もはや不安でしかない空気感、そんな中でいよいよ事が起こってしまった。
女性陣はしばらく地下を歩いていると、何やら人影が――
「え? 人?」
ユーシェリアがそう言うとテミアが言った。
「プリズム族です」
それに対してララーナが不思議そうに言った。
「こんな奥深くにですか? それに地下といっても、建物の真下にあるという感じではないようです。
一体どういうことでしょう?」
テミアは頷いた。
「もちろん、それがどういうことなのかすべてを説明いたします。
それではどうぞこちらへ――」
と、テミアは狭い一室へと促した、それはエレベータの様である。
女性4人組はエレベータで案内されたところへ先に到着していた。
そこはなんだかお城の玉座の間のような感じで、奥には天蓋付きのベッドのような感じのゆったりとしたソファが置いてあった。
これはいったい――
するとそこへ、後から遅れて別のエレベータからテミアが複数の男を引き連れてやってきた。
その男たちはなんとクラフォードと、どこかへ消えたハズのエクスフォスの2人、そしてまさかのイールアーズだった!
「えっ!? えっ、えぇー!?」
ユーシェリアはその状態に驚いていた。
「ど、どういうことなの!?」
フラウディアも驚いた。するとテミアは――
「あーぁ、これでやーっと全部片付いたわねぇ――」
気だるそうに言った。どういうこと!? そう思っていると、シオラが言った。
「あなたシャルロンちゃんでしょ! 私にはわかるんだからね!」
そうなのか!? すると彼女はソファへと座りセクシーな脚を組むと、仮面を脱ぎながら言った。
「流石はシオりんね、親友であるハズのあなたがこの私のことを一番怪しんでいたぐらいだしねぇ――」
その仮面を脱ぎ去ると、確かにその下には彼女の顔が隠されていたのだが、
それと同時に彼女からはかなり強力な妖気が漂ってきた!
「これは!」
ララーナは驚いていた。それに対してシャルロンは女王様ばりの様相で高飛車的な態度で言った。
「うふふっ、そうよ、この私こそが本物のエンプレス・フェルミシア・キャロリーヌ様よ!
みんな、この私の為によく尽くしてくれたわ。さぁて、ご褒美が欲しくてたまらない変態共!
皆殺しにしてあげるわぁん♥」
するとキャロリーヌは自らの身体からより強烈な色香を発し、周囲の男たちの身も心もすべて奪い去っていった!
皆殺し、つまりは悩殺ということか――
「この力、まさか――いえ、この妖気はもしや!」
キャロリーヌは自らの胸元からおそらくブラパッドのようなものを抜き出しつつ、ニヤりとしながら言った。
その際、さらに強烈な妖気が漂ってきた!
「ええそうよ、私はプリズム族よ。
ったく、ちょっと気配を隠したぐらいですーぐ騙されるんだから。
案外簡単に引っかかるのねぇ、あんたたちったら♪」
すべては仮面の下に自らの能力を封じていたということか。
そしてキャロリーヌはブラパッドを地面に投げ捨てながら言った。
「ほら! そこの変態共! エサの時間よ! たっぷりと味わいなさぁい♪」
すると、そのエサ……ブラパッドに対してエクスフォスの2人が興奮しながらとびかかってきた!
……その2人はそのブラパッドを無我夢中で――
「あははっ! まーったく、男って超簡単よね!
アタシの美貌、アタシの色香ですべての男たちはたちまち虜となるのよぉん♪
なんとも素敵な能力ねぇん♪ そこのアンタだってそう思うでしょ?」
そんな彼女に対してララーナは剣を引き抜いて言った。
「いいえ! 私たちの力はこのようなために使うものではありません!
このような使い方をするのはプリズム族にあらず! せめてこの私の手で葬って差し上げましょう!」
しかし――
「うっ、いやあああっ!」
ララーナはいきなり強烈な電撃を浴び、その場で崩れ去ってしまった!
どうやらキャロリーヌが発した雷魔法が伝導体らしきものを伝い、彼女に向けて放電したようである。
その放電の元となる伝導体は大がかりなもので、それをクラフォードがしっかりと持っており、
先端部をララーナに向けていたようである。
「アタシの魔力を増幅する装置の味はいかがかしらぁん?」
キャロリーヌは得意げな態度でそう言いながら立ち上がると、
その場で崩れて蹲っているララーナの身体めがけて蹴り飛ばした。
「ったく、うっさい女ね、アンタが一番うっとうしいのよ……」
と、床に突っ伏しているララーナの背中をヒールで踏みつぶすと、
不気味なぐらい邪悪な笑顔で彼女の背中をぐりぐりと押し込んでいた。
「でも、アンタのおかげですべてのプリズム族……
いえ、アタシの美貌のためのイケニエがすべて集まったのだから、感謝しないといけないわねぇ――」
すべてということはつまり――
「ええ、言うまでもないわよねぇ? ロサピアーナ軍にイケニエ共の場所をリークしたのはこのアタシよ。
イケニエ共は全員とらえてこの施設で実験材料としてきちんと使わせていただくことにしたってワケ。
そう、すべてはこのアタシの美貌のための踏み台としてね! 特にお前はプリズム族の長とも言われるほどの女!
しっかりと研究して、このアタシこそが真の美貌の保持者としてありとあらゆるを魅了する女神となるための糧にしてあげるわ!
光栄に思いなさぁい♥ アハハ! アハハハハ! アハハハハハハハハハ!
世界を支配するなんて、なんて簡単なのかしらねぇ! 世の中チョロイわね! アハハハハハハハハハ!」
キャロリーヌは狂ったように笑っていた。
そう、まさにクレイジアでの一件は全て彼女に踊らされていたにすぎないのだった。