エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第3部 果てしなき旅の節目にて 第7章 クラウディアスの英断

第140節 守るための決意、最後の準備

 フロレンティーナとエレイア、そしてララーナとトトリン、さらにヴァドスとイツキが会議室で話をしていた。
「プリズム族とラミア族はどうしたの?」
 フロレンティーナが訊くとララーナは答えた。
「ほとんどの者はラブリズへと避難いたしましたが、それでも多くはここに残る決心をいたしました」
 続けてトトリンが話した。
「プリズム族のご厚意に甘え、一旦はラブリズに身を寄せることといたしました。 ですが、やはりクラウディアスに残るんだという意志も強く、数名は残っている状況ですね――」
 残ったって? エレイアは訊いた。
「避難されないんですか? それにララーナさんもトトリンさんも――」
 ララーナは答えた。
「ええ、”ネームレス”のみなさんが残っているということであれば私も参加せずにはいられません。 それに残った娘たちはいずれも自分の魔力も使ってくれと非常に協力的です」
 トトリンも話した。
「自分たちの力がみんなの役に立てるのならって言っています。 そのために今回は魔法の使い方から指南してもらっているんですよ、 みんな妖術としての使い方は上手ですが、それ以外のは小手先程度でからっきしという娘も多いので――」
 なるほど、フロレンティーナは頷いた。
「そうだったのね。ところでシェルシェルとメルルーナは?」
 ララーナが答えた。
「2人にはラブリズへの避難者への先導役として申し伝えてありますのでこちらにはいません。 私たちについてはすでに準備が整っています」
 フロレンティーナは頷いた。
「なるほどね。ところでヴァドス、あんたの報告は?」
 ヴァドスは答えた。
「えっと、渡航についての制限および船舶の出港禁止措置などで港湾は完全閉鎖を完了、 外の国についてもクラウディアスへの渡航についてはしばらく中止を決定し、 付近を航行している船についても航行ルートを制限したり、そもそも出航を取りやめるという措置を実施したようです、と。 ちなみにシューテルさんは元々セラフィック・ランドのスクエアへと赴いていましたがそのまま帰らず、 クラウディアスの調整役として引き続き滞在しています。 それとデュロンドのアーマンさんもスクエアにいらっしゃるとのこと、 話は少し脱線しますが、ルール作りのためにグラトさんと一緒にいろいろとやっているそうで、 今回のことを受けて災害発生時の枠組みについて真っ先に取り組んでおり、 暫定的に各国へ働きかけようと現時点では検討している段階のようです。 そういった動きもあってかセラフィック・ランドでも全便欠航およびフェニックシア大陸へのロープウェー稼働停止、 つまりは向こうの貿易ルートも停止状態らしいっす」
 このような災害級の出来事が発生した場合には各国で連携しようということの現れのようだ。 しかしそれにしても、セラフィック・ランドまでもが思い切ったことするなとフロレンティーナは言った。 それについてイツキが言った。
「でも、あの竜巻の予報線をさらに伸ばすとセラフィック・ランドも一応経路上なんだよね、 もしかしたらそのせい?」
 そう言われてフロレンティーナは端末を慌てて見た。 予報線をさらに引き延ばすと確かに――
「あら、本当ね――トライスとフェアリシア、そしてスクエアにエンブリス、そしてフェニックシアを直撃するルートなのね……。 つまり、セラフィック・ランドも一応気にしているってわけか――」
 なんだか嫌な予感しかしなくなってきた。

 そしてその時は訪れる……その日の夜中のアクアレア海岸付近にて――
「フィールドとやらで風力をセーブしてるって話らしいがそれでも強い風だな、まさしく破壊兵器ってか?」
 イールアーズはそう言うとディスティアが答えた。
「そもそも竜巻ですからね、破壊兵器というものでなくてもこんなもんなんでしょう」
 そしてロッカクとクラフォードが来た。
「うーし! 待たせたな! さっさとやろうぜ!」
「まだ早いぞ。 竜巻が狙えなければ仕方がない、もう少し接近してからにするぞ」
 さらに力自慢の男性陣が続々と集まる。
「早えなオメーら。まあ、俺も人のことは言えねえか――」
「こりゃあだいぶ近づいてきたもんだな、見れば見るほどひどいな」
 ガルヴィスとレイビスが言うと、シャアードが言った。
「ひでえな。んじゃあ早速やろうぜ!」
 クラフォードは頭を抱えていた。
「話聞けよ、いくらなんでもまだ早いっての――」

 クラウディアス・システム・ルームにて――
「カスミちゃん……すごい……」
 ユーシェリアは圧倒されていた、カスミはそこで作業をしていたのである。 タイピングスピードといい正確さといい、そしてスキルといい―― もはや「この娘は幻獣なのだろうか?」「幻獣様ってハイテクスキルも達者なんだな」とか、 そういう感想しか出てこなかった。
「エラー処理について全部プログラミングしておいた。 動作チェック全部完璧、全部注文通り」
 そこへリファリウスがやってくると、カスミを抱っこして抱え上げた。
「ありがとう! やっぱりカスミんってすごいなぁ♪」
 カスミは得意げだった。
「次は魔法準備とりかかる」
 リファリウスは頷いた。
「んじゃ、私らはフィールド出力制御室に行くから、ヒー様あとはよろしく!」
 ヒュウガは頷いた。
「そっちも頑張れよ」
「私も負けてらんないわね!」
 ユーシェリアは袖をまくると、コンピュータ相手に立ち向かった。
「ラトラ! 聞こえてる!? 準備はいい!?」
 彼女は気合を入れてマイク越しにそう言うと、レミーネアが答えた。ウィンゲルの研究所だ。
「あっ、ユーシィ! ほら、ラトラ! 準備いいか聞いてるよ!」
「えっ……ああ、いつでもいいよ、そろそろ竜巻が接近してくるころだし――」