フロレンティーナは会議を進行させていった。
「とりあえず、これで当面の対策は完了ということね。他は何かないかしら?」
すると、会議室の上にあったランプが赤く光った。
「ん? なんだ!?」
スレアがそう言い、ほかの者も狼狽えていると、リファリウスはスマートフォンを見ながら言った。
「デッド・アラート――これはますますやばいことになったね……」
そして、その部屋にシステム・ルームにいたハズのヒュウガが急いでやってきた。
「デッド・アラートだぞ」
と、ここでデッド・アラートが出たのでそれについて解説。
デッド・アラートとはクラウディアスで有事の際に発令される警報のうちの一つで、
クラウディアスを投棄しなければならないほどの未曾有の事態が起こる可能性が高い場合に発令される。
今回のこのアラートを判断しているのはフィールド・システムと、ライトニング・リュースやマダム・ダルジャンが搭載している機器によるもので、
それらのデータをクラウディアスのシステムが集計した結果によって導き出され、
非常事態が1週間以内に起きる場合にアラートが発令されるようになっているという。
以前はその猶予が3日だったのだが、改良されて1週間先までの猶予ができたのである。
それにより、危険度30%以下がイエロー・アラート、60%以下がレッド・アラート、
それ以上がデッド・アラートとなっているのである。
レッド・アラートもデッド・アラートも同じ色だが、
いずれにせよ、なんらかのアクションが必要な警報であることは変わらないため、同じであっても変わらないのである。
そして、デッド・アラートが判定された場合だが、まずは――
「わかったよ、ヒー君。
とりあえず、ガレアもヘルメイズも避難を実施することになる。
ガレアはアルディアスへ、ヘルメイズはルシルメアへ、どちらの国も受け入れ態勢を整えていることだろう。
さて、問題の我が国の場合だけど――」
スレアが頷いた。
「残念だけど、デッド・アラートが出た以上は竜巻対策は諦めてクラウディアスを投棄、
ルーティスかグレート・グランドに避難するしかないってことだな――