エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

あの日、すべてが消えた日 第3部 堕ちた天使の心 第6章 エンプレス・フェルミシア・キャロリーヌ

第74節 嘘か誠か

 それからしばらくし、テミアがユーシェリアとフラウディアのいる方へと近づいてきた。
「あっ、あの、シャルロンちゃんはどうしているんですか?」
 ユーシェリアはモジモジしながらそう訊くとテミアは答えた。
「シャルロンにはあなた方がいることとプリズム族の事で伝令に出していますので今はここにはいません。 それはそうと、あなた方がシャルロンが言っていた方々ですね。 あのシャルロンのことを気にかけて頂いたようで感謝です。 あの娘はずっとこの戦いに駆り出されることを嫌がっていましたので――」
 そこへシオラがやってきて話に参加した。
「やっぱり! シャルロンちゃんは嫌がっていたんですね――」
 テミアは頷いた。
「あなたがシオラさんですね、シャルロンはエダルニア軍の攻撃の前に私たちが引き取っています。 伝達手段がなかったので言うのが遅くなってしまいましたが、そういうことですのでご安心いただければと思います。 本当にご心配をおかけしてすみませんでした」
 シオラは悪びれた様子で答えた。
「いえいえ、そんな! むしろシャルロンちゃんを助けて頂いてありがとうございます!  シャルロンちゃんが無事なら私はそれで充分ですから!」
 テミアは仮面の裏では何やら楽しそうな感じの雰囲気で答えた。
「そう言っていただけると嬉しいです。それよりも、あなた方にご案内したいところがあるのですがいかがでしょう?」
 そう言われるがままに3人はテミアについていった。

 その途中、ララーナに出会った。
「おや、どうかいたしましたか?」
 テミアが訊くとララーナは答えた。
「ああ、これはちょうどよかったです。 プリズム族をお助けいただいたということですが、どこを探しても見つからなかったのでどうしたものかと考えておりました」
 それに対してテミアが言った。
「そうでした、それについては本当に申し訳ないのですが、 彼女らはやはり妖術の使い手で誘惑をまとうような種族であるということで、 軟禁というわけではありませんが、こちらの独断で行動範囲を制限させて頂いております。 すみませんが何卒ご容赦を――」
 確かに何かしらの問題があるかもしれない、それを危惧しての措置らしい。 それに理解を示したララーナは答えた。
「それもそうですね、第一彼女らは里を追われて非常に傷ついている状況です、 ですので行動範囲を制限する必要はないとは思うのですが―― とはいえ、男性陣の多い環境下では何が起こらないとも限りませんので、そういうことなら仕方がありませんね」
 テミアは頷いた。
「はい、本当にすみません。 それで今、これから彼女らのいる場所へと案内しようと思いまして、みなさんを案内しているところでした。 ご一緒にいかがです?」
 そういうことならララーナも異論はなかった。

 そしてとある建物の前までやってきた。そこはなんだか頑丈なつくりの建物だった、しかも――
「ここってなんの建物だったんだろう――」
 フラウディアがそう言うとテミアは言った。
「さあ、そこまでは。ですが、今はロサピアーナ軍に対抗するための拠点の一部として機能している場所となります。 ロサピアーナ軍にだいぶやられてはいますが、トリビュート・フラットの折にはなんとかこの建物で踏みとどまったものです。 もっとも、ここはロサピアーナが完全に手中に収めている土地と謳っているところではありますが、 我々のような存在がひそかにここで行動していることからもお分かりの通り、 クラルンベルとしてはそれを断固として認めてはいません」
 なるほど――
 建物内は明かりがついており、生活のライフラインは生きているようだった。 そして、内部をくまなく進んでいくと、そのうち地下へと降りて行った。
「ロサピアーナ軍の砲撃から守るため、地下にすべての備えがあります。 そして、そこに彼女らを隠しております」
 とはいうものの、どこにいるのだろうか、まったくいるような気配がない。
「彼女らはさらに奥です。もう少し先に進んでください――」

 一方で取り残された男性陣――
「ふあぁあ……眠い。てか、なんだか急に静かになったような気がするんだが気のせいか?」
 ヒュウガはあくびをしながら振り向くと、そこにはティレックスが完全に転寝している光景だけしかなかった。
「あれ? みんなはどこだ?」
 ヒュウガは立ち上がるとスレアがやってきて言った。
「あれ、ヒュウガとティレックスだけ? 他はどうした? 特に女性陣が見当たらないんだが――」
 ヒュウガは頭を掻きながら答えた。
「言われてみればいつも元気なのがいないな。みんなどこに行ったんだろうか――」
 そして2人で外に出るととある建物に目が言ったのでそれを見ていた、 その建物は女性陣が入っていった建物だった。
「あれはなんだ?」
 スレアがそう訊くとヒュウガは答えた。
「スラクダージャ研究所という場所らしい。 作ったのはロサピアーナで、言うまでもないが軍事兵器開発が目的なんだとか。 言っても旧ロサピアーナ、もとい旧ソーヴェ大連邦時代の遺産、完全に過去の遺物ってわけだ」
 スレアは頷いた。
「スラクダージャって言われてみれば聞いたことがあるな、 確かクラルンベルとロサピアーナとの国境にあるんだとか。 てことはあっち側はロサピアーナ領ってことか?」
 それに対してヒュウガは頭を抱えていた。
「なーんか引っかかるよな、こんな重要そうな拠点、ロサピアーナだったら何が何でも押さえておきたいハズだろう?  ……俺もどっかの誰かさんに触発されたかな、柄にもなくこんなこと考えるなんて。 それはともかく、そんなに重要だったらなんでさっきの連中……クラルンベルの軍勢がこんな近くまで来ているんだ?  ロサピアーナにやられているんだったらこの建物にロサピアーナ兵が張っていたっておかしくはないはずだが――」
 張っているどころか駐留しているような様子すら見当たらなかった、なんとも妙である。
「ん、言われてみれば確かにそうだな。 だとしたらなんかヤバイ気がするな、早くティレックスを起こすぞ!」
 スレアは慌ててティレックスを起こしに行った。なんだか状況はあらぬ方向に傾いているようだった……。