リファリウスはイールアーズとクラフォード、そしてガルヴィスを呼び、作業をさせていた。
「なんだよこれ、何のつもりだよこれ――」
イールアーズはそう言った。3人はそれぞれ大きな金づちを持たされていた。
さらにそれぞれの目の前には熱した鋼、まるで鍛冶作業のようであるが――
「キミらは力が有り余っているからね。
だからアンカーを作ってもらおうと思ってさ。」
アンカー? それについてクラフォードが訊いた。
「船?」
リファリウスは首を振った。
「いや、ターゲットは破壊兵器で、そいつに差し込むための碇だよ。
あれが兵器ということになれば竜巻の中を確かめてみるのも面白いかなと思ってさ。
もちろん、魔法ということを考えてあれを形成する魔法のコア部分にも刺さるように工夫もしてある、
予めそのためのエンチャント素材を入れておいた。
あとは完成させるためにひたすら鋼を打ちまくるだけだけど、
そこでキミらのような力自慢にご助力願おうと思ったんだよ。」
それに対してガルヴィスが言った。
「ま、何もしてねえよりはマシってわけか、だったらやらせてもらおう――」
だが、イールアーズは――
「は? 何言ってやがる、冗談じゃねえ! なんで俺がこんなこと――」
そこへクラフォードが遮るように言った。
「なーるほどな、つまりはあれを作ったやつに一泡吹かせようっていう魂胆か。
そいつは面白そうだな、どうせ今回の主役は魔法のようだし、数少ない力仕事をしろってんなら率先してやらせてもらおう」
するとイールアーズも黙って作業を始めていた。
「わかりやすっ!」
その様子を見ていたフィリスは呆れていた。
アリエーラはプリシラと一緒に何かしらの作業をしていた。
「これはこうしたほうがいいですね!」
「そうですね! あれ、でも――これだとこうなりません?」
「あれっ、確かにそうなっちゃいますね――。
となるとそれだとダメですか……」
「じゃあ、ここはこうしたらいかがです!? それだと両方の要件を満たせますし!」
「本当だ! 確かにそうですね! やっぱりプリシラさんですね!」
「えへへっ♪ こういうのは私にお任せくださいね♪」
そこへエミーリアとフラウディア、そしてユーシェリアとティオの4人がやってきた。
「何をしているんですか、お姉様たち♪」
エミーリアが楽しそうに言うとアリエーラが答えた。
「あっ、みなさん! これを作っているんですよ♪」
プリシラは何かを出すとエミーリアはそれを受け取った。
「これ! 指輪! すっごーい! デザインカワイイ!」
と、女子4人は盛り上がっていた。デザインはいかにもかわいらしい感じのものだった。
「でも、これでは男の人には受けませんからこんなものも作りました!」
アリエーラはそう言いながら無骨なデザインの指輪を出した。
「へえ! 渋いですね! すっごいすっきりしたデザイン!」
ユーシェリアは指輪を手に取って眺めながら言った。それに対してフラウディアは指輪に触れて気が付いた。
「ん、魔法の力……魔法の指輪ですか?」
そう言うとアリエーラは言った。
「はい! 少しでも魔力の足しになればと思って用意してみました!
持続性重視ということでつけると魔力が満ち溢れてくるような効果にしたんですよ!」
「でも、これだけだとバリエーションが乏しいですね、もっといろんなデザインのものを作りましょう!」
プリシラが言うと、女性陣はみんなで盛り上がっていた。女性陣は仲良く指輪づくりに勤しんでいた。
そしてその日、リファリウスの指には指輪がはまっていた。
そこへクラフォードがやってきた、彼も指輪をはめており、黒くて彫金してある渋みのあるかっこいいデザインの指輪だった。
「魔力増幅装置的なものなのか?」
「そのようだね、身に着けていると自らにマナのパワーがどんどん湧き上がってくるようだ。
デザインが細かいのは流石アリエーラさんとプリシラさんというところだね。」
「ん? あんたは作ってないのか?」
「私は後から加わった程度だね、2~3個作っただけ、アリエーラさんとオリ君、あとは……キミのそれが私の作ったものみたいだ。」
そうなのか、クラフォードは自分の指輪をじっと見つめていた。
リファリウスが作った、こいつが作るものだから間違いなさそうだな、そう思っていた。
てか、こいつが作ったのならさぞ貴重な代物なのだろう、だから大事に扱おうと思ったクラフォードだった。
対し、リファリウスの指輪は色とりどりの綺麗なデザインの指輪がはまっていた。
それを見たクラフォードが言った。
「それ、むしろ女性向けじゃないか?」
リファリウスは答えた。
「そうなんだけどね。でもこのほうが精霊様って感じがするでしょ?
それに私の指は細いからこのデザインのこれがちょうどいいんだ。ちなみにアリエーラさんに作ってもらったよ。
”リファリウスさん! 無茶しないでください!”っていう魔力が込められているんだってさ、あはははは!」
笑い事じゃねえ、クラフォードは呆れていた。
そして、クラフォードは改まって言った。
「なあ、そろそろだよな――」
「ああ、そろそろだね。とにかく、我々はただ黙って経過を見守っているしかない――」
そう、その日の午前中は竜巻がディスタード旧本土島を直撃する予定の日だった。
さて、どうなることだろう――