そして、その騒ぎの元が現れた。
「ウフフフフッ、このアタシとイイコトしたいっていう変態共はどこのどいつかしらぁん?」
げっ、よりにもよってまさかの魔女様である、つまりはキャロリーヌ……2人は焦っていた。
「ど、どうするか……」
ティレックスは冷や汗をかきながらスレアに訊いた。
「い、いや、どうするって……どうやらこっちにも気が付いているようだし、適当にあしらってずらかるぞ」
2人は息をのみつつ改めて顔を合わせながら頷くと、軍帽を深くかぶりなおしていた。
「ウフフッ、ご苦労様♪」
なんだかやたらと可愛げな恰好をしている魔女は可愛げに振舞ってきた。
バレたらやばいのでうつむき気味に話をしていたティレックス。
「お、お疲れ様です、キャロリーヌ様……」
ティレックスは力なく言った……って、アレ? スレアは?
「ウフッ、ちゃんとお仕事しているのねぇん、関心関心♪」
スレアのやつ! 逃げやがったな! ティレックスは内心憤慨していた……
「はっ、はい、すべてはキャロリーヌ様のためでございます!」
仕方なくティレックスはキャロリーヌ様に対応、するとキャロリーヌ様はご機嫌な様子で反応した。
「あらぁ、私のためですって? 嬉しいわねぇ、そんなあなたのために素敵なご褒美を上げちゃうわぁ……」
えっ、ご褒美!? それはヤバイのでは……ティレックスは焦っていた。
「あっ、いえ、あの、お言葉ですがキャロリーヌ様、俺はその、別にそんな大活躍なんて言う程のものは……」
だがしかし、キャロリーヌ様はさらに妖艶な香りを漂わせて誘ってきた。
「そんなことないわ、見張りだって大切な仕事じゃない、
そう思ってアタシはやってきたのよ、アンタにいい夢を見させてあげようと思ってね――」
そっ、そんな――ティレックスはもはやどうしていいのかわからなかった、
このままじゃマズイ、確実にキャロリーヌに……
「ウフフッ、さあほらぁ、この私の元へと来なさい――」
誘惑の香りが漂う! なんだこれは、なんだか知らないがものすごく、ものすごくたまらない!
ティレックスは心が奪われそうになっていった――俺は、キャロリーヌ様の下僕になるというのか――
「フフッ、アンタにはトクベツにイイコトさせてア・ゲ・ル♥
さあ、このアタシのことがもっと欲しくてたまらないでしょぉん♥」
うわぁっ! これは欲しい! この素晴らしいお方の素晴らしい身体がとても欲しい!
ティレックスはもはや自我を抑制できないでいた――
「さあ、いらっしゃいな、私の愛しのド変態さん♥」
「ふぁあい! キャロリーヌ様ぁ! いただきまぁす!」
ティレックスは帽子を脱ぎ棄てると、そのままキャロリーヌ様の身体へと……すると、
「ウフフッ、さあ、いらっしゃ……って、え!? あれ? もしかしてティレックス?」
ん、なんだか急におかしい、どうしたものだろうか、いきなり自我が戻ってきたティレックスは、その女性の顔を確認していた。
なんだろうか、どこかで見覚えのある顔の気が……
二度見三度見を繰り返すティレックス、そしてその女性の顔がとある人物の顔とついに認識が一致した!
