エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第3部 果てしなき旅の節目にて 第8章 幻想を抱いたまま死ね

第149節 竜巻の迷宮、地獄の要塞

 竜巻の上は確かになんだか穴のように開いており、この大空洞の中へと入ることとなった。 内部でも激しい乱気流こそ渦巻いてはいるが、外側に比べれば大した風でもなさそうだった。
 ただし、中はなんだか暗雲から雷も発生している空間のようで、暗々としていた。 しかし、そんな中で一筋の光が確認できた。
「あれはなんだ!? なんか光っているぞ!?」
 ティレックスは訊くとリファリウスは答えた。
「アンカーだ、光っているのはエンチャント素材のせいだ、 この刺さっている物体を確認するためにみんなよくやってくれたよ。」
 だが、肝心の刺さっているその先のものが消えている、どうなっているのか、それは――
「また隠れているようですね……スペキュレイション!」
 アリエーラは再び解呪を試みると、そこには異様に大きな建物が!
「これか! 確かにいつぞやのヴァレスト・パレスみたいな物体だな!」
 クラフォードをはじめ、初めてそれを見た者はそいつの存在に驚いていた。
「壁が薄いのはもっと下のほうだ、4合目ぐらいかな、そのあたりから侵入しよう――」
 と言いつつ、リファリウスはドラゴンを巧みに操ると、そこには中に入れそうな入り口が……
「なるほど、搭乗者自身の入り口がないと中に入れないからね、 切るのは大変そうだからどうしようかと思ったけど、こういうことなら話は早いね。 さあ、とりあえず行ってくれると――」
 ということで、ドラゴンはそのままその穴の中へと入って行った。

 中に入り、ドラゴンをそこにおいて少し中に侵入すると、 そこはまるで紫色の水晶の原石、アメジストのようなものがちりばめられた遺跡のようなものの中に入ったような神秘的な光景だった。 ”エンハンスド・クォーツ”の黒い色に魔力を帯び、さらには日光の色に照らされた結果の色のようである。
「見たところ、上のほうに階段が伸びているだけのようだが」
 ガルヴィスはそう言うとリファリウスは答えた。
「竜巻の中なのに内観は地獄の城に近い様相だね、あんまり死の恐怖を味わわせてもらいたくないもんだ。」
 それに対してクラフォードは皮肉っぽく言った。
「攻撃も超回避する上に魔法にも強いあんたなら平気だろ」
 いや、何の話だ、イールアーズは首をかしげていた。
「言ってないでさっさと行くぞ」
 そう言いながらガルヴィスはさっさと行ってしまった。
「なんか、魔物は流石にいないみたいですので早いところ行きましょう。」
 アリエーラがそう言うと、一行は頷いていた。

 と、ここで改めてメンバーを紹介。 相手はディスタードの皇帝ということもあって、やはりディスタードの皇帝に一泡吹かせたいというメンツばかりがそろっている。 まずは旧ディスタードのマウナより進撃を受けていたアルディアスのティレックスとユーシェリア、
「ようやく、悪の枢機卿を相手にする時が来たか。 まあ、アルディアスを陥れたときは本人じゃあないんだろうけど」
「4代目って言ってたもんね。でも、世界を脅かすというのなら誰であろうと容赦しないからね!」
 ディスタードの皇帝についてはそこまで関係していないが、 それでもエクスフォスを危機に陥れることに一時期は加担していた事もあり、 アーシェリスとフェリオースも加わっていた。
「でも、俺らを陥れようとしていたヤツは4代目なんだろうな、つまりはこいつの時にすべてが始まったということだ――」
「ああ、こいつの存在がなければ、そもそもエクスフォスの大量虐殺が――あの戦争は起きなかったと思うと腹立たしいな――」
 そしてグレート・グランド周りの三強、イールアーズとディスティア、クラフォードにとっても因縁のある相手である。
「傭兵時代はだいぶ世話になったからな、こいつが引き起こした戦争のせいで俺らは各地に派遣され、そして仲間も失ったんだ――」
「その通り、何代目だろうとかまいません、ディスタードの皇帝を名乗るのであれば私も容赦はしない――」
「ああ、こいつのせいで多くの血が流れたんだ、この手で決着をつけてやる」
 そしてフロレンティーナとフラウディアである。
「この時を何度夢に見たことか。女の仕返しほど恐ろしいものはないってこと、教えてあげるわ――」
「復讐なんて好ましくはないけど――だけど今回の相手は絶対に許しません!」
 以上がエンブリア組、続いて、”ネームレス”組こと、アンブラシア組である。 まずは当然ながらリファリウスとアリエーラ、
「さて、いよいよ追い詰めたぞ、逃がさないからね。」
「はい! エンブリアを脅かすのなら私だって容赦はしません!」
 そして、ほとんどついで程度、特段因縁のないガルヴィスがいた。
「……なんか、俺が来たこと自体が間違いだったようだが――後には引けないか。 まあいい、相手が”ネームレス”って言うのなら俺だって容赦はしねえ――」
 しかし、全員に対してリファリウスは注意を促した。
「あっそうそう、改めて言っておくけど、犯人はまだそのディスタードの皇帝でしかも”ネームレス”であると決まったわけじゃないんだよ?  あくまで可能性の話だからね。」
 それを言うんじゃない、男性陣は一度にそう指摘した。 そんなことは承知の上でやってきている、いずれにせよ、この破壊兵器を止めないことには仕方がない。