検査結果は10分ほどで出た。この早さもこの2人がいるからこそのなせる業。
「まずはじめに参考情報から。これがジェレイナとシェミルのデータよ。
見ての通り、妖魔値はジェレイナの値のほうがちょっと高いのが特徴よ。でも――」
リリアリスはもう3人のデータを出した。
「こっちがシェルシェルでこっちがフラウディア、そしてフローラよ。
見ての通り、フローラ以外の2人は大体同じぐらいでフローラは特別多い感じの量だけど、
さっきの2人よりもとびぬけた量になっているわね。
要するに、これが妖魔の女であることの証ってわけね。」
そこへヒュウガが指摘した。
「さらっと言ったようだがそれにしてもフローラさんの値はこの2人よりもかなり多くないか?
1.5~1.6倍ぐらいある気がするんだが、ラミア族のほうが多いのか?」
それについては次のデータにて。リリアリスはもう3人のデータを出して答えた。
「最後にお母様とアリ、そして特別に私のデータよ。
アリは実はああ見えて、さっきの3人をも凌ぐ結構な値をたたき出しているのよね。
そして、不思議なことに私も全く同じ値が出ているわね。
で、見てわかる通り、プリズム族の長たるお母様も同じぐらいの値ということで、
私らはまさに妖魔の女の中の妖魔の女っていう種族なワケね。」
あんたを見てても全然そうは見えないんだが、ヒュウガとディスティアはそう思った。
というか多分、それは本人が一番思っているところだろうが……。
ともかく、そういったところを見るに、フロレンティーナが多いのは個人差の可能性もあるという結論になりそうである。
「ということで、あくまで比較対象を基準にして見てくれればいいわね。」
OK. ヒュウガは頷いた。
まずはユーシェリアのデータから片付けることに。彼女のデータは妖魔の力を得る前と後のデータである。
「なるほど、ジェタさんよりはかなり多いが……シェルシェルほどではないってわけか。
で、足した結果にあの姿になるってワケだな、シェルシェル並みに増えているようだな――」
ヒュウガがそう言うとディスティアが言った。
「つまり、彼女も今や立派な妖魔の女性ってワケですね」
まさに使用前と後でのわかりやすい例である。
使用後の値としてはシェルシェルの値をわずかに抜いているほどだった。
続いて、ある意味本番の男性陣を見てみよう。まずはスレアのデータから。
「拍子抜けするほど低っくいなー。まあ男ならこんなもんか、そりゃそうだ」
ヒュウガはそう言いつつ、リリアリスに訊いた。
「今更なんだが、これって男のデータを分析する必要あったのか?
それにどうせやるんだったら国王様とか、ほかにもサンプル採っておいてもよかったんじゃないか?」
リリアリスは答えた。
「後者については確かにそう思ったんだけど、
何せ思いついたのがこっちに出てくる間際だったから仕方がないじゃないのよ。」
そういうことか。
「前者は?」
「ティレックスがやっぱり気になるでしょ?
で、どうせだからあんたたちも一緒にやってしまおうってのが目的なワケよ。」
まあ、科学的見地で言えば男性にも妖魔要素があるのかという点はヒュウガとしても一応興味のあるところだった。
「はい次。」
次のデータは2つ……
「左がディア様で、右がディアナ様ね。」
えっ……ヒュウガはが驚いていた。
「わざわざ変身させてまで採取したのはこういうことでしたか……」
ディスティアはそう言うとヒュウガは訊いた。
「変身だろ? なんで値まで変わるんだ? おかしくないか?」
その前に、まずはディア様の素の値を見てほしい。
「実は結構多いことに気が付かない? だから男だからって少ないと考えるのは早計って感じね。
確かに女性ほど多い傾向なのは一般の男スレアとかをみれば明らかだけど、
必ずしもその通りではないということよね。」
確かに意外と多いことに気が付かされたヒュウガ、
値としては素のユーシェリアほどではないにせよ、それでもそれに近いぐらいの値を叩き出していた。
そしてディアナ様についてリリアリスは答えた。
「これはある種のドーピングね。
無論、ただの変身ではなく、変身”術”というとおり魔法の力を使用している能力だから、
そういうレベルで変化しているものだと思えばいいのよ。」
つくづく恐ろしい力だ、こいつの変身術は……ヒュウガはそう思い、息をのんだ。
値としてはユーシェリアの使用後をはるかにしのいでおり、随分高い値を保持していた。
「次はティレックスね。ここまでくれば大体予想通りだけど――」
肝心の妖魔値は高い値をたたき出していた。
「母親の影響なんだよな。でも、そうだからと言って妖魔の女ほど高い値ってわけでもないんだな。
つまりは男の限界……」
と言うが、リリアリスはそれを否定した。
「次のを見ればその考え方も変わるわよ。」
ということで出したデータ、それは――
「ん? 誰のデータだ? ずいぶんと高い値をたたき出しているようだが――」
リリアリスはニヤっとしながら言った。
「いやいや、誰って……ほかにいると思う?」
えっ、まさか!? ヒュウガは自分の目を疑った。
「ウソだろ!? もしかして、俺!?」
「大正解、大変よくできました♪」
ヒュウガは慌てて立ち上がり、自分のサンプルを持ち、それを突き出して言った。
「俺のはこれだぞ!?」
リリアリスは何食わぬ顔で頷いた。
「そうよ、そっから取り出したサンプルで出てきた値で間違いないわよ。」
数値はシェルシェルやフロレンティーナはおろか、リリアリスやアリエーラに席巻するほどの値を軽くたたき出していた……。
「つまり、これが個人差って言うわけよね、きっと。
だけど――これは確実にヒー様には女の子としての素質があるっていうことよね♪」
嘘やん……ヒュウガはがっくりと肩を落としていた。
「何よ、そんなに落ち込むことないでしょ。
第一、ディアナ様が乗り込む計画だったんでしょ?」
まさにその通り。
相手が男ばかりなら妖魔の女の誘惑魔法はある程度有効打になるのは確実、
しかも妖魔の女が敵である以上はそれが防御策にもなることも確実……2人は誘惑耐性が高いほうだが。
だから、ディアナ様を利用しようというのがヒュウガの目論見だった。
「なら、どうせだったらヒー様も女の子になってもぐりこめば効率よくない?」
確かにそれはその通りなんだが――
「しかも値としてはディアナ様よりも高適性、男たちなんかアンタにメロメロ、速攻で落ちるわよ♪」
そんなことしたって……
「別に落ちんでもいいんだが……だいたい、そんなことしてなんのメリットが……」
「そんなの自分で考えなさいよ。ま、言うて男たちを揶揄う程度が関の山かしらね。」
別に男たちを揶揄ったって……や、待てよ……ヒュウガは考え直した、例えばティレックスを揶揄って遊んでみるとか?
クラフォードやイールアーズがどんな反応をするのか見てみるとか? そういったことを考えたヒュウガ……
「考え直した、そこまで適性高いってんならやってやろうじゃないか。
で、どうすればいいんだ? 俺に変装術使うんだろ?」
……ヒュウガは腹の中で黒い笑いを放っていた。
つまりはこういうやつである、確実にリリアリスの血縁であることを思わせるキャラであった。。。
でも、思い出してほしい……そう言えばディスティアもそうだった。まったく、こいつら……