そして、最深部まではそこまで深くはなく、その道中で異変に気が付いた。
「ん? 何の音だ?」
なんか、最深部らしきその場所で何かが暴れているような音がしてきた。
「魔物か?」
確かに魔物が暴れているような音と言われたらその通りである。
そして近寄ってみると、
「リファリウス! あれ!」
フィリスが促した、なんと合成獣キマイラと空を飛んでいる何かがその場に鎮座していた!
「ちっ、よりによって大型の魔物2体かよ! おもしれえ!」
そう言ってイールアーズは剣を抜くが、
「や、待った! よく見て見ろイール、2体とも襲ってくる様子はない。
むしろ互いに争い合っているような感じだ」
と、ディスティアは促すが――
「んなことはどうでもいい、魔物とあらば両方倒すまでだ!」
と、イールアーズは聞かなかった、ディスティアはもはやお手上げだった。
しかしそこへティオが――
「おっと! まあ、そうだよね。」
リファリウスは自分が抱えていた彼女が飛び出すと、驚きながらそう言いつつも、そのまま様子を見ていた。
「何がそうだよね、だ!」
アーシェリスはやっぱりもんくありげにそう訊くとリファリウスは答えた。
「ほら、よく見て見なよ、あの空を飛んでいるほうをさ。
まさにあれこそが我々が今回追い求めているものなんじゃないかな?」
え? そう思って改めてみると――強靭なボディに強靭な翼、
そしてそのフォルムといい、どこからどう見ても伝説のドラゴンと思しき存在にしか見えなかった。
「てことはなんだ? あっちの大きいほうは敵じゃねえのかよ――」
と、イールアーズはがっかりしながら言った。何故がっかりする、ディスティアは突っ込んだ。
「話はまとまったところで。で、あの合成獣、結局いくらでも出てくるみたいだな」
フィリスがそう言うとリファリウスが言った。
「キマイラの産卵場所にもなっているのかもしれないけど、残念ながらお互い相容れないという状況のようだ。
キマイラには悪いけど、私らも排除しようという気概のようだから、この際倒すしかないね。」
しかしそのキマイラだが、次のドラゴンの尻尾攻撃を受け、そして炎であぶられると、そのまま焼失してしまった。
どうやらドラゴンの背後からティオが魔法による支援をしていたようで、ドラゴンに加勢していたようである。
それに気が付いたドラゴンはこちらを振り向くが――何となくだが、大きい割にはなんだか少々幼い印象を受ける感じだった。
「おっと、こっち向いたぞ、どうする気だ?」
クラフォードが言うとリファリウスは答えた。
「さて、どうしようか。とりあえず彼女に任せよう――」
リファリウスはそう言うとフィリスも言う。
「ティオりんがずっと大事に抱えていた卵だもんね、あの子に任せるのがよさそうね――」
言葉なき会話、よくはわからないがなんだか会話が成立しているように見えた。
そしてドラゴンは、リファリウスの元へと近づいてきた。
「おっ、おい、なんだよ……リファリウス、何がどうなっているんだ? お前、何とかしろよ――」
リファリウスに近づいていた男どもは困惑し、距離を開けていた。
「何とかと言われてもね、さて、どうしたものか――」
しかし、ティオはにっこりとしたまま特に何も伝えてこなさそうである。
「弱ったね、私に力になれることは何だろう?」
リファリウスは半ば呆れ気味にそう言うが、ドラゴンは何故かリファリウスの右側前のとある個所の空間をしきりに鼻先でつついていた。
「ん? 何、どうしたの?」
するとリファリウスは気が付き、その空間から何かを取り出した。
「えっ、もしかしてこれのこと!?」
いつもの空間潜ませ術、こいつの力どうなっているんだ。
そしてそこから取り出したものは……
「それ、まさかゼロ・ブレンダルってやつの槍!
いや――てか、それってリリアさんが持っていたやつなのになんでお前が持っているんだよ――」
そう、その槍である。クラフォードがそう訊くとリファリウスが答えた。
「竜騎士ゼロ・ブレンダルの槍、”ランス・オブ・ハイディーン”としておこうか、何故その名前なのかは追々ということにして。
重いから使うのならお前もっとけって言われただけだよ。
そうか、竜騎士の槍に反応したのか……」
リファリウスはその槍を左手で持ち直すと、右手でそのドラゴンの頭を優しくなでていた。
そうとも! これで遂に竜騎士と飛竜がそろったのだ!
……いやいや、言ってる場合か。
「よしよし、お前、可愛いやつだね。背中に乗せてもらえるかな?」
だが、生まれてまだそんなに立っていないハズのこのドラゴン、その割には大きいが多人数を乗せるのには無理がありそうだ。
それに対してリファリウスは――
「じゃあ、こうしよう。
生命の泉の力を借りて力を一時的に開放するんだ。
そうすればもしかしたらできるかもしれない――」
そのあとリファリウスの言う通り、ティオとフィリスをその場に置いていくと、
ライトニング・リュースで一路クラウディアスへ、そして例のあの御仁たちを連れてくると、その足で再びその場所へと舞い戻ってきた。
だが、洞窟に再び入ってきたのはリファリウスと連れてきた例のあの御仁たちのみで、ほかは外で待っていた。
「あらま、この卵はまさかキマイラの卵――食べちゃったんだね……」
リファリウスはそんな話を聞かされていた、ドラゴンが先ほどのキマイラのそれを食べてしまっていたのだという。
「弱肉強食ってやつね、こればっかりは仕方がないけど……キマイラ絶滅しちゃったかな――」
フィリスは遠い目でそう言った。するとリファリウスは、
「いや、この世界、何気にキマイラが生息している場所もあるからそこまでには至っていないみたいだよ。」
すると、リファリウスが連れてきた御仁のうちの1人が泉を見て驚いていた。
「これはなんと! このような生命あふれる自然の泉があるのですか! なんともすごいところです!」
「わー! 暖かいなぁ……、私ここ好きー♪」
「ほんと、素敵な場所ね、神秘的で。水浴びしてみたいわね――」
そう、例のラブリズのプリズム族家族3人組、ララーナ、シェルシェル、そしてメルルーナである。
シェルシェルとメルルーナがいる通り、ラブリズまで行ってきている――それなりに時間を経過してしまったのである。
そしてこちらの方も、さっきはライトニング・リュースで待機していた彼女も今回は一緒に来ていた。
「それよりも、一刻も早く竜巻を何とかしませんと! リファリウスさん! お母様! シェルシェルさん、メルルーナさん!」
そう、アリエーラである。彼女はそう促すと、4人は頷いた。
「そうですね、時間は限られています。早速ですが始めることといたしましょう――」
ララーナはそう言うと、リファリウスは泉の前に”ランス・オブ・ハイディーン”を突き立てた。
そして、泉の脇に潜んでいたドラゴンは生命の泉の上へと空中待機していると――
「よし、準備はそろったようだね、早速始めよう――」
リファリウスは槍の前で、ほかの女性陣も泉を囲うかのようにして祈りを捧げていた。
そして、その様子をティオとフィリスの2人が見守っていた。
「癒しの精霊・プリズム族の祈りの儀式……」
フィリスがそうつぶやいていた。ティオはただただその様子を見守っているだけだった。