「えっ、まさかお前、ユーシィか!?」
「そうだよティレックス! どうしてここに!?」
2人は話し合っていた。
「ユーシィって時々恐ろしいことを考えるよな、つまりは施設中の男共の理性を回収しまわっているってワケか……」
それに対してユーシィはにっこりとしながら言った。
「ティレックスにも効果覿面だってことがわかって嬉しいな♪」
ティレックスは参っていた。
「やられた、まさかこんなこと考えているとはな――」
「前々から言ってたじゃん♪ ティレックスって女の子に強いところがあるけれどもこういうのはどうかなってさー♪
お母さんがアレだからなのか、あんまり誘惑魔法とかで絆されるところ見ないからさ、本当は効くのか不安だったんだ――」
でも、ユーシェリアにはかなわなかったティレックスだった。
「俺もまだまだってことだな」
ティレックスは頭を抱えながら言った。するとユーシェリアはティレックスの左腕にしがみついていった。
「そんなこと気にしなくたって大丈夫! この私がほかの女の毒香から守ってあげるからね♥」
ティレックスはユーシェリアにたじたじだった。するとそこへ一旦現場から逃げていたやつが戻ってきた。
「よう、こんなところでお熱いことで」
それにすぐさま反応したティレックス。
「なんだ、誰かと思えば自分の彼女をいつも脱がしているやつじゃないか」
それを聞いたユーシェリアは楽しそうに言った。
「じゃあ、今度からティレックスもその仲間だね♪」
はぁ!? ティレックスは耳を疑っていた。
「やれやれ、冷房の温度下げないとやってられんな」
スレアは皮肉っていた。
ティレックスたちは捕らえられているデュロンド勢を解放した。
「ウィーニアさん、大丈夫!?」
ユーシェリアは彼女にそっと手を添えながら言った。
「あら、誰かと思えばユーシィじゃないの……ずいぶんとまた大人っぽくなったわねぇ……」
いや、そんなに時間が経っているわけではないが。変身のせいである。
「衰弱しているな、とにかく水を飲むんだ――」
ティレックスは自分の水筒を出してウィーニアにゆっくりと飲ませた。
「ありがとうティレックス君。やっぱりいいわねぇ、幸せな夫婦に助けてもらえるだなんて私も幸せ――」
そう言われたティレックスは焦っていた。
「うん、とりあえず落ち着いたわね。
状況もわかったし、ここはもういいからあなたたちにはそのキャロリーヌっていうのを何とかしてきて欲しいわね」
ティレックスは頷いた。
「とにかく無事でよかったです。後で迎えに来ますからそれまで待っていてください!」
「そんなこと気にしなくたって大丈夫よ、思いっきりやっちゃってきて!」
そう言われ、ティレックスとユーシェリアはその場を去ろうとしていた。
するとウィーニアは自分の端末を胸元から出した、身体に収納できるほど小型のものである。
「隠し持ってて正解……だったけどバッテリが無くなっているわね、ダメねこれは――」
するとユーシェリアは自分の端末を取り出してウィーニアに渡した。
「しばらく使う予定がないので好きなだけ使ってください!」
「ユーシィちゃん、ありがと♪」
そして2人が立ち去ると、ウィーニアはユーシェリアの端末からバッテリを抜き、
自分の端末に入れ替えて端末を起動させると、ティレックスが置いていった水筒の水を口に含ませていた。
「ぃよっし! 元気も出たことだし、やるわよ!」
そしてユーシェリアとフラウディアが合流した。
「スレア!」
「フラウディア! 無事か!?」
そしたら当然――
「お前も人のこと言えないだろ!」
ティレックスは呆れ気味にそう言った、冷房が必要そうだということである。
「うん、お熱いね! でもさ、お母様はどこに行ったのかな?」
ユーシェリアがそう言うと2人はすぐさま離れ、フラウディアが答えた。
「あっ、お母様はその辺にいると思いますよ、シオラさんを探すって言ってましたから」
「わかるものなのか?」
スレアがそう訊くとユーシェリアが言った。
「精霊魔法でなんかノイズを発しているみたいだって言ってたからね」
なるほど。
そして……少しした後に女性陣4人全員と合流したティレックスとスレア。
「あら、みなさんお揃いで」
ララーナと遭遇した一行、ララーナと一緒にシオラがいた。
「ティレックスさんとスレアさんも来ていたのですね」
ティレックスは頷いた。
「事情は分かった、とにかくキャロリーヌを倒すぞ」
しかし、それについてララーナがシオラに――
「お確かめになられたのですね?」
「はい、直接確かめました、間違いないと思います!」
何の話だろうか、ティレックスがそう聞くと、
「ええ、みなさんでキャロリーヌを倒しましょうと、そういう話ですよ」
ララーナが言った、えっ、本当にそんな話?
「みなさんよろしくお願いします!」
シオラは力強く言った、本当にそんな話……