エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

あの日、すべてが消えた日 第3部 堕ちた天使の心 第6章 エンプレス・フェルミシア・キャロリーヌ

第87節 正体

 一方、ルルーナが敵をぶっ飛ばしたタイミングを図って飛び上がったもう一方のアマゾネス、 着地のタイミングでララーナが相対している敵を勢いよく吹き飛ばした!
「大丈夫ですか、お母様?」
 それに対してララーナは汗をぬぐいながら答えた。
「あら、あなたは――おかげさまで助かりましたわ、少々疲れたもので――」
 アマゾネスは話を続けた。
「だいぶ大勢の敵を相手なさっていると聞きましたので少々心配しておりましたが、 私の出る幕というほどでもなかったようですね」
 それに対してララーナはにっこりとしていた。
「ええ、これでも一応”ネームレス”ですからね。 とはいえ流石に疲れました、ここのところずっと動きっぱなしなものですから、 これまでの運動不足が祟ったのでしょう、たるんでいた証拠ですね――」
「いえいえ、そんなことは――」
 アマゾネスは改めて訊いた。
「それよりシオラさんはどこでしょう?」
「シオラさんならこの先にいます、キャロリーヌと対峙しているハズです」
 そう言われてアマゾネスは言われたほうへとさらに進んでいった。
「シオラを頼みましたよ! 彼女のことはあなたにすべてお任せいたしますので!」
 ララーナにそう言われたアマゾネス、少し立ち止まるとにっこりとして応え、 敵のいる中をかき分けていった。

 そして周囲の雑魚を掃除しながら突き進んでいくアマゾネス、シオラのもとへとたどり着いた。
「うふふっ、ようこそアタシの庭へ。アタシの美貌のためのイケニエになるんだったら誰でも歓迎してあげるわよ、ウッフフフフフ――」
 キャロリーヌ様は上機嫌だった。その前でシオラは項垂れ、息を荒くしていた。 周囲は男たちはなんだか盛り上がっており、とにかくキャロリーヌ様一色という感じだった。 そのような逆境の中のシオラのところへアマゾネスは素早く向かった。
「シオラさん、大丈夫?」
「えっ、あなたは、一体!?」
「私ですよ、いろいろとありまして――」
 そう言われてシオラはすぐに気が付いた。
「えっ、まさか!?」
「はい、そのまさかです。シオラさんを助けるためにこうしてやってきました!」
 そのやり取りを見てキャロリーヌは高笑いしていた。
「アハハハハハハ! その女を助けるですって!? あら、そう―― ならやれるもんならやってみなさいな! 男をまとったアタシはもはや無敵!  相手が1人だろうと2人だろうと同じこと! ほらぁ! さっさとやってごらんなさいよ!」
 それに対してアマゾネスはにっこりとした顔で答えた。
「ええ、それでは早速。 それにしてもこのようなシチュエーション、前にも一度ありましてね、 その時は私の手できちんと片をつけることができました。 つまりは――今回も私たちの大勝利を納めて終わることになりそうですね!」
 その自信はどこから――。 しかしこのシチュエーションに経験がある御仁といえば、だいたい限られてくる――

 その一方で。
「その剣、あんた一体どこで――」
 スレアはそう訊くと、ルルーナは答えた。
「この剣は拾ったものですよ――って冗談は言いっこなしですよね。 わかりました、正直に言いますと、これは私がカスタムしたものです。 そんなこといいですから、ちゃんと私の後ろのほうに避難していていないと吹き飛ばされちゃいますよ♪」
 ルルーナは得意げに言った。
「自分でカスタムしたものって、マジかよあの人――」
 ティレックスはそう言うとユーシェリアも言う。
「あんな剣持っている人、私、ほかに知らないんだけど――」
「それに……使う技の系統からすると間違いない、やっぱりルルーナさんは――」
 フラウディアはそう言うと、階段下から男たちがあふれてきた!  だが、そこに対してルルーナは得意の攻撃を放った!
「うふふっ、やっぱり来てしまいましたか。 そういうことであれば仕方がありませんねぇ、 そういうオイタをする子は……面倒だからおとなしくしてくださいねぇ……」
 面倒だから……やっぱりこの人、間違いない。 すると、剣からものすごい量の衝撃波が放たれ、部屋の入口ごと思いっきり吹き飛ばしてしまった!  部屋の入口がふさがってしまったのだ――
「おいおいおい、加減しろよ。帰り道どうする気だよ――」
 スレアは頭を抱えてそう言うが、ティレックスは周囲を見て気が付いた。
「いや、なんかエレベータもあるみたいだし、 それに、そもそもキャロリーヌさえ何とかしてしまえば後はどうとでもなる気がするんだが」
 言われてみればその通りだった。
「うふっ♪ ちょっとやりすぎてしまいましたね♪」
 と、彼女は振りむきながらそう言った。しかし、それに対してティレックスとスレアは――
「うふっ♪ じゃねえよ! 何のつもりでやってんだソレ!」
「そうだ! ネタは割れているんだ! もういいだろ、いい加減!」
 そう言われたルルーナは――
「へっ? 何のことです? どういう意味なのかさっぱりわかりません――」
 と、可愛げな態度で悩むと、ティレックスとスレアはずっこけていた。
「このヤロ、いい加減にしろ――」
 スレアは殺意満々でそう言い放ち、睨めつけていた。 しかし、そこへユーシェリアとフラウディアが――
「ヒュウガさん、超カワイイ! ヒュウガさんですよね!? 絶対にそうだー!」
「本当にヒュウガさん!? で、いいんですよね!? すごいなー、ヒュウガさんがこんなに美人になるなんてー!」
 と、女性陣は興奮していた。そう、このルルーナという謎の美女、
「あら、ユーシィちゃんとフラウディアちゃん!  嬉しいなぁ、2人にそんなこと言われちゃうと私、照れちゃうなぁ♪」
 と、その可愛げな態度に再びずっこけた男2人。
「いつまでやってるんだヒュウガ!」
「貴様! なんでそんな姿をしているんだ! 絶対におかしいだろ!」
 ティレックスとスレアはそう言うが、ヒュ……ルルーナは止めない。
「おかしな人たち!  私はルルーナ、ユーシェリアちゃんとフラウディアちゃんに可愛くて綺麗だって認定を受けた女の子でーす♪」
 この野郎……と思った2人だが、そう言えばヒュウガって案外意地の悪いやつだったか――ティレックスとスレアはお互いに頭を抱えていた。