エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第3部 果てしなき旅の節目にて 第8章 幻想を抱いたまま死ね

第146節 幻獣使いの波長、精霊の波長

 そろそろ日の出となる頃、一部は急いでライトニング・リュースに乗り込んでアリヴァールの”生命の泉”へと向かっていた。
「古い文献で調べたんだけど、特徴的にドラゴンの卵なんじゃないかって話になった。 あれって確かルーティスの図書館だった気がするんだけど――アリエーラさん、データ出せる?」
 アリエーラはライトニング・リュースからルーティスのデータベースにアクセスしていた。
「ドラゴン……ドラゴン……すみません、見つかりません……」
 リファリウスは考えた。
「んー、えーと、なんだったかなぁ……ドラゴンじゃなくて卵でもなく……」
 そこでアリエーラはリファリウスに訊いた。
「えっと……リファリウスさん、当時は何を気にされていたんです?」
「ん? 当時? 当時は……」
 するとアリエーラは改めて端末を入力していた。そして――
「出ました! これですか!?」
 リファリウスはそのデータを見ると――
「そうそう、その時はティオりんがそうじゃないのかって言って、 それで改めて気になったから調べてこの話になったんだ。」
 ドラゴンの卵、リファリウスの第一印象は”化石”だった。 アリエーラにはシンクロによって”化石”という意思が伝わったので、それを入力したらしい。 確かになんだか石のようなものであり、卵のようであるとはそのデータにも記載があったが、ドラゴンには言及されていない。
「聞いたったって……言葉発せないのにどうやって訊くんだよ、シンクロでもしているのか?」
 ガルヴィスはティオがその場にいないことを確認してそう訊くと、リファリウスは頷いた。
「まあ、似たようなもんだね。 彼女は召喚士だ、召喚士は特有の波長を発せられるようになり、 それが自然のマナに訴えかけられるっていう資質が備わっている。 それによって幻獣の精神に直に訴えかけられるようになり、幻獣との連携がスムーズに行えるほどになる。 そんなことができるのは実際には上位の使い手でもほんの一握りだけど、彼女はまさにそれだ。 よくわからないけど言葉を閉ざしてしまうほどの凄惨な過去があり、 それが故に彼女のその能力がより強くなったということなんだろうな――」
 と、リファリウスは言うとクラフォードが訊いた。
「なるほど、で、あんたはその自然のマナに訴えかけられる波長というのを拾って彼女と意思疎通を図っているってことだな」
 リファリウスは頷いた。
「それに見た目も可愛いし、あの笑顔だけでもなんとなく何を訴えようとしているか大体わかるじゃないか?  ガルヴィスやイールアーズを見たら怖いお兄ちゃんだ……とか、 ディア様や私を見たらイケメンで素敵な憧れのお兄様だ……とか。 あと、クラフォードを見たら難しいこと考える変なお兄ちゃんだ……とか、 ティレックス君やアーセイス君を見たらなんだこの青二才……とか。」
 ガルヴィスとイールアーズはそれを自覚していたのでともかく、
「自分で言うか普通……」
 と、ガルヴィスは呆れていた。さらにディスティアは照れている一方で、
「その言葉、そっくりお前に言い返してやる」
 クラフォードはそう言い返した、むしろそれはお前だ、と言わんばかりに。 特に”変な”お兄ちゃんだけはお前に言われたくないという感じである。
「青二才で悪かったな」
「オメーは女たらしのお兄ちゃんだろうが!」
 ティレックスとアーシェリスも御覧の通り言い返していた。

 急なことなので今回もせっかくの空の旅を満喫することもなく、早めにアリヴァールへとついた。 まったく、またしても急ぎかよって感じだが。 アリヴァールの東岸、例によってブリッジ・システムを展開して上陸した。
「森だらけだな、直接降ろす場所がないのか」
 ガルヴィスは訊くとリファリウスはティオを抱えて出てきた。
「ああ、周りは全部森だったハズだ。 でもここからはそんなに遠くないハズだ、早めに行こう。」
 そう言うとリファリウスは手早くその場を移動、森の中へと入っていった。 リファリウスに続いてほかの面々も森の中に突入していった。

 そして、不思議の島・アリヴァールのその洞窟は例によって精霊族のカラクリにより、入り口が特殊な感じになっていた。
「今のは祠の時の……やっぱりこの島はそういう島なんだな」
 ガルヴィスはそう言うとリファリウスは答えた。
「ん? ああ、そう言えばそうだったね、その様子じゃあ無事に入れそうな感じみたいだから言うことないと思うけど―― この洞窟、祠の時とは違ってがっつりと洞窟として作られているようなんだ。 この差が何を示すのかはわからないけれども、とにかく目的の泉はこの中にあるんだ。」
 ガルヴィスは頷いた。
「よし、ならば早いところ行こうぜ」