言わずいろんなものが出されると、 女子会は盛り上がっていた……ラインナップゆえに大人女子会か。
 彼女らはクラウディアスやその連合国のために尽力してきたこれまでの労をねぎらい、 その日一日を終えることにしたのだった。

 翌日、テラスのテーブルのど真ん中には堂々と一升瓶のシルエットをしたものが陣取っていた。
「ふう、やれやれ……」
 持ってきたのはクラフォードだった。 すると、その場にカスミが真っ先に飛んできた。
「来た!」
 と、彼女はささっと回収してしまった。
「えっ……」
 クラフォードは驚いていると、カスミは彼を睨めつけていた。
「あげないから」
 いいって、睨むなよ……クラフォードは悩んでいた。
「あら♪ わざわざ龍殺し持ってきてくれたのね♪」
 後ろからリリアリスが現れて言うと、それに対してクラフォードは得意げに嬉しそうに答えた。
「バルティオス門外不出の地酒だからな、クラウディアス様にも是非ってもんで流通が実現したってわけだ、うまいぞー♪」
「知ってる。だって、何度かグレート・グランドで飲んだことあるし、昨日も飲ませていただいたからね。」
 だろうな、この人なら飲んだことあってもおかしくは……
「昨日も?」
「ええ。昨日行った店でカスミんが偉く気に入っちゃってね、 欲しいって言ったら今はあんたんとこで流通調整のために管理してるものだからって言うからいろいろと手を回していたのよ。」
 てことは俺は配達の雑用を頼まれたってことかよ……クラフォードは落胆していた。 頑張れグレート・グランドのクラウディアス大使。