それからしばらくして――
「おや、今度は何しているんだ?」
スレアはティレックスにそう訊いた。
彼がいるのはクラウディアス城に併設されている物品保管庫の中である。
「別に――ただ刑に服しているだけだよ……」
スレアは首をかしげていた、どういうことだろうかと。
「やっと終わりそうだ――」
ティレックスは保管庫の中を整理しているようだった、だが――
「あっ、ティレックス、これからこの保管庫の中にまた大量のブツが届くことになっているからな、
だから引き続き頼むぜ」
マジかよ! なんで俺が! ティレックスは嘆いていた。だがスレアは――
「なんでって、お前んとこのアルディアスから届いたもんだからだよ。
ちなみにこの保管庫にあるものはほとんどがアルディアスから来たやつだ。
これから来るブツも全部アルディアスから来るやつだから自分の国から来たものを自分たちで整理するつもりでやってもらえると助かるな」
ティレックスはこけた。
「うそだろ……。てか、これ、全部鉱物資源? クラウディアスはどうしてこの量を注文しているんだろ――」
スレアが答えた。
「リリアさんによると、こんなに頼んだ覚えはないってさ。
送られてくる分にはいいけど消化しきれないものは保管庫に入れているんだとさ。
他にもまだ切り分けてない、まだでっかい塊のままの鉱物も別の場所にあるんだが、
受け入れきれてなくて重機で整理している状況なんだよな」
うわあ、それはまた――。
確かにアルディアスではクラウディアス様にもっと送れという流れになっていることはよく知っているティレックス、これはそのせいで起きている問題なのか。
ティレックスは悩んでいたがこの手の提案をアルディアスの定例会議で出してもあえなく棄却されるという憂き目にあうため、彼一人の力ではどうにもならなそうである。
そしてこれはそのツケというやつか……ティレックスは落胆していた。
カスミはお城の屋上から西の空をじっと眺めていた。そこへスレアがやってきた。
「おや、こんなところで珍しいな、何かあったのか?」
しかしカスミは何も答えなかった。それに対してスレアは――
「……例の”病”か、放っておいた方がよさそうだな」
そう思いながらその場を静かに去ろうとした。
すると後ろからリリアリスが現れた。
「見回り?」
スレアは頷くとリリアリスは続けた。
「そこにカスミんいるでしょ?」
スレアは再び頷いた。
「ああ、いるよ。今は放っておいた方がいいみたいだな――」
リリアリスは言った。
「ええ、そうなんだけど……みんなで力になりたいって言っててね――」
それに対してカスミが反応したようでリリアリスの元へとやってきた。
「行く」
するとリリアリスはスレアに促した。
「あんたも来なさいよ。」
えっ、なんで俺!? スレアはそう言うが例によって四の五の言わずについて来いと言われたため、そのままいつものテラスへと向かった。
テラスにて、カスミを中心に女性陣と僅かな男性陣が集まっていた。
みんなでカスミのことを心配そうにしていると彼女は首を横に振っていた。
「ごめん、みんな心配かけた、本当にごめん。私もう大丈夫」
それに対してティレックスは頭をかきながら言った。
「大丈夫って言われてもなぁ……、また保管庫の整――
いや、またあんなことになったらどうしようかって思うとちょっと心配なんだよなぁ……」
それに対してリリアリスは言った。
「それもそうね、保管庫の整――のほうは引き続きやってもらいたいけど。」
うげっ、またやらされるのか……ティレックスは落胆していた。リリアリスはカスミに話を続けた。
「どう? ここでみんなに洗いざらい吐き出してみるっていうのは。
別に嫌なら無理強いしないけど――言ったほうが気が楽になることもあるからさ――」
それに対してティレックスが聞いた。
「あれ? あの時、話を聞いてたんじゃないの?」
リリアリスは答えた。
「まあ、一応は訊いたんだけどね。
でも、根本の問題までは聞けてないし、彼女、こう見えて結構背負い込み癖があるから聞けてないのよ」
「背負い込み癖があるのはあんたも同じだろ」
スレアがそう言うとリリアリスは言った。
「うるさいわね、どうせそうよ。
そんなことより――もちろん、それで何が解決するわけでもないかもしれないけれども、
それでも、みんなカスミんのために何かしてあげたいって思っているんだからさ、良かったら話してみない?」
ユーシェリアも追随した。
「そうだよカスミちゃん!
カスミちゃんは私の話だって聞いてくれたんだし、今度は私がカスミちゃんの話を聞く番だよ!
だから話したいことがあったらいつでも言って!」
ユーシェリア……ティレックスは彼女を見ながらそう思った。
そう言えばそうだった、ユーシェリアも自分がここでお世話になるよりも前からここに来ていろいろと面倒を見てもらっていたんだ、
それからの付き合いだったな。
ともかくユーシェリアにそう言われるとカスミはなんだか照れていた。
そして、リリアリスがベンチの上に座り、カスミに促すと、カスミはリリアリスの膝の上にちょこんと座った。