エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

あの日、すべてが消えた日 第3部 堕ちた天使の心 第6章 エンプレス・フェルミシア・キャロリーヌ

第94節 二の舞

 キャロリーヌのもとへララーナが近づいてきた。
「ララーナさん、お願いいたします――」
 シオラはそう言うとララーナは頷いた。
「リリアほどうまくできるかは何とも言えませんが、とりあえず私にお任せください――」
 ララーナはキャロリーヌを覆っているシオラの服の中にビニール手袋をした手を突っ込んでいた。
「うっ、あっ、ああっ――」
 キャロリーヌは痛そうにしていた。
「シャルロンちゃん! 少しだけ我慢しててね!」
 シオラは訴えるようにそう言うとララーナはゆっくりと手を引き出していた。 その手にはどこかで見たことのあるものが……
「やっぱり――」
 ルルーナはそれを見ながら悩んでいた。ディアナが言った。
「彼女はまさにエレイアの二の舞、つまりはそういうことですよ――」
 なんとそれはシェトランド人の核と例の精密機器によるアンテナだった!
「シェトランド人の場合はアンテナを入れることでそのシェトランド人の核と融合し、神経系統を操ることが可能だったけど、 今回はシェトランド人ではないケース……つまりシェトランド人の核とアンテナを彼女に入れ、 彼女の神経系統を支配していたと、そういうことになるわけね……」
 ルルーナはそう言うとララーナはそれをルルーナに手渡しながら言った。
「既にご存じのように、セイバルの最後の拠点で同じものをいくつか見つけました。 ですが開発したであろうモノにはいずれもシリアルが振られており、1つだけ見つからなかったものがありました。 恐らく、これがそうでしょう――」
 ルルーナは頷いた。
「そうですね。そしてそれはロサピアーナに流れ、彼女に組み込まれたというわけですね――」
 ララーナは頷いた。
「ま、何はともあれ、これでトリビュート・フラット作戦とやらもおしまいだな」
「ロサピアーナは今後どう出るのか、それともしばらくは大人しくしているのか――」
 スレアとティレックスはそう言った。平和を切に願うばかりである。

 周囲があわただしくしている中、シオラはシャルロンと話をしていた。
「いろいろとあったけどシャルロンちゃんが無事でよかったな――」
 シオラは安心したような表情でそう言った。
「うん、私もシオりんとこうしてまた出会えるなんてすごく嬉しい……」
 シャルロンも涙を流して喜んでいた。
「パミルは元気してる?」
「もちろん! シャルロンちゃんが帰ってくるのを首長くして待っているわよ!」
 シオラは元気よくそう言うとシャルロンは嬉しそうにしていた。
「そっか、よかった、最期にシオりんとお話ができてよかった――」
 最期!? なんで最期……それは聞き捨てならなかった。
「おっと、この程度のことでそんな考えはいけませんよ。 現に助かっている人もいますのでこのままあなたはきちんと生きて返します。 大丈夫、大船に乗ったつもりでいてくださいね!」
 ディアナはそう言うとララーナがやってきた。
「そうですね、この私がいる前でそういうことはあり得ませんからね。 どーら、確かに命に別状はない感じですが応急処置的なことはしておきますね」
 ララーナはシャルロンを癒しで包み込んだ。
「わぁー! あたたかーい♪」
 と言ったのはユーシェリア、そんな彼女に対してティレックスが……
「おいおい、シャルロンさんのためにやっているんだからさ――」
「いいじゃん! お母様のこれはすっごい気持ちいいんだからさ!」
 それはわかるけど――
「瓦礫の除去は無理だな。それにこっちのエレベータも壊れているみたいだから無理のようだ」
「こっちは使用可能みたいだよ! ここからみんなで帰ろ!」
 スレアとフラウディアはそれぞれで帰り道を確認していた。さらにルルーナは自分の端末を眺めていた。
「あと10分で迎えが来るようです。 捕まっていたデュロンド勢はすでに収容されているみたいです。 そしたらこの部屋の男の方たちをどうするかということですね――」
 と、それはいいんだがスレアは突っ込んだ。
「お前、いつまでやってんだよ!」
 だがルルーナは――
「いつまでというのは? スレアさんったらおかしな人ですねぇ! もしかして、私にそんなに興味がおありなんです?」
 なんで!? スレアは呆気に取られていた。
「うふっ♪ それならそれで私も嬉しいですがダメですよそんなの、 フラウディアさんという素敵な方がいながら浮気はよくありません!  彼女のことをちゃんと大事にしてあげてくださいね!」
 ななっ!? スレアは圧倒されていた。
「さて、それよりも今後はどうやってロサピアーナを抑えるかですね――。 今回のことでロサピアーナも一旦進軍を控えることになればいいのですが、 肝心のクラルンベルの戦力が今回の件でかなり疲弊していますから、 ロサピアーナはこれを好機ととらえて攻めてくるかもしれませんね――」
 なんでもいいがこの人のこのしゃべり方、いろんな意味で本当にどうなっているのだろうか。
「ロサピアーナの侵攻は止まらないのか、なんとかならないものなのか?」
 ティレックスはそう言うとルルーナは言った。
「ええ、実はそうなることは織り込み済みですので心配には及びません♪」
 織り込み済みかよ。
「そのうえで私たちのやれることと言えば特にありませんので、 しばらくしたのちにここも戦場となりますから早めに撤退しましょう!」
 と、なんだかデキる女秘書を演出しているようなルルーナだった。 こういうところもあの人に似ている……