エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

あの日、すべてが消えた日 第4部 女剣士の憂鬱 第7章 憂い

第111節 純な気持ちの幼子

 リファリウスとアリエーラがクラウディアスに来て間もないころの話、 エミーリアをはじめとしたクラウディアス勢を交えて2人は話をし始めた。
「それにしても、本当に可愛い女王陛下様ですよね!」
 アリエーラがそう言うとエミーリアは嬉しそうに言った。
「嬉しい! ありがとうお姉様! お姉様も私のことをエミーリアって呼んでくださいな!」
「お父様が帰ってくるといいね、姫!」
 リファリウスも楽しそうにそう言うと、エミーリアもにっこりと顔に出して答えた。
「それにしても――みんな、リアスティンさんの側近さんの子供たちなのか――」
 リファリウスはその当時のクラウディアスを担っている臣下たちを見ながら言った。
「エミーリア姫は血はつながっていないとは言ってもリアスティンさんが親だし、 ラシルはアルドラスさん、スレアがセディルさんで、ラトラがティーグルさんで――」
 リファリウスが言うとレミーネアが続けた。
「そのティーグルさんのところで一緒に働いていたフィジラスの子が私よ、そんなところね!」
 レミーネアがそう話を切ると、サディウスのところのヴァドスがキレながら言った。
「おいおいおい! 俺俺俺!」
 だけど、いくら人材不足とはいえ、兵士や騎士はともかく、 国政に関する内容については人がいてもおかしくないような気がするのだけれども、 そういう人たちはどうしたのだろうか、それについてはカスミが答えた。
「昔のローファル派いうやついない、全員縛り首か自主退職した。 それ以外辛うじている、でも少ない」
「そこで、カスミんが加わってクラウディアスをいい方向へと立て直していったってわけなんだね。」
 と、リファリウスが言った、カスミんって――何人かが思うと、当の言われた本人は――
「カスミん! ううっ、もっと呼ばれたい――」
 興奮気味にそう言ってきた。
「どうしたのカスミん? こっちに来たいの?」
 リファリウスは子供をあやすような感じで言った。
「抱っこしての欲しいのかなぁ?」
 リファリウスがそう言うと、カスミんは両手を広げて抱っこをせがんできた。
「仕方がないなー、カスミんはー♪ ほーら、おいでー♪」
 リファリウスはノリノリで楽しそうにそう言うと、カスミんはリファリウスの胸の中に飛び込んできた。
「チョー嬉しい――」
 すると、それに対してヴァドスが言った。
「あのさ、一応カスミって召喚獣なんだよね、もっと言えば見た目以上に歳食っているってこと――」
 それに対してリファリウスがカスミの頭を撫でながら言った。
「しかし、この娘は精神年齢がほぼ見た目相応の歳で止まっている、恐らく、姉が急死したことが原因だろう。 鬼夜叉姫の名を持つ剣姫の家柄は、私はあまり詳しくはないけれども――名門中の名門で、 親戚も召喚獣としては引っ切り無しに呼ばれるような強者ばかりだろう。 そういう中で両親も肉親も急死して天涯孤独になった幼い召喚獣なんかはまさにカスミなんかがいい例で、 精神年齢が達していない例が多いらしい。 確かにお家柄、この娘は非常に強い能力を感じるのは間違いないけれども、 見た目相応の甘えん坊のまま時が止まっている感じだね。」
 そう言うとアリエーラは頷いた。
「でも、これほど幼い時間で止まっている例は私もあまり聞いたことがありません、 カスミさんの場合は稀な例ではないでしょうか?」
 そんなカスミだが、リファリウスにべったり張り付いて離れなかった。
「それにしても可愛すぎるなこの娘。こう――抱いてるだけで私のほうが癒されそうだ――」
 リファリウスはほのぼのとしながらそう言うとアリエーラが食いつき気味に言った。
「確かにそうですよね! 私も抱っこしてみたいです! 次、私もいいですか!?」
 するとカスミは今度、アリエーラのほうに抱き着いた。
「あらあらカスミさんってば♪ 甘えんぼさんですね♪ うふふ♪」
 アリエーラはとてもうれしそうにそう言った。それを見ていたエミーリアは――
「いいなーカスミちゃんばっかり。私もお兄様やお姉様に甘えてみたいな……」
 それに対してリファリウスが言った。
「私でよければどうぞ♪」
 そう言われたエミーリアは嬉しそうにリファリウスの胸に飛び込んできた。
「わぁい! お兄様だーい好き!」
「まったく、お姫様も懲りない人ですね。」
 リファリウスは彼女の頭を撫でながら得意げにそう言った。
「あのさ――おたく、どうなっているのよ――」
 ヴァドスがそう言った、男性陣はリファリウスのその様を見ながら変な感情が芽生えた、 確かにこの優男、一体どうなっているのだろうか、見ているうちにイラっとしてきた。

 そして、かつてディスタード帝国の本土軍との戦いのさなか、 リリアリスとカスミが初対面した後のことである。 だが、これは実は初対面ではないらしいが、その真相はまた今度。
「カスミん超カワイイ!」
 リリアリスはアクアレア・ゲート直下に行く道中でカスミに遭遇すると、そう話しかけた。
「リリアリスお姉ちゃん!」
 カスミは見た目通りの幼子のごとく目をキラッキラと輝かせているような感じでそう言った。
 それに対してリリアリスは心を射抜かれたかのようにすぐさま胸に手を当てながら言った。
「うおっと……リリアリスお姉ちゃんだなんてますますたまらんのう――」
 リリアリスはカスミに歩み寄った。
「お姉ちゃん、やっぱり本当のお姉ちゃん雰囲気すごい似てる――」
 カスミはリリアリスの顔をまじまじとみつめながら言った。
「そんなにオウカお姉ちゃんに似てる?」
「超似てる。お姉ちゃん綺麗、元気いっぱい、すごく楽しい――」
 リリアリスはカスミの実姉のオウカと瓜二つ、性格も割と似ており、 カスミとしてはリリアリスには特別な感情を抱いていた。
 それを踏まえたリリアリスはカスミの気持ちをすぐさま察した。 そしてカスミを抱っこしてかかえあげた。
「こうしてほしいんだなー! まったく、お姉さんの豊満なバストの元で!  カスミたんったら贅沢な娘だなー♪」
 リリアリスはすごく楽しそうにそう言うと、カスミもとても嬉しそうだった。
「リリアお姉ちゃん――超嬉しい――私、幸せ――」
 カスミは心を持っていかれていた。 しかし、カスミを抱えていたリリアリスも既にカスミという癒しのモンスターに心を持っていかれていた。
 とにかくカスミもリリアリスも楽しそうだった。
「オウカお姉ちゃんもリリアお姉ちゃんも胸大きい。アリエーラお姉ちゃんもそれなりに大きい。 でもエミーリアTTP、つるっつるのぺったんこ」
 そして毒を吐くこの幼子、言われた当人が一番悩んでいる課題である。
「ああっ、エミーリア――お姉さんも悲しくなってきちゃったわ。」
 リリアリスも何故か嘆いていた。
 それはそうと、リリアリスはカスミを降ろしながら話をし始めた。
「そうそう、お姉さんねえ、カスミんに特別なプレゼントがあるんだ――」
 するとリリアリスはどこからともなく長い刀を取り出した。
「カスミんならうまく使えるかなと思ってさ、どうかな?」
 その刀の長さはカスミの背丈の倍を超えており、柄の部分は非常に特殊な感じになっていて、 まるで装飾品を思わせる見た目だった。 それに対してカスミは興奮しながら言った。
「えっ、いいの? 本当に?」
 リリアリスは頷きながらカスミに刀を渡すと、カスミは刀を抜きながら言った。
「すごい――よく冴えている。これ作った職人の腕、相当の腕持ってる――私、使ってみたい」
「本当に!? それはよかったわ、カスミんのお眼鏡にかなって。 カスミんのために特別に作られた特注品なのよ♪」
 リリアリスは再び嬉しそうにそう言った。
「うん、ありがとうお姉ちゃん。 これ作った人にもお礼言いたい、会うことがあったら言っておいてほしい――」
 カスミもとても嬉しそうにそう言った。まあ、今更言うまでもないが当然のごとく――
「作った人にお礼がしたいの? カスミんったら律儀な娘なのね、わかった。 目の前にいるおねーさんが作った人だから、直接言ったほうが早いかもよ♪」
 そう言うとカスミは目を丸くした。
「”風精かまいたち”も渡しておくから臨機応変に使い分けてもらえると嬉しいわね!」
 リリアリスはさらにもう一本の刀をカスミに渡した。
「……この剣すごい! お姉ちゃんありがとう! 私、大事にする!」
「ふふっ、どういたしまして。私の剣も鬼夜叉姫様のお眼鏡にかなったっていうのなら本望よ。」
 なんでもいいけどこんな幼子に変なもの渡すんじゃないよ。 だって、渡した人は”兵器”を作ってそれを平気でぶん回す人だよ?

 そして、当時の対ディスタード本土軍戦績ではクラウディアス軍が勝利を収めることとなる。 当時のカスミは自らを一人前ではないと言っているが、実際には幻獣としては一人前であるため召喚されているのである。 もっとも、それは召喚される者としては足りているという意味でしかなく、能力者としては半人前ということを言っているのである。