後日、あの4人は復活を果たした。
そしてフィリスがセラフィック・ランドから戻ってくると、話をした。
「ロサピアーナのせいでプロジェクトを一旦中断しちゃってるからね。
時間かかっているからセ・ランド連合に断りを入れてきたってワケよ。
でも、リリアの思惑とは裏腹に向こうからも既に手をまわしている状況で、
ロサピアーナと同じ大陸にある国っていうイルガラウという国と共同して動き始めている状況だってさ」
リリアリスは頷いた。
「みたいね、イルガラウ国からクラルンベルを後方支援しているって直接聞いたわ。
世界的にもクラルンベルを守ろうという機運が高まっていることの証よね。」
「というより、クラウディアス様様が言うのだからみんなそこへ向かっているっていうのが理由のような気がするな」
ティレックスがそう言うとシャナンは頷いた。
「大いなる力には大いなる責任が伴うと、そういうことですね。
我々1人1人の資質が問われるということに他なりません」
そう言われ、騎士団長のラシルと女王陛下のエミーリアはひどく緊張していた。
「僕ももう少ししっかりないと――」
「私もしっかりしないと――」
リリアリスは何やら考え事をしていた。それに対してアリエーラが――
「なるほど、エンブリアは大丈夫そうですね!」
えっ、どういうこと!? フロレンティーナが訊いた。
「これまでずっと戦争があってどの国も疲弊していたのよ。
そのせいでどの国も他所の国に支援ができるほどの余裕が無かったワケ。
でもどうかしら――」
リリアリスがそう言うとフロレンティーナは頷いた。
「確かに今回はクラルンベルを守ろうとどの国も一丸となっているわね。
そういうことなら確かにこの世界は安泰ってことね」
なんとも喜ばしい事だが果たしてこのまま世界平和が続いてくれるのだろうか。
5階のテラス、フロレンティーナはじっくりと端末を眺めていた。そこへリリアリスが通りかかった。
「あら! これは素敵な女秘書様! ご機嫌麗しゅう♪」
フロレンティーナの立ち姿、まさしく超できる女秘書そのもの。
まるでどこぞの女神様のような髪飾りを装着し、髪の毛をきれいに結わえている、
さらに女神っぷりを意識するため、上半身から下半身まで清楚な白のきれいめな服装で整えており、
その上からロングのカーディガンを重ねて着こなしている。
だが、それに加えて彼女はやはり妖艶な存在ということもあってか、
胸元や綺麗な足の露出も欠くことなくさらけ出しており、なんだかセクシー。
そんな彼女に対してリリアリスは楽しそうに言うとフロレンティーナも嬉しそうに応えた。
「あら! これはこれは王国影の支配者リリアリス様! ご機嫌麗しゅう♪」
リリアリスはいつも通りのゆったりワンピース姿、ルルーナの服装もこれを反映させている。
見た目こそまさしく美女そのもので、一部の男児の夢にも出てくるほどの魅力的な美女のはずなのだが非常にもったいない。
まあ、そんな褒め合いについては置いといて、フロレンティーナは何をしているのだろうかとリリアリスは訊いた。
「ウィーニアとチャットしててクラフォードが目覚めたことを教えてもらったのよ」
そうだったのか。
「あと、クラフォードもそうだけどキャロリーヌ……いえ、生物兵器の毒香に支配されている間の記憶はないんですって」
クラフォードについてはウィーニアをかばう形でキャロリーヌの毒香にかかったのだという。
その時の状況をもう少し詳しく聞いてみたいなと思った2人だった。
ティルアに戻っているウィーニアはなんだか楽しそうにしているようで、
ということはつまり、かばっていた当時には何かしらのロマンスがあったに違いない。
「シャルロンちゃんも当時の記憶は飛んでいるみたいだし、各々後腐れなくっていうところかしらね。
あと、シャルロンちゃんを操っていたアンテナの発信源がどこにあるかってことが話題になってたけど、
エレイアの件でもそうだけど、操る相手がいなくなっている以上は正直どうでもいい話よね。
盗まれたシェトランド人の核もすべて押収できているし、
シェトランド人にも予防接種は完了しているから二度とこんなことは起きないわ。」
それに対してフロレンティーナが訊いた。
「えっ、シェトランド全員に注射したの?」
リリアリスはニヤッとしていた。
「男どもに対してはチョロイもんよ、お母様の力を使えば。
女性陣も飯で釣れば簡単だからあっさりだけど、まあ、経費が掛かっている点については否めないわね、
シェトランドでも女のほうが面倒なのはどの種族でも一緒ね。」
なるほど、確かに――フロレンティーナは頷いた。
予防接種で例のエレイアのような一件が起きないようにするのはもちろん、
今回のキャロリーヌのようなことが起きないようにすることも重要で、
シェトランド人の核にそのための処置を施すことで実現するに至ったのだという、
シェトランド人に注射した目的はそのための予防接種である。
「それであんた、まーたディア様に注射して差し上げたんでしょ!」
フロレンティーナはそう言うとリリアリスは悪びれた様子で答えた。
「大当たりー♪ ディア様にはこの豊満なバストのせくしーなおねーさん自ら痛くないよーに優しーく注射して差し上げたのよ♪」
「まったく羨ましい女ね! 私にも今度やらせなさいよ! 痛くないよーに優しーく注射する方法教えなさいよ!」
まったく、この豊満なバストのせくしーなおねーさんたちは。
ある日、ララーナはお城の5階のテラスから下界を眺めていた。
その後ろからリリアリスが――
「なかなかいいじゃないの、みんなうまい具合に溶け込んでいるようね。」
と言った、それはプリズム族の件である。
クラウディアスの一般民の中にプリズム族の女性たちが普通に生活している光景が見えたのである。
「まさか私ら種族にこのような日が訪れるだなんて――」
リリアリスが言った。
「確かにこれが”ネームレス”だったら影響は計り知れないから同じようなことが出来るかどうかについては何とも言えないわね。
でも彼女らは違う、違うからこそ縛りのない生活が保障されたっていいんじゃないかなって思ったのよ。」
アリエーラは付け加えた。
「でも、いずれかは”ネームレス”だからという問題もクリアーにしていきたいですね!
もちろん、その”ネームレス”がどういうものなのかにもよりますが――」
ララーナは憂い気に言った。
「そうですね、その通りですね、縛られない者についてはそれが一番いいのでしょう。
ですが――自らのコントロールが利かないものに関しては森の中に置いてきてしまいました。
それだけがやはり心残りですね――」
リリアリスは得意げに言った。
「そのためにお母様は長でいることを選んだのだから、
私はそんなお母様を応援するわね。」
「ええ! 本当はそういう人たちとも一緒にいられればなとは思いますが、
でも、お母様がその架け橋になってくださるので、まだ可能性は残されていますよね?」
ララーナはにっこりとしていた。
「ええ、そうですわね。
彼女らのために出来ることはまだまだあります、それを忘れてはいけませんね――」
リリアリスはさらに言った。
「それに――やっぱり何がどうあっても里を離れたくないって娘もいるからね、
移住している娘もみんな自分の役目を全うするために移住しているだけであって実際には里を捨てたわけじゃないんだし、
仲間を見捨てたわけでもないんだし、それはそれでいいんじゃないかな?」
ララーナは頷き、改めてにっこりとしていた。
「確かにそうですね、ならば別に無理に行動をしなくたって良さそうですね。
ならばひとまず、この件についてはこのままにしておきましょう」
ララーナは案外この2人の言い分をそのまま受け止めているような感じだが、
彼女にしてみればこの2人が自分と同じ血が流れているが故の決断のようである。
そもそも論として自分自身が”ネームレス”という流れ者であるため、
エンブリアのプリズム族に対してどうこうするという選択は基本的には与えられていないもの、
一応長というポジションでありながらも選択については彼女らに託しているのが彼女のスタンス、
つまりはプリズム族を縛るのための方針ではなく、彼女らの未来のための道筋を示しているだけに過ぎない。