エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第3部 果てしなき旅の節目にて 第7章 クラウディアスの英断

第142節 守るための決意、最後の準備

 翌日――
「っはぁ! 10本出来たぜ! 」
 と、ロッカクが得意げに言った。
「あいつの腕力も大概だな――」
 クラフォードは呆然としながらそう言っていた。 ロッカクはハンマーを二刀流で持っていて、それを巧みに使って鋼を丹念に打ち込んでいたのである。
「ふん、鍛冶仕事は打てばいいってもんじゃねえんだけどな」
 と、イールアーズ、これは負け惜しみである。いや、そもそも勝ち負けとかないのだが。
「クラフォード君、これは十分だよ。次よろしく。」
「はいよ、次な」
 一方で、クラフォードはリファリウスの作業を手伝っていた、アンカーの仕上げである。
「刺さったはいいが抜けないように返しをつけているんだな」
 クラフォードが言うとリファリウスは答えた。
「うん、今回は特殊な返しがいると思って、鍛錬時に返しをつけることは考えなかった。 そもそもキミらにそれを注意して打てって言うのも難しいと思ったから、ただひたすら打つことだけを考えてもらうことにした。 にしても流石だね、こんなデカイのを簡単に何本も作れてしまうキミらの腕力、目を見張るものがあるね――」
 クラフォードは頭を掻きながら言った。
「まったくだ。特にイールのやつだが、思いのほかよくやってくれたぞ。 まあ、負けん気が強いだけとは思うがそれでもって感じだ」
 リファリウスは頷いた。
「イール君の手なずけ方がうまいね。 でも、利用している側が言うのもなんだけど、それってどうなんだろうって思うこともあるね――」
 クラフォードは答えた。
「思いのほか優しいよな、あんた。 でも心配するな、こういうのは時間でしか解決しない問題だから、何かをやらせていれば気も紛れていることだろう。 それにああいう人間だからな、むしろこのぐらいのがちょうどいいハズだ。 そうでなければ――あいつは本当の鬼になっていると思うぞ――」
 リファリウスは考えていた、時間か――。

 アクアレアの海岸付近、ディスティアはアンカーの発射台の位置を調整していた。
「竜巻の位置的にはこんな感じですかね?」
 ヒュウガは頷いた。
「ああ、恐らくそんな感じだろうな。 とにかく数打つしかない、向きさえある程度あっていれば大体OKだ。 それ以上は実物が来てから適宜調整してくれ」
 するとディスティアは海を指をさしながら言った。
「見てください、あんなところに――」
 それは竜巻だった、木の葉や海の水を巻き込み、何となく目視できるような姿だった。 それは相当大きな竜巻であることが窺える。
 ヒュウガは頷いた。
「このあたりでも風が出てきたな。 明日の朝、予定通りフィールド・システムの出力を上げるか――」
 それと同時にレイビスとシャアードがやってきた。
「こっちの調整は終わった。あとは?」
「うへえー、重たかったぜ……」
 だが、2人が眺めている竜巻のほうに目が行くと――
「何だありゃ、あれが兵器だってのか!? 世の中とんでもないやつがいるもんだな――」
「あれが噂の竜巻か、ひでえもん作るやつがいるもんだな……」
 呆気に取られていた。

 フロレンティーナとエレイア、そしてララーナとトトリン、さらにヴァドスとイツキが会議室で話をしていた。
「プリズム族とラミア族はどうしたの?」
 フロレンティーナが訊くとララーナは答えた。
「ほとんどの者はラブリズへと避難いたしましたが、それでも多くはここに残る決心をいたしました」
 続けてトトリンが話した。
「プリズム族のご厚意に甘え、一旦はラブリズに身を寄せることといたしました。 ですが、やはりクラウディアスに残るんだという意志も強く、数名は残っている状況ですね――」
 残ったって? エレイアは訊いた。
「避難されないんですか? それにララーナさんもトトリンさんも――」
 ララーナは答えた。
「ええ、”ネームレス”のみなさんが残っているということであれば私も参加せずにはいられません。 それに残った娘たちはいずれも自分の魔力も使ってくれと非常に協力的です」
 トトリンも話した。
「自分たちの力がみんなの役に立てるのならって言っています。 そのために今回は魔法の使い方から指南してもらっているんですよ、 みんな妖術としての使い方は上手ですが、それ以外のは小手先程度でからっきしという娘も多いので――」
 なるほど、フロレンティーナは頷いた。
「そうだったのね。ところでシェルシェルとメルルーナは?」
 ララーナが答えた。
「2人にはラブリズへの避難者への先導役として申し伝えてありますのでこちらにはいません。 私たちについてはすでに準備が整っています」
 フロレンティーナは頷いた。
「なるほどね。ところでヴァドス、あんたの報告は?」
 ヴァドスは答えた。
「えっと、渡航についての制限および船舶の出港禁止措置などで港湾は完全閉鎖を完了、 外の国についてもクラウディアスへの渡航についてはしばらく中止を決定し、 付近を航行している船についても航行ルートを制限したり、そもそも出航を取りやめるという措置を実施したようです、と。 ちなみにシューテルさんは元々セラフィック・ランドのスクエアへと赴いていましたがそのまま帰らず、 クラウディアスの調整役として引き続き滞在しています。 それとデュロンドのアーマンさんもスクエアにいらっしゃるとのこと、 話は少し脱線しますが、ルール作りのためにグラトさんと一緒にいろいろとやっているそうで、 今回のことを受けて災害発生時の枠組みについて真っ先に取り組んでおり、 暫定的に各国へ働きかけようと現時点では検討している段階のようです。 そういった動きもあってかセラフィック・ランドでも全便欠航およびフェニックシア大陸へのロープウェー稼働停止、 つまりは向こうの貿易ルートも停止状態らしいっす」
 このような災害級の出来事が発生した場合には各国で連携しようということの現れのようだ。 しかしそれにしても、セラフィック・ランドまでもが思い切ったことするなとフロレンティーナは言った。 それについてイツキが言った。
「でも、あの竜巻の予報線をさらに伸ばすとセラフィック・ランドも一応経路上なんだよね、 もしかしたらそのせい?」
 そう言われてフロレンティーナは端末を慌てて見た。 予報線をさらに引き延ばすと確かに――
「あら、本当ね――トライスとフェアリシア、そしてスクエアにエンブリス、そしてフェニックシアを直撃するルートなのね……。 つまり、セラフィック・ランドも一応気にしているってわけか――」
 なんだか嫌な予感しかしなくなってきた。