エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第3部 果てしなき旅の節目にて 第7章 クラウディアスの英断

第137節 決意の面々、嵐の前の静けさ

 クラウディアスを守るための備えをするとともに、クラウディアス民のほとんどは少しずつ他所の国へと避難していた。 アクアレア民とウィンゲル民の避難が完了し、そしてグラエスタとフェラント、中心地クラウディアスの民の避難が本格的に開始された。
 そして2日後――
「あれ? クラフォード君、帰ったんじゃあないの?」
 クラウディアス・システム・ルームにいるリファリウスのもとに彼が来た。
「俺は帰らない。後は全員帰らせたが、ウィーニアもどうしても残るって聞かないんだ。 ま、あれ以上は止めたって無駄だと思うから結局残留だ。」
 リファリウスは意地悪く言った。
「ま、そりゃあそうだろうね、キミが残るぐらいだからね。モテる男はつらいよねえ?」
 クラフォードは頭を抱えていた。
「まあ、そう言うことにしておこうか――一言もそんなこと言ってなかったんだけどな」
 一言も? リファリウスは訊いた。
「リファリウスさんやアリエーラさん、クラウディアスのみんなが頑張っているんだから自分も頑張るんだとさ。」
 それに対してリファリウスは引き続き意地悪く言った。
「ふふっ、つまりはウィーニアさんカーストの中では私とアリエーラさんが最上位で次にクラウディアスの人たち、 俺も残るって言ったはずのクラフォード君は圏外ということか――」
 クラフォードは再び頭を抱えたままだった。
「そう言われるとなんか腹が立つな――」
 するとティレックスとユーシェリアもやってきた。
「あっ、テラスにいないと思ったらやっぱりここに!」
 ユーシェリアがそう言うと、リファリウスは彼女のほうを向いた。するとティレックスが言った。
「水臭いな! 俺たちにも何かさせろよ!」
 さらにアーシェリスとフェリオースも――
「おい! テメーが死ぬのは勝手だけどな! ほかの人巻き込むんじゃねえよ!」
「……とかなんとか言ってるが、直訳するとあんたの力になってクラウディアスを助けたいという意味らしい」
 やってきた。
「みんな――帰れって言ったのに残ったのか――」
 すると、さらにイールアーズが入ってきて言った。
「ん? 何の騒ぎだ? ティルアの船が来て、何人かが乗っていったようだが――クラフォード、ありゃなんだ?」
 は? なんだこいつ? クラフォードは訊いた。
「あ? 帰れって何で帰るんだよ、そんな話初めて聞いたぞ。 だいたい竜巻は嫌いっちゃ嫌いだが、言っても吹っ飛ばされるぐらいでしかないからな、 だったら別にそんな大したことじゃねえ、何をそんなにビビってやがるんだ?」
 こいつ、マジでなんなんだ……みんなで頭を抱えていた。 まあいい、とにかくこいつのことだから帰る気はないんだと受け取っておくことにした。

 アリエーラはデュシアと話をしていた。
「悪いな、残るって言えなくて。 ただ……誰もかれもが残ると、それはそれで収拾がつかなくなると思ってね――」
 アリエーラは頷いた。
「いいんですよ、デュシアさん。それも大事な選択です、気にされなくて大丈夫です!」
 デュシアは首を振った。
「気にしてなどいない。それに後ろめたいのなら残ることを選ぶだろう」
 アリエーラは頷いた。
「デュシアさんが無事でいてくれるのなら! それで、スクエアに戻るんですね?」
 デュシアは首を振った。
「スクエアには戻らない。 私の居場所はどうやらクラウディアスに決まったようだ。 だからクラウディアスで竜巻が通過次第、この地に戻ってこようと思う。 それまでは私がクラウディアス避難民を何とかしよう。 避難先で彼らを守るのは私の役目だからな」
 確かにそれも必要なことだ、アリエーラは頷いた。
「お互いに頑張りましょう!」
「ええ! 頑張って! アリならきっとやれる!  ルーティスを2度も守り、みんなとクラウディアスを守り、 セラフィック・ランドを復活させエンブリアを平和にした英雄なんだから絶対にできるに決まっている!  みんなと一緒に頑張って!」

 ヒュウガはテラスの端っこで端末越しに通信でシャディアスと話していた。
「ルシルメアはどうだ?」
「ああ、そっちほどじゃないと思うけど物々しい感じだよ。 ヘルメイズの避難民もそうだけど、クラウディアスやヘルメイズへの物資の手配とかでとにかく忙しい感じだ。 これじゃあまるで戦の準備って感じだな――」
「そうか、こっちはむしろ至って平和って感じだ。 もっとも、民がほとんどいなくなっちまって物足りない雰囲気ではあるんだけどな」
「物足りない、か――。なあヒュウガ、勝算はあるのか?」
「んなもん、なければここにいるわけないだろ?  大体お前、この俺を誰だと思ってるんだ?」

 一旦システム・ルームから離れていたリファリウスが戻ってくると、そこにはカスミとティオがいた。
「あれ? カスミんとティオりん、どうしたのかな?」
 リファリウスが近くに来ると、なんとカスミがキーボードを――
「覚えた」
 なっ、なんとハイテクな幻獣様――幻獣ががっつりと端末を使いこなしてらっしゃる――それを見ながらリファリウスは言った。 ハイテクと言えばこの間、刀以外に弓はもちろんのことだが銃器を扱うところを見たばかりだ。 それで剣士と言えば、まさにどこかの国の明治という時代の剣士を思わせる。
「プログラムも組めるのか――そいつは心強い。 ああ、そのパラメータは3がいいかな。 そこは……そうだね、それでいいかな――」
 カスミはひたすらキーボードを打ち続けていたがその目は閉じていた。それでいてタイピングが超早い。 これは――やばい逸材が現れたもんだ、リファリウスは冷や汗をかいていた。 うわようじょつよい。
「後で抱っこかイチゴ大福どっちかする」
「いや、これはどっちもするよ、なんならあとチョコレートパフェとか――」
 そう言われてカスミは燃えた! スピードアップ! さらに正確さ上昇!
「なるほど。これはいろいろと試してみる価値がありそうだね。」