クラウディアス連合国はセラフ・リスタート計画を着々と進めていた。そんなある日のこと――
「うっ――」
カスミはティレックスに稽古を着けていた。だが、カスミにティレックスの攻撃が命中する――
「うわっ! 悪い、今のはちょっときわどかったな――」
カスミは木刀をその場に落とすと左腕を抑えていた。
「このぐらい気にしない。それより疲れた、休憩する――」
彼女はそう言いつつ木刀を放置したままトボトボと去って行った。
「今、カスミにクリーンヒットしたな! やるじゃないか! ルダトーラの長!」
と、その場を偶然見ていたスレアに冷やかされていた。
「あ、ああ――いや、今のは違う、違うんだ――」
「何が違うんだ? クラウディアス屈指のソード・マスター様を打ち破ったんだぞ!?」
ティレックスは首を振った。
「いや、今のは全く手ごたえがなかった。というか彼女、ここ最近様子がおかしい。
今のもそうだ、上の空っていうか――マトモに俺の相手をしているような感じでもなかった」
スレアは腕を組んだ。
「様子がおかしいか、確かにそう言われてみればそんな気がするな。
前々からちょっと気になっていたんだけど妙だよな――」
スレアとティレックスは何やら考えていた。
ティレックスはテラスへと赴いたがそこには何故かルルーナだけがいた。
うーん……どうするか……ティレックスは悩んだがとりあえず訊きたかったことを聞くことにした。
「リリアさんかリファリウスはいないの?」
ルルーナは答えた。
「御覧の通りいませんよ。どうかしました?」
ティレックスは頷いたがルルーナは間髪を入れずに意地悪く訊いてきた。
「豊満なバストの持ち主でセクシーで美人なリリアお姉様かフロレンティーナお姉様に用事があったんだねぇ、健全なティレックス君♪」
うっ――ティレックスは直近にあったセラフ・リスタート計画のアリヴァール攻略編のトラウマがよみがえった。
だが、まさか本当に彼女に悪戯されたことだとは夢にも思うまい、悪戯されたのは夢の出来事なんだが。
「うん? 待てよ? 豊満なバストでセクシーってもしかしてア・タ・シ? キャー! 健全なティレックス君の変態!」
と、ルルーナは恥ずかしそうにそう言うとティレックスはただただ困惑するのみだった。
「あっ、あの……居場所を知らないのならもういいです――」
ルルーナは笑いながらティレックスを止めた。
「あっはっはっはっは、ごめんね健全なティレックス君!
リリアお姉様ならカスミちゃんが来てアリエーラさんと一緒に天使の森に行ったよ!」
だからいちいち健全言うのやめろ。
言葉自体は別に悪い言葉ではないがあからさまに悪意を感じる言い方である。
ともかく、天使の森といえば幻界碑石、そしてやっぱりカスミはここに来たのか、ティレックスはそう思った。
ティレックスはルルーナと共に天使の森にある幻界碑石へとやってきた。
「ほら、あそこだよ!」
ルルーナはそう言った。
幻界碑石のところで女性3人が何やら話をしているようだが何をしているのだろうか。
するとリリアリスが2人の姿に気が付いた。
「あら、どうしたの?」
ティレックスは頷いた。
「ああ、いや……なんていうか、カスミさん大丈夫かなって――」
するとカスミは立ち上がり、ティレックスに向かって言った。
「マジメに相手できてなかった、私のミス、ごめん」
いや、まあ……それはそうかもしれないが――ティレックスは訊いた。
「それはいいんだけどさ、どうかしたのかなって――」
だが、カスミは口を閉ざしたまま何も言わなかった。
そんな彼女の様子を察してティレックスも流石に遠慮した。
「そっ、そうか、わかった……あんまり詮索しすぎるのも良くないよな――」
あえてリファリウスでなくリリアリスがいることで自分がいても解決できないことを察したのだ、
そもそもなんだか面倒そうな話だ、関与するのはよくないと思ったのである。
「そっ、そうだ、それよりリファリウスってどこにいるか知らない?」
ティレックスは焦って質問を変えるとリリアリスが言った。
「知らないよ、カスミんが来てそれっきりだし。その辺でほっつき歩いてるんじゃないの?」
まあ、知らないのでは仕方がないか。
「じゃ、じゃあ、俺は行くからな……」
ティレックスは逃げるように去って行った。だがしかし、ルルーナに回り込まれた――
「逃がさないからね、健全なティレックス君♪」
は!? ティレックスは驚いた。
するとルルーナはティレックスの腕をがっしりとつかみ、リリアリスの面前へと突き出した。
「お姉様! カスミちゃんに怪我をさせた犯人を逮捕しました!」
なっ、なにィ!? ティレックスは驚いていた。
「そうね、それは流石に見過ごしておけないわね。
とりあえず市中引き回しの上、島流しの刑に服してもらわないといけないわね。」
そっ、そんな! ティレックスは焦っていた……いや、確かに悪いのは自分だけどさ!
「市中引き回しの上、島流しっていつの時代――」