エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

あの日、すべてが消えた日 第3部 堕ちた天使の心 第6章 エンプレス・フェルミシア・キャロリーヌ

第92節 女は怖い・秘められし残念な美女編

 そして、それによってできたキャラがまさかのあの女……
「えっ、これ……なんだか妙な感じ――」
 そんな彼……いや、彼女に対してリリアリスが腕を組んで眉をひそめていた。
「どうしたのです?」
 彼女は訊いた。
「確かに妙ね、鏡見てみたら?」
 鏡……彼女は何食わぬ顔で手鏡をそっと覗くと、そこには――
「えっ!? えっ、えぇっ!? これが――私の……顔!?」
 当の本人も本気出して驚いていた。そんな彼女の顔にはディアナ様も驚いていた。
「すごい美人さんですね、ヒュウガさん! でもその顔……」
 彼女は何度も何度も鏡を覗いていた、その顔から受けた第一印象はリリアリス、 そして、またふと見るとどことなくアリエーラを思わせる究極美人顔だった。 服装はまさにリリアリスが着ているゆったりとしたワンピース姿で、 顔もそっくりなことからまるで双子を見ているかのようでもあった。
「なっ、なんで……!? リリア姉さま、何か特別なことでもしましたかー?」
 リリア姉さまって……自分で言って自分で驚いていた彼女、 というか何故か言葉遣いが女性らしい言葉になってる、どうして――
「言葉遣いは変身術によるものだと思うんだけど、 思いのほか順応が速すぎるから本当に変身術の効果なのかはわからない。 それと、顔については何にも特別なことはやってないわよ。 しいて言えば、ただアンタの顔を女性顔に寄せたぐらいしかしてないんだけど――」
 リリアリスはため息をついていた。
「その顔は実はある程度予測していたことなんだよね。 だって、あんたの印象がどことなく私に似ているところがあるから、まさかとは思ったんだけど―― まあ、私のカンってよく当たるから、まさにその通りになっちゃったわね――」
 リリアリスはなんだかニコニコした様子でそう言った。
「えっ、それって言うのはつまり――」
「ええそう、あんたと私は確実にどこかで血のつながりがあるってことよ。 まったく、不思議なことがあるものね。 だからってあんまりがっかりしないでよ――」
 しかし彼女はリリアリスの左腕にしがみついて喜んでいた。
「お姉様と血縁関係にあるだなんてすごく嬉しいです!  お姉様は美人だし、しかもこんなにお姉様に似ているだなんて私すごく嬉しい!」
 うそ……リリアリスは呆気に取られていた。 だが、自分がしていることに気が付いた彼女は慌ててリリアリスから離れた。
「あっ! ごめんなさい、私ったら!  こんな女装しているだけの男にこんなしがみつかれるなんて嫌ですよね――」
 だが、こういう存在はリリアリスとしては……
「ううん、全然!  そもそも私にとってヒー様なんてほぼ弟みたいなもんだし、 それにあんた、無茶苦茶カワイイからむしろ大歓迎!」
 マジで……彼女はそう思った。
「それにしてもマジでカンワユイわね、お姉さん至極気に入っちゃった♪  まさかヒー様の中にこんな女が潜んでいたとは――」
 それについて彼女は語った。
「それなんですけどこの姿になって思い出したことがあるんです、 私、そう言えばお姉ちゃんがいたなぁって……」
 ヒュウガにはお姉ちゃんがいたのか。
「ただ……なんか早くに亡くなっちゃって寂しい思いをしたんだっけ……」
 ヒュウガは元々お姉ちゃんっ子だったらしい。 年はずいぶんと離れた姉弟で、そのお姉ちゃんがほとんどお母さん替わりのような役目をしていたのだという、そうだったのか。
 しかし……そう言った彼女は少し恥ずかしくなってきた。
「なっ、なんで私こんな話しているんだろ、変だな…… この姿に変身してからというものの、なんだかやっぱり妙な感じ……」
 リリアリスは腕を組んで言った。
「それは男女で感じ方が違うからじゃないかな。 男の子ならそういう話は恥ずかしいと感じるものかもしれないけれども女の子はそうでもないからね。 あなたとしてはもっとお姉さんの話をしたいんでしょ?」
 えっ、それは――彼女は躊躇った。
「お姉さんの名前は?」
「お姉さんの名前は……ルルーナ……」
 ルルーナ……なんだかかわいらしい名前だなぁ、そう思ったリリアリスはにっこりと笑って言った。
「じゃあこうしましょう、あなたのその姿の名前はルルーナね!」
 ルルーナ! なんだか嬉しかった! それこそ、言われてみればこの姿は自分のお姉さんにそっくりだった気がする。 そうか……自分の中に潜んでいた女というのはお姉さんだったのか。 つまり、自分にはずっとお姉さんが付いていてくれる……
「いいですね、姉弟愛! 私、そういうつながりは好きです!  私としてはエレイアは妹みたいなもので、いつもいつも可愛がっていました。 まあ……今となってはそこから発展して別の関係になっていますが……」
 ディアナ様は嬉しそうに話をした。
「そういうことなら本当にいいお姉さんなのね、私もちょっとうらやましくなってきちゃった。」
 リリアリスがそう言うと、ルルーナは早速問題発言を発動!
「うふっ♪ 私のお姉ちゃんのレンタル料は高いですよ♪」
 はぇ!? 2人はその発言に呆気に取られていた。
「そうですねぇ……お姉ちゃんは美人だから人気もありますし、 だからお姉ちゃんを汚そうものならほかが黙っていません。 よって、それを絶対しないことを約束するために契約書を交わし――」
 なっ、なななななっ!?
「……お姉ちゃんの手料理が食べたいなんて言う場合はまた特別料金をいただき…… ああ、あとそれから手をつなぐ場合は――」
 待て待て待て待て! 今のは何!? ディアナが突っ込んだ。
「えっ!? あっ、そうでした、お2人とも女性の方でしたね、だったらプライスレスです♪  それに、男の人といってもディア様はイケメン様ですから特別にお安くしておきますね♪」
 はぁ!? ディアナ様はさらに呆気に取られていた。
「それはそれとして、次の準備をしないといけませんねぇ。 みんなに遭ったらどうしよっかなー?  まずは……ティレックス君を誘惑して、ユーシィちゃんに言いつけてやるって言って…… あっ、スレア君にも同じことしちゃおっかなー♪」
 なっ、なななななっ!? ディアナ様はなおも呆気に取られていた。 そこへリリアリス、ニヤっとしていた。
「これはどうやらなかなかとんでもない女が現れたようね、流石は私の血縁というだけのことはあるわ、 そゆことで、ルルーナはどうやら”残念な美女”カテゴリに相当する女みたいよ♪」
 えぇ……そんな……やろうとしていること・考えていることがなかなかエグイ。 ってか、なんの抵抗もなく自分でそうしっかりといえるのは流石はリリアリスである。
 確かにリリアリスに負けず劣らずの残念なキャラなのは確実だった、 なかなかの美人だし印象もアリエーラにどことなく似ているところがあるのにどうしてこの女共はそれを台無しにしたがるかな!  方や奇跡の美女と言ってもいいぐらいの身体で生まれてきたのに!  方やわざわざ変身してまで奇跡の美女が再現されたというのに!  それなのに残念の仕方がエグすぎるでしょ! こいつらなんなんだよ!