エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第3部 果てしなき旅の節目にて 第8章 幻想を抱いたまま死ね

第158節 来る決戦の時、渾身の作

 リファリウスの何か知っているんじゃないか論だが、ついにそんな話題もなくなり、 本当に何も知らないんだということで話が落ち着きつつある。
 これまでいろいろと知っていたはずのこいつ、ここへきて、 特に向こうの世界アンブラシアのことになると、あいつはなんでも知らないと言いはる。 いや、向こうの住人なんだろ? そうは思うのだが、 じゃあ、エンブリア民がエンブリアのことを1から10まで知っているかと訊かれればぐうの音も出ない、 つまりはそれと同じことで、これ以上を求めることが野暮ってもんだ。
 それにアンブラシア民は他にもいるはずなんだ、そもそもお前知らないのかよとガルヴィスにも訊いたクラフォード、 あいつはリファリウスかリリアリスに訊けとしか言わないが、 クラフォードは思いっきり「俺はお前に聞いている」と言って力づくで訊いたこともあった。 それには流石のガルヴィスも驚いていたが、結局ガルヴィスも何も知らず、 いずれにせよ、向こうの世界に行って確かめるしか道はなさそうだと改めて考えるに至った。
「何かつかめたのか?」
 ティレックスは訊くとクラフォードは答えた。
「ああ、確かなことは一つだけ。 それは誰かに聞くよりも、直接現地に行って確かめたほうがいいってことだ。 リファリウスにも何度か掛け合ったが、あれは本当に何も知らなさそうだ」
 イールアーズが言った。
「んだよ、てぇことは、なんだかわからんのに俺らの世界が脅かされているってことか?」
 そんな彼に対してディスティアが言った。
「なんだかわからんのに私らの世界が――そんなに強いのに脅かされていると考えればイールにとっては面白いことになるんじゃないか?」
 そう言われると――
「へっ! いいじゃねえか! やってやるぜ――」
 イールアーズは闘志を燃やしていた。
「どのネームレ……いや、アンブラシア民に訊いてもさっぱりって感じだ。 ともかく、あの回帰の先に行って真相を確かめる以外にやりようがないってことだな」
 怖気づいたか? クラフォードはそう訊くとティレックスは答えた。
「いや、むしろやる気になったな。 アンブラシア民――ましてやあのリファリウスさえ知らないとくれば、なんだか特殊なものを感じるな。 いや、それは今まではまさにあいつに頼りっぱなしだった、だから次は何、次は何と訊いていた気がする。 でも、今回はそれが通用しない相手だってこと、自分たちがこれまで培ってきたものが生かされる時が来たってことだな」
 ディスティアは頷いた。
「そのようですね。 あっ、でもリリアさんですが、知っている情報があれば逐一教えると言っていましたね。 確かに情報量が多いというのなら小出しのほうが助かりますし。 そもそもあのアンブラシアという世界ですが、相当に広いようです。 ですから一度に聞くよりはそっちのほうがいいでしょう――」
 そうだ、世界は広いんだ、その場にいたものはそう思って納得していた。

 アリエーラはクッキーとお茶を持ってテラスへとやってきた。
「はい、リファリウスさん! 姫印のクッキーでーす♪」
 姫印ということはつまり――
「おっと、これはこれはエミーリア姫の作ったクッキーかな?」
 アリエーラの後ろからひょっこりとエミーリアが現れた。
「えへへ♪ 今回のは渾身の作でーす♪ 口に合うかな……?」
 リファリウスは照れた様子で答えた。
「そんな、毎回渾身の作を渡されると私も参っちゃうなあ♪」
 そこへエミーリアはすかさず力強く言った。
「今回のは本気の本気です! 今までのよりも断然おいしいハズです!」
 リファリウスは頷いた。
「そっか、そうだよね、明日は今日よりももっといいモノを作ろう、その姿勢は大事だもんね。」
「その姿勢はリファお兄様から学んだものでーす♪」
 そう言われてみれば――リファリウスには心当たりがあった。 リファリウスはそのクッキーをひとつかみ、そして頬張った。
「なるほど……甘みの中に絶妙な塩味も入っているね、これの表現が結構うまくなったんじゃないかな?」
 リファリウスは得意げにそう言うと、
「本当ですか!? やったー! 嬉しい!」
 エミーリアはとても喜んだ。
「あとは彼だね、どう出るかな?」
 そう言われるとエミーリアはドキドキしていた。
「大丈夫ですよ! エミーリアさん、心を込めて作ったじゃないですか! きっと伝わりますよ!」

 そしてリファリウスはクラウディアスの横庭で数多の猛者たちを返り討ちにしていた。
「ったく、口ほどにもないやつらだな、そんなんで私に勝てると思ったら大間違いだ。」
 それに対してイールアーズからクレームが。
「だったらテメェ! 力で押し込んで来いよ! それともそれができないひ弱なのかよ!?」
「悪いね、そういう戦い方は苦手なんだ。 もちろんやれないことはないけれども、今のキミらにとってはまさにこの戦い方のほうが強敵感出ているじゃん?  でもキミの言う通り、ひ弱という点については弁解の余地はないね、 だから私の場合は魔法を使ってそれを補うという手法をとらせてもらうことにするけれども、それでも良ければだ。」
 んなもん容認できるわけねえだろ! イールアーズは訴えるように言うとリファリウスは呆れていた。
「やれやれ、自分が負けると自分の得意な土俵に合わせてやれとかずいぶんと無茶なことを言う。 だいたいキミとしてはどんな相手にも勝つ自信があってのことなんだろ?  だったら四の五の言わず、たとえどんな相手だとしても勝ってみればいいじゃないか?」
 いや、まさにその通り……その通りなんだけど――いや、その通りって言った時点でそれがすべてだ、そうなればぐうの音も出ない。

 リファリウスはその場の数多の猛者たちをさっさと追い払うと、奥で瀕死状態のラシルの元へとやってきた。
「やあ! 気分はどうかな?」
 いいわけないだろ、そう言いたそうにしていたラシル。 彼もリファリウスからの被害者の一人で、リファリウスから”特別対応”を喰らっていた。
「ちょっ、ちょっと、いつもより強くないですか?」
 リファリウスは頷いた。
「言っただろ、”特別対応”だってね。 いつも”次期国王様なりの特別対応”だけど、今回は”次期国王様だからこその特別対応”だからね。」
 だから次期国王様言うのやめろ、ラシルはそう思った。
「待っててね、国王様……”ヒール・ブリーズ”――」
 それに対してラシルは気が付いた。
「ん? ”ヒール・ブリーズ”ということは、風系回復魔法では最下位ですか?」
 リファリウスは首を傾げた。
「んー、確かに最下位は最下位だけどちょっとばかり違うかな。 最下位ランクでは”ヒール・ウィンド”もあるし、瞬間的効果もそっちのほうが強力だけど、 ”ヒール・ブリーズ”のほうはリジェネレーション効果があるんだ。 つまり、時間こそかかるけど最終的には”ヒール・ブリーズ”のほうに軍配が上がるんじゃないかな?」
 そういえばそうだった、ラシルは気が付いた。 この通り、”フェドライナ・ソーサー”には決まった魔法はないとはいえ、 それでは不便なため、ほかの系統の魔法と同じような魔法を作って同じ名前の似たような効果の魔法を作って凌いでいるようだ。 なお、実はこれはほかの魔法系統でも同じようなことがなされている模様。
「それよりも、キミと話をしないといけないんだけどいいかな?」
 今度はなんだ……ラシルは嫌な予感がしていた。