ディスティアは言った、私の言うとおりにやってくれ、と。さらに――
「もう少し上を狙うんだ」
「んだよ! こうか!?」
「いや、もう少し上だ――」
「ぐぬぬぬぬぬっ!」
「あともう少し、引っ張ってほしい――」
「なっ、んな、無茶なことを言うんじゃねえ!」
するとそこへガルヴィスが加勢した。
「手のかかるやつだな! どれ、これでいいか!? このあたりでいいか!?
言っとくが狙ったとて、手を放した瞬間に軌道がずれるんだけどな!」
だがしかし、ディスティアは――
「その心配は無用だ、手を離せとは言わない。
アンカーが放たれるまでそのままずっと引っ張り続けてくれていればそれでいい――」
すると彼はおもむろに剣を取り出すと――
「えっ、まさか――」
それを見ているメンツは息をのんだ……
「よし、位置はばっちりのようだ、問題は刺さるかどうかだ……頼む!」
ディスティアは願いを込めて綱を切った!
2人は大きく後ろにのけぞると同時にアンカーは鋭く宙へと舞った!
「すごい! 位置も高いし正確だ! いけるか!?」
クラフォードは半ば興奮しながらそう言っていた、ほかの男性陣も期待をしていた。すると――
「ん? なんだ? 刺さったのか? 下に落ちたような感じじゃないみたいだぞ!?」
と、ロッカクが言った。そこへレイビスが言った。
「まあいい、なんか釈然としねえが、多分刺さったってことでいいんだろう!
いい加減、そろそろ危ねえからさっさと退こうぜ!」
そう言うとクラフォードは頷いた。
「そうだな、そういうことにしておこう。とりあえず退くか――」
ディスティアはイールアーズに手を差し伸べた。
「大手柄だ、やればできるじゃないか」
「ったりめーだ、俺を誰だと思ってやがる――」
また、ロッカクはガルヴィスを――
「やるなあ、流石だぜ」
「ふん、お前だってあれぐらいのこと――まあいい、誉め言葉として受け取っておくか」
そして男性陣はその場を去り、アクアレアにある騎士の駐在所へと急いで向かっていた。
「リファリウス! ここまでやったんだからな! 絶対に何とかしろよ!」
クラフォードはそう叫んでいた。
制御室にて――
「竜巻が上陸してきたようです! みなさん気を引き締めて頑張ってください!」
アラウスがそう言うと彼は改めて魔力を込めていた!
「来たかっ! 俺たちの底力、見せてやる!」
ティレックスも奮闘していた。
「ああ、やるしかねえよな!」
「魔法は苦手だが魔力の提供ぐらいだったらいくらでもしてやるぜ!」
アーシェリスとフェリオースも力を込めていた。
ほかのメンツ、男も女も必死に祈りをささげていた。
「ティランド、見てて! 私、頑張るから!」
「私の大好きなクラウディアス! 絶対に、絶対に守って見せる!」
「クラウディアスは私たちの手で絶対に守ります!」
シオラもフラウディアもエミーリアも必死に祈りをささげていた。
「私の不思議な変な力! こういう時にも役に立て!」
「素敵な国を守るために――私だって!」
「僕の力も!」
フィリスもプリシラもオリエンネストも魔力を集中していた。
リファリウスはカスミを抱えて5階へと降り立った。すると――
「あれ、やっぱりいたんだね――」
そこにはアリエーラとフロレンティーナがいた。
「私はリファリウスさんと考えることは一緒です!」
「ふふっ、そんなことだろうと思って、私も修行の成果を試しに来たのよ♪」
リファリウスは頷いた。
「なるほど。でも、こっちの人員がいるのは心強いね。じゃあ早速――」
リファリウスは東の空を眺めた、東にはお城の塔の最上階が――
「こっちよりも6階のほうがいいかもね。移動しようか――」
3人は頷くとゆっくりと移動した。
移動先で改めて東の空を見る4人――
「風が強くなってきたね。風と言えば私の出番だけど――」
「はい! こんな荒々しい風はお呼びじゃあありませんよね!」
「そうよ、風と言えばすでに重鎮がいるんだからお引き取り願おうかしら?」
「帰れ。でなければ殺す」
リファリウス、アリエーラ、フロレンティーナとカスミはそれぞれそう言った。
荒々しい風と言えば例の大嵐を彷彿させるが、あれは対象外のようだ。
そして次第に風はだんだん強まっていき――
「そろそろ始めようか――」
リファリウスはそう言うとカスミはおもむろに――
「”闇精の舞・封魔吸引”……」
まさに闇の精霊のごとく様相で竜巻の方向を対象にしてマナを吸収!
「伝授元を考えると”風精の舞”だと思うんだけど、そうではないのね――」
フロレンティーナが言うとリファリウスは言った。
「彼女なりの模倣方法だ。
まあ、力を奪う技なんていうのは得てして闇の精が渦巻いているようなイメージが強いからちょうどいいんじゃないかな?」
そしてフロレンティーナが――
「じゃあ、私の番ね。行くわよ! ”エンチャント・ドロー”!」
やはりカスミと同じく黒い霧のようなもの……闇の精霊のごとく様相で竜巻の方向を対象にしてマナを吸収!
「やっぱり闇の精が渦巻いている感じですね、どうしてもこうなるのです?」
アリエーラが訊くとリファリウスが言った。
「というか、イメージで開発した能力だから必然なのかもね。
とりあえず害はないんだし、いいんじゃないかな?」
そして――
「では、私も”エンチャント・ドロー”をさせていただきますね!」
と、アリエーラも同じ技を発動!
「使い手が増えるのは嬉しいけど、みんな同じか……。
だったら師匠は弟子を上回らないといけないってことか――」
するとリファリウスはおもむろに――
「私のは”フィールド・ドロー”だ。さて、どこまで影響があるのか、見ものだね――」
リファリウスは自分周囲広い範囲のマナを奪い始めた――いうなれば、あちこち闇の精霊だらけという様相である。
「すると――」
「なるほど! そういうこともできるんですね! でしたら、私もやってみます!」
アリエーラの”フィールド・ドロー”!
「そんなことまでできるというの!? ど、どら、こうかしら……?」
そして続いてフロレンティーナの”フィールド・ドロー”!
「”闇精の舞・百鬼夜行”……」
さらにカスミの”フィールド・ドロー”!
「ちょっとちょっと、既に師匠に追いついているなんて……もう卒業でいいんじゃないの?」
と、リファリウスが言うと――
「ダメです! リファリウスさんにはずっと師匠でいてもらいたいです!」
「そうよ! こんないい男に教えてもらえることほど幸せなことはないんだから!」
「私は生涯弟子、リファリウスお兄ちゃんの弟子」
と、アリエーラ、フロレンティーナ、カスミが言った。リファリウスは得意げに言った。
「やれやれ、手のかかるお嬢様方だね。」