通称セクハラ裁判……その後の影響は非常に大きかった。
「話は伺いました、有罪判決だったそうですね!」
と、アルディアスの者が言った、話はクラウディアス連合国によるウェブ会議だが、
今回参加している者はすべて女性というなんとも珍しい光景だった。
「ですが……国内外の者含めての傍聴に加え、我々のようなものまで此度の事例については注目してしまっています。
被害者女性のプライバシーとか大丈夫なんでしょうか?」
リオメイラの女王メライナが心配しているとナミスが答えた。
「それは問題ないですね。
そもそも今回の事例がオープンになっているのは被害者女性の強い意志によるところなんですよ。
やっぱりこの国は上に立つ女性がとても強い女性だからですかねぇ、
その女性みたく、今の世界の考え方を変えるんだっていうような強い意志が感じられました!」
「なるほど! やはりリリアさんの影響というわけですね!」
でしょうね、言われた当人が答えた。
「やれやれ、私ってつくづく女性陣に影響を与えているってわけね。
でも、流石に直談判してくるとは私も驚いたわよ。
それで私も被害者のために証拠を集めたりといろいろとやったってわけ。
これを機に、世界全体で女性の人権が守られるといいわね――」
ルシルメアは考えていた。
「そうなると、今度は男性の人権も守るべきって動きも加速してきませんか?」
リリアリスは頷いた。
「あり得るわね、それはそれでしょうがないと思う。
ま、今後はそれを考えてちょうどいい落としどころを探っていきましょう。
ただし、今んところは男が強い国だらけって言う背景があるからそっちをコントロールしていくつもりで強気な政策展開していく方針にしましょ、
女性の人権が守られていないのに男性の人権守れって寝言は寝ておkな言い分はどう考えてもおかしいからね。
だから現状は双方の足並みがそろうことを目標とする国づくりをしましょ。
現状のエンブリアの文化だと、そこをスタートラインにしないと効果がないしね。」
確かに。
クラフォードはティレックスとディスティアと話をしていた。
「クラウディアスってさ、男の人権ないなって思っていたりするんだよな」
ティレックスがそう言うとクラフォードは考えた。
「さっきの裁判のことか? それは思った。
ただ、よくよく考えるとそんなに不思議な話じゃないんだよな。
だって、俺としてはむしろ男の人権が強すぎるぐらいに思う――
いや、今回の裁判の内容を訊いていてそう思えてきたわけだ。
それってのはつまり、エンブリアではそれが当たり前であり、
それは男だろうと女だろうとその当たり前に異を唱えるやつがいなかったからな」
ディスティアは言った。
「つまり、今回はそこに異を唱える者が現れたということですね。
けど、本来なら被害者もそんな事は微塵も思わなかったことでしょう――
当たり前だったから泣き寝入りするしかなかったんだと思います」
クラフォードは頷いた。
「だな、それこそ俺の国でもセクハラ……女性に対するそれはそんなに珍しいことじゃなかったからな。
だが、この国の場合は……」
ティレックスは言った。
「そう、リリアさんがいるから声を上げるという選択肢を与えられたんだろうな。
だって、それこそ男の人が彼女に不用意に触ろうものなら――」
「ああ、死ぬなそいつ……つまり、リリアリスは自らのあの末恐ろしい長脚で制裁しているから、
その影響が被害者にも波及したってことだろうな、裁判するって形で。
今回の事例がエンブリア全世界にオープンになったってのも多分リリアリスがクラウディアス連合国を立ち上げて、
エンブリアそのものを改革していったのに続いたって感じだもんな」
「まさにパイオニアがどれだけ強いかというのを物語っているということですね。
クラウディアスでは女性陣がとても仲良しで軋轢などなく、
しかもその中で影響力のある女性のほとんどが上に立つものばかり……
男女のパワーバランスが他の国とはまるで逆で、世界的にみると非常に珍しいんですよね」
クラフォードは頷いた。
「だな。でも、世界的にみると意外と少数……あのリオメイラだって女王はあくまでシンボルで、
実際に国を支えているのは基本的には男ばかりだろ?」
ティレックスも頷いた。
「ルーティスもだよ、あそこは女性が市長がやるってのが定番なんだけど、
それは学園都市という背景から女性が子供の面倒を見るべきだという考え方に基づいて決めていることらしいからね」
そうだったのか……2人は唖然としているとティレックスは続けた。
「もっとも、ナミスさんが市長やっている頃になるとクラウディアスはリリアさんが回しているためにナミスさん自身に発言権があるように感じたけど――
そこらへんはリオメイラとかでも同じかな、うちやルシルメアなんかでも女性の政界進出も普通になってきているしさ」
「ま、まあ――今ではむしろクラウディアス連合国になったおかげで女性の人権について見直された結果、
ものを言う女性が現れたっていう動きになってきたんじゃないか?」
クラフォードはそう言うとディスティアは頷いた。
「それは間違いないでしょうね。
とにかく、男性は人権があって当たり前な世の中に女性の人権を守るって言う動きが加速しはじめたということなんだと思いますね」
ティレックスは考えた。
「男性は人権があって当たり前……そのうち男の人権守れって言う運動も出てくるんだと思うけど――」
「そうだな、今は当たり前でしかないから守れって話が出てくるのは時期尚早、当分先の話になりそうだな」
クラフォードもそう考えた。
「だけどさ、ずっと不思議なんだけどさ、クラウディアスでは女性陣がとても仲良しで軋轢がないって本当?
確かに俺もクラウディアスで女性同士で喧嘩しているところなんて全然見ないんだけど?
たまたま見ないだけかもしんないけど、リリアさんやユーシィも、
あのフローラさんや他の女性たちを見ても誰かれと衝突とか一触即発な状況とか感じることがないんだけど――」
クラフォードは頷いた。
「そいつは間違いない。
それこそ、以前は貴族の女性の間で醜い争いというものもあったらしい話を聞いたが今ではその関係すら修復という程ではないが、
それでも良くなっているように感じるな。
その理由は言うまでもないが全部リリアリスのせいだな……」
ディスティアは考えた。
「あの人のやることはとにかく幅が広いんですよ。
だから誰しもがそれについていくことに精いっぱいで喧嘩なんかしている暇なんかないんですよ」
ティレックスとクラフォードは悩んでいた。
「うーん、身に覚えがあるな……
そのせいでむしろあの人の行動にはお手上げだよ……」
「確かに、戦いの腕で勝てないのにそれ以外ってことになると勝てそうにないどころかそもそも土俵違いもいいところで、
どう挑んでいいのかわからないレベルだからな。
それこそもはや圧倒的……なのに当の本人と言えば別にそれを自慢するわけでもなく当たり前ベースでこなしているだけって言う……」
「自慢しているように見えるのもネタでわざとやっているだけだし、
しかもその対象と言えば決まって俺ら男性陣……つまり、俺らはおちょくられているんだな」
ティレックスは言うとディスティアは考えた。
「なるほど、つまりは男性優位な世の中に対する当てつけといったところですね」
ああ、なるほど。
「あの人が衝突したがる相手は同性の誰かではなく、異性である俺らってわけか」
「ゆえに性別:女、カテゴリ:男のリリアリスということか。
そして彼女のその考え方が女性たちに伝搬しているってことだな」
クラフォードとティレックスは悩んでいた。