そしてフィールド出力制御室、非常に高気密な部屋であり、魔導士たちの研究所や修練場としても使用されている部屋である。
場所はデータフロア棟の1階であり、4階を経由しないと入れないセキュリティの高い区画である。
だが、今回は特別に1階からでも入れるように解放されていた。
無論、そうなるとリファリウスは4階から飛び降りてから1階のその入り口から入るわけだが。
「既に早速精神集中を始めております」
フォブネルはそう言うとリファリウスは頷き、カスミはリファリウスの腕から降りた。
「うん、みたいだね。とにかく早めにフィールドの出力を一気に上げてもらえると助かるよ。」
それに対してフォブネルが訊いた。
「ところでリリアさんとアリエーラさんはどちらに?
彼女らがいれば百人力と思いますが――
昨今の精霊召喚など、あれほどの力がある方なら――」
リファリウスは答えた。
「いや、姉さんもアリエーラさんもここには来ないよ、姉さんはライトニング・リュースじゃないかな?
というのも例によって例の吸収技を使用して竜巻の威力減衰を試みているからね。
ちなみに私もそっちを考えている――でも、この部屋でそれをやるとみんなの魔力やフィールドの出力まで奪ってしまうから、ここから離れることにするよ。」
そう言うとカスミはリファリウスに再び抱っこした。
「えっ!?」
「私もそっちやる。修行の成果見せるとき――」
この娘……リファリウスは考えた。
「なるほど……。そういうことなら一緒に行こう!」
カスミは頷いた。そしてリファリウスと共に5階へと移動した。
「ふぅむ、でしたら仕方がありません。
我々は彼らが減衰させた竜巻の威力を引き受ける役といたしますか――」
ラシルとスレアは城門前広場で騎士たちを整列させていた。
「よし! では、巡回開始!」
ラシルはそう言うと後ろからシャナンがやってきて言った。
「たとえ無人でも町を守らなくてはいけませんからね――」
スレアが頷いた。
「ああ、誰もいないハズだから何もないハズ、
だから何事もなければそれに越したことはないんだけどな。
でも、だからと言って何もしないというのとは違うからな、
そう、クラウディアスを守るものとしてはクラウディアスを守ることこそが誇りでもあるわけだ。
もっとも、悪いが俺自身はそんなこと考えたりしていないけどな」
そんな、シャナンさんの前で……ラシルはそう言うとシャナンは頷いた。
「私もスレアさんとは同意見です」
は!? ラシルは耳を疑った。シャナンは続けた。
「そもそも私が仕えた者がリアスティンですのでその一言である程度お分かりいただけるかと思います」
ああ、なるほど――ラシルは何となくだが理解した。
「騎士にとって大事なものは誇りであり、それは命に等しきもの――
クラウディアスの守り手に対する基本教育でしたが、彼はそれすらも真っ向から否定しました。
そう、命は命であり誇りなんてのは二の次。
命があるからこそであり、命と天秤にかけるほどなら誇りなんて捨ててしまえと言っていました。
そう、彼は常に命の為の選択をしてきました。
言うなれば、それこそが彼の誇りなのでしょう――」
何事も命が最優先か――ラシルは考えた。
「まあ、巡回についてはいいです、
それは避難したクラウディアス民たちが安心して帰ってこれるような環境づくりとして必要なことですから、
それはそれできちんとやっていきましょう――」
するとスレアは指で促した。
「ああ――そうですね。ということで団長、後はお任せいたしましたよ。
私らはフィールド出力制御室に行ってきますので――」
そして2人を見送ると、ラシルは城門を出て行った。
「じゃあ、僕も命を守るための行動をしないとな!」
そして、アクアレア海岸付近――
「だいぶ近づいてきたけど、ちょっと強すぎねえか!?」
ロッカクは少し叫び気味に言った。それだけ風が強くなっていた。
「これはやばいな、早めに打って早めにずらかるぞ!」
クラフォードも叫びながら言うと、イールアーズは早速発射台にアンカーをセットしていた。
「ちっ! ったく生意気な竜巻だな! しゃあねえ、やってやろうじゃねーか!」
そして、次々と発射台にアンカーをセットすると、
「一斉とかでなくてもいいよな!? どんどん打ち込むぞ!」
シャアードはそう訊くとガルヴィスが言った。
「異論はねえみてえだな! さっさとやるぞ!」
力自慢の男性陣は次々とアンカーを発射していた。だがなかなか刺さる気配がない。
「くそっ! この発射台、威力が足らねえ!」
レイビスは悔しそうに言うとガルヴィスはおもむろに――
「こんな発射台の射出力に頼るのが間違いのもとだってことだ! こんなもの!」
ガルヴィスは発射台を壊した!
「おっ、おい! ガルヴィス! 城の借り物だぞ!」
クラフォードはそう言うとガルヴィスは――
「うるせえ! 構うか! こういう時はこうするんだ!」
するとガルヴィスはアンカーに綱を括りつけると、その綱を力任せに引っ張り、
手を離した――台尻は長いゴムのようなネットであるため、パチンコの要領でアンカーが鋭く飛んでいった! だが――
「ちっ、外したか――」
ガルヴィスはアンカーの様子を見ながら言った。だが、それに感化されたほかのメンツが――
「何台もセットしたのにこれじゃあムダだってわけか。仕方がない――」
クラフォードも同じように発射台を壊し、綱を引っ張って人力で飛ばすことを考え始めた。
ほかのメンツもそれに続くが――
「ちっ、壊しちまったことで威力は上がったが返って命中が定まらなくなっちまったな!」
ロッカクはそう叫んでいた。それでは本末転倒だ――
「くそっ! 無駄だったってことか! もう時間がない! 一旦引くぞ!」
クラフォードが言うと、ディスティアは冷静になってイールアーズに言った。
「なあイール、すまんがもう一度だけやってくれるか?」
「んだよディル! もう諦めようぜ! 俺も流石にあれが相手じゃあ――」
だが、ディスティアの目はマジだったことを見てイールアーズは考え直した。
「……一回だけだからな!」