しかし、そんな常人離れした動きをどうやって体得したのか、それはそれで気になるところである。
だが、それについてはディスティアも把握していた。
「魔法をトレーニングに利用していますよね、あえて過酷な環境を作り出して様々に応用しているという……
私も体験させていただいておりますが、なんとも斬新な”施設”だと思いますね!」
施設か……ユーシェリアは考えた。
「以前は何もない地域一帯を貸切るような感じで派手にやってたんですけどね――」
そんなことしていたのか……ディスティアは冷や汗をかいていた。
「やっぱり、リリアさんやアリエーラさんが手がけたものですよね?」
「もちろん!」
愚問か。それにしても負けん気の強い娘だな……ディスティアはそう思った。
彼女の背景から察するに、彼女をここまで成長させたのはリリアリスへの憧れと自らの生い立ちにおける負けん気の強さ……
これが彼女の意志の強さであり原動力なのだろう、ディスティアはそう思った。
「ねえディア様! またいろいろと教えてもらえますか!?」
「ええ、いいですよ」
「そうねえ……、次はイールさんをボッコボコにしてみたいですね♪」
「えっ!? イール!? うーん……まあ……双方の修行のためだと思ってやってみますか――」
「是非是非♪」
フロレンティーナはアリエーラに師事していた。
「やっぱり持つべきは友って感じね!」
「はい! どんどん頼ってください!」
なんだか楽しそうな光景だった。場所は新たに新設するという格闘場予定地と呼ばれるところである。
「だけどさ、アリって意外とやるのよね……」
「私ですか? そうですね、基本的なところと、私の場合はほぼ魔法使いゆえの剣技になりますけどね♪」
魔法の力を武器にそのまま乗っけて極意として繰り出す力、
リリアリスの魔法剣のアルゴリズムの性質が彼女にも働いているということか――フロレンティーナは考えた。
「そうよね、みんな何かしらの長所を持ってこそって感じがする極意よね、
アリは魔法、ユーシィは接近型、カスミは剣術、プリシラはなんか一気にエネルギーを開放しているような感じで、
リリアは……まあ、彼女は何でもすごいんだけど。
そう考えると……私って何にもないのよね――」
そうかな? アリエーラは考えた。
「確かに、ユーシィさんのように接近型で爆発的な能力を示すわけでもないし、
カスミさんのように剣を自在に操って攻撃するタイプでもない、
プリシラさんや私のように遠隔からエーテルをぶつける極意に特化しているわけでもなければ、
ましてやリリアさんのようななんでも最強型でもない……ですが――
私としてはフローラさんはなんでもそつなくこなすような印象ですね!」
「なんでも? 私が? そうかしら?」
いや、てか、リリアリスなんでも最強型は華麗にスルーですか。
もっとも、否定する要素はないが。
「みなさんとはまた全然違う戦い方のスタンスですから何かしらの特化型がなくても仕方がないことだと思います。
でも、だからこそなんでもできるのがフローラさんの強みなんじゃないでしょうか?」
私の強み……フロレンティーナは考えた。
「そうですね……、フローラさんって魔法の力を利用した乱舞技があるじゃないですか?
あれを一点に集中して攻撃するほうに転嫁する技をお教えしましょうか?」
フロレンティーナは頷いた。
「そうね、何事も挑戦よね。お願いするわ、先生!」
「はい! お任せください!」
ということで、彼女もまた世界の脅威に対抗するために力をつけるのであった。
しかし、そのなんでも最強型と語られ、多くの女性たちの憧れにして目標とされている女は今、テラスにて――
「よしよしよし、とりあえず、ここまでは確定ってところね。次は……どうしようかしら?」
何やら重大な作戦会議だろうか、目の前にはフィリスと珍しいことにナミスがいた。
「私としてはそれでいいんだけどね。
問題はほかのみんながそれで満足するかどうかにかかっているんじゃない?」
フィリスはそう訊いた。
「それは大丈夫♪ それは私が保証するから♪ ナミスはどう? なにかある?」
だが、ナミスは少々顔が引きつっており――
「わ、私は……むしろそれでお腹いっぱいです……」
何故か遠慮がちだった、また超えてくる作戦でも練っているということか……
「あら、そう? ナミスったら控えめなのねぇ♪」
リリアリスは得意げに言うがフィリスが呆れ気味に言い返した。
「むしろあんたのほうに問題があるって考えたことないの?」
「私が? そうかしら?」
自覚しろよ……フィリスは悩んでいた。
「でも、リリアさんがおっしゃるその最後のお店、とっても興味があります!」
と、ナミスは力強く……ん? 店?
「そうなのよ♪ この店は保証するわね♪ なんたって予約の取れない隠れた名店って言うぐらいだからね。
以前に何回か行ったんだけど、ここ、マジで最高だからねぇ♪」
え? 予約の取れない……店?
「ほう……リリアが何回も行こうとするほどの店……それは確かに期待大ね――」
と、フィリスも嬉しそうに……いや、もしかして計画している内容って――
「よしよし♪ じゃあ、改めて確認するわね。
まずはレストラン・シルフレスヴェールで好きなだけ腹ごしらえをする、
次にパティスリー工房・シェラフェッツェルンでデザートバイキングを堪能し……
最後に焼き鳥屋・匠の炭焼きでその日の残り時間を消化しきる――と、
これが今夜の大人女子会の内容、好きな時に来て好きな時に帰る……でいいかしら?」
って女子会かよ! しかも3件も梯子するんかい! よく食うなあんた!
「いいよ……ってか、それで十分でしょ――」
フィリスは呆れていた。
「いいと思います!」
ナミスは前向きに答えた。
「オッケー♪ とゆーことで、みんなに送信♪」
リリアリスは嬉しそうに端末を操作していた、女子会のスケジュール……。