エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ライフ・ワーク・ログ 第1部 風精の戯れ 第3章 安定の策士ライフ

第29節 特別執行官のスタンス

 時はセラフ・リスタートが終わった後の話にて、クラウディアスの新体制が発足された。
「クラウディアス特別執行官は王室最高特権の機関なのか――」
 ティレックスはそう訊くとリリアリスは答えた。
「そうよ、それだけに責任重大――」
「……の割にはガンガンとクラウディアスを改革しているよな」
 クラフォードが続けるとリリアリスは得意げに答えた。
「流石はリリアお姉さん、見習いたいなぁって? でしょうね。」
 んなこと言っとらん……クラフォードは呆れていた。 しかし、確かに見習いたいものではある、なんといってもまさに有言実行、 そしてそれが結果に結びついている――見習いたいというよりは奇跡を目の当たりにしているというのが正確である。 すると――
「え、特別執行官ってアドバイザー!?」
 ティレックスはクラウディアスのホームページを見ながらそう訊いた、んなバカな!?
「そうよ、基本はアドバイザーね。 王家お墨付きのアドバイザーってことで強い権限であーしろこーしろ言うのが私らの役割ってわけ。 もちろん、人が足りていないなら実働隊として動くこともあるし、 必要に応じて決めるべきことは特権を行使して決めることもあるわね、 そこは臨機応変に動くことにしているわね。」
 それにしても、よくもそんな役職が……ああそっか、エミーリア姫だな、ティレックスとクラフォードは思った。
「ん、リリアリスは経済担当なのか、てっきり政治担当なのかと――」
 クラフォードはティレックスにクラウディアスのサイトを見せてもらっていた。
「政治は得意じゃないからね。」
 あれ……クラフォードは考えた、どうしたのだろう――ティレックスは訊いた。
「それ、リファリウスもそう言ってたな、政治は得意じゃないからできるやつにやらせて自分は経済専従って――」
 ティレックスは気が付いた。
「それ、俺も聞いた気がするな、究極的なクリエイター発言。 確かに、リリアさんやリファリウスの話はだいたいクラウディアスに大きな経済効果をもたらす系の内容ばっかりだな、 外交を除けば――」
 リリアリスは得意げに言った。
「ぶっちゃけ、外交となれば簡単よ、これまでクラウディアス様様っていう状況ありきゆえに進行しているからね、 つまり私でも外交をうまくやれてるのって基本的にはクラウディアス様様っていう状況……要は環境が恵まれていたってことでしかないわけね。」
 本当にこの人は運を味方につけるな……2人はそう思った。
「経済担当ってことは他を担当しているやつがいるってことだな」
 アリエーラが答えた。
「はい! 私はエミーリアさんのお手伝いです!」
「もっと言えば、議会での決まり事を認可をするのがエミーリアだけど、 彼女が最終的に決定判を押すということになると少々荷が重くってね。 そこでアリがしっかりと考えるというブレーン的な役割をこなしているってわけで、 言ってしまえば彼女こそが政治担当ってことになるわね!」
 アリエーラはそう言われて驚いたが、言われてみればその通りか―― アリエーラは考えた、いやいや、今までなんだと思ってたんだよ…… リリアリスもそうだが、そろいもそろってこういうところがあるのよこの人たち。 しかもその割にはしっかりとした確かな仕事をするのだからヤバイ。 まさに”本物”である。
「単に判子を押すだけで良しとしないあたりがガチだな、ノンダクレが治めているうちの国とは偉い違いだ……」
「確かに帝国寝返り組がいた一昔前のうちとも偉い違い……少しでも妙な法律作られようとしたらあっさりストップかかるってことか――」
 クラフォードとティレックスは唖然としていた。
「俺としてはそのガチ具合よりも問題の切り抜け方のほうがいろいろエグイと思うんだが――」
 そして、その様子をひそかに見守っていたシステム主担当のヒュウガがぼそっと呟いていた。 確かにほぼ表現不可能な切り抜け方とかどう考えてもエグイ……
「ちょっとそこ! エグイってどこがよ!? フツーに攻略してるじゃんか!」
 攻略てやっぱりゲーム感覚……そしてそれをフツーと思っているところが特にエグイわけで……

 ある日のこと……
「判決。主文、被告人を懲役5年および原告に金50万ローダの支払いを命ず」
 おっと、どうやら裁判のようだ、何があったのだろう。
「”および”ってことは両方が課せられるってわけですね――」
 ディスティアは傍聴していたようだ。 それに対してリリアリスが言った。
「ま、そういうことね。 しかも今回はまさに判例として利用される歴史的なケースになるからね。」
 クラフォードは悩んでいた。
「てか、高いな……」
 フロレンティーナが頷いた。
「女性が上にいる国ってのがある意味ポイントになりそうな事例ね」
 クラフォードは納得した。
「確かに……わかる気がする。 ここの国はまさにあんたが暴れ……いや、じゃんじゃん改革していってるからこそってわけか――」
 リリアリスは答えた。
「まあ、そうかもしれないわね。 もう一つはこの国のセクハラ問題についてはこれまで放置されてきた側面があるから、 これははっきり言って見せしめということになるわね。」
 見せしめにしてはちょっと高すぎる気が……クラフォードは悩んでいた、 セクハラ問題……どうやら女性の尻を触りましたという内容らしい、しかも――
「それにしても、よくもまあ立証できたもんですね」
 ディスティアが訊くとリリアリスは答えた。
「ええ、これについてはちゃんと証拠が残っていたからね、 監視社会って批判されてはいるんだけど防犯カメラを設置したおかげで立証できたのよね。」
 ディスティアは考えた。
「フィールド・システムを改良してなんだかんだしていたってやつですかね?  私も手伝いましたがそれのおかげだったということですね!」
「ええ、ディア様には感謝だわ。」
 クラフォードは考えた。
「監視社会って批判はうちでもシステムをインストールした結果に浮上した問題だが、 犯罪抑止のためには……今回の事例を見るに背に腹は代えられないってところか。 これまでのことを考えるとありきで推進していくしかなさそうだな」