エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第3部 果てしなき旅の節目にて 第8章 幻想を抱いたまま死ね

第152節 怒れる碇、座する者は

 イールアーズの叫び声がしたので一行は慌ててそこに赴いた。
「なっ、なんなんだこれは! なんだか知らねえがやばそうだぞ――」
 目の前には片方の壁から突き出た、異様な何かによって道が半分塞がっていた。 そして、その突き出た何かから大量の魔力が――
「これはその”エンハンスド・クォーツ”というやつではなさそうだな。 よく見るとただの鉄鉱石の中からエンチャント素材が飛び出して膨張しているだけって感じだが――」
 と、クラフォードが言った。 さらに、周囲には無数の”エンハンスド・クォーツ”が飛び散っているようだった、どうなっているんだろう――
 するとリファリウスは頷いた。
「そりゃそうだ、なんたってこれは私が設計したやつだからね。」
 なんだって!? 一行は全員驚いた。
「なんでこんなところにお前が作ったものがあるんだよ!? どういうことだよ!?」
 アーシェリスはそう疑問を投げかけるとディスティアは気が付いた。
「鉄鉱石の中からエンチャント素材――そうか、これってもしかしてアンカーですか?」
 リファリウスは頷いた。
「まさに設計通りに動作したようだね。これのおかげでいろいろと分かったんだから、ありがとうね――」
 リファリウスはそう言いながらアンカーのそれに含まれている魔力を吸収すると、それは力を失っていた。
「いや――でも、こんな……あのアンカーだぞ!? いくら何でもこんなに大きくならねえだろ!?」
 イールアーズが訊くとリファリウスは頷いた。
「それについては……キミたち次第ってところかな?」
 どういうことだクラフォードは訊いた。
「前にも言ったように、抜けないように鍛錬した後に物理的な返しをつけたんだ。 もちろんそれだけじゃあ足りないと思い、そもそもこういう構造になるようにして確実に抜けないようにしたんだ。 でも、それでこの仕掛けがここまで大きくなるのは私でも想定外だよ、 私が鍛錬した場合はせいぜい太さが3~5倍とかその程度にしかならないし、 それにもっと――やるからには丁寧だ、もっと均等に太くなる――丸くて大きな球体ぐらいになっているハズだからね。」
 そう言われてガルヴィスは気が付いた。
「なるほど、つまりはこのアンカーは鍛錬した人がお前のように技術とか考えもなくぶっ叩いていること、 そのうえで余程の剛腕だから、魔法を発動した際もこんな歪な具合に大きく膨れ上がったということだな」
 リファリウスは頷いた。
「でも、そのおかげで外部からの――この空間内の魔力を吸収してここまで肥大化することになった、 そのせいで敵もこれを抜くことは断念したんだろう、だからずっと抜けずにこのままになっていたんだと思うよ。」
「確かにあの程度のアンカー、正直言うと、外から見た分にはなんで敵は抜かなかったんだろうとは思っていましたが―― これでは流石に断念しそうですね――」
 ディスティアは考えながら言った。
「へっ、俺の力、思い知ったか!」
 イールアーズは調子よく言った――いやいや、ツッコミどころはたくさんあるが、 これはお前が鍛錬したものだったのか、みんなで疑問に思っていた。 そもそも誰が鍛錬したものかはまったく区別できていない。

 そしてさらに階段を上り続けると、そこには玉座だけが置いてあった。 天井も高く、如何にもという場所だが、
「誰もいないわね――」
 そう、フロレンティーナの言うように誰もいないようである。するとアリエーラが注意を促した。
「でも、誰かがいるのは確実です! みなさん、気をつけてください!」
 すると、リファリウスは何食わぬ顔で”兵器”を取り出すと、玉座に向かって勢いよく”兵器”を突き刺した!
「貴様……いきなり失礼なやつだな――」
 なんと、どこからともなく声が! するとリファリウスが言った。
「ふっ、よく言うよ、キミだってうちの国にこの破壊兵器で土足で踏み荒らしていったクセに言うに事を欠いてそれとは――見上げた根性の皇帝だね。」
 えっ、皇帝ってどこにいるんだ、ガルヴィスが言うと――
「いや、隠れる方法はほかにないと思って確かめた結果だよ、そしたらやっぱりかと思ってさ。 でも、ここまでの魔力の持ち主、結構な使い手だと思った。 そう言うわけだから姿を現してもらおうか、スペキュレイション……」
 リファリウスから何か白くて淡いものが飛び出ると、それは玉座の左手側、つまり一行から向かって右側を覆いつくしていた!
「ぬおっ! くそっ……」
 そいつは姿を現した、みすぼらしい旅人のような姿をしたやつだった。
「”スペル・プロテクト”で対策しているようだけど”ミスト・スクリーン”の場合はその効果も薄いこと、知ってた?」
 姿こそあらわすことになったがその姿は少々透けていた。 なるほど、解呪耐性を得ていても”ミスト・スクリーン”の場合は隠ぺいの濃淡が変わるだけで、つまりは見えることには変わらないということらしい。 もっとも、どこに向けて発動しなければいけないか把握していないと解呪さえできないのだが。
「それに、私は左手側から右に向かって袈裟斬りをしているわけだから逃げるのは必然と右手側になってしまう。 どこに向かって発動すればいいかもすでに”計算”済みだよ。」
 こいつ、本当に手ごわい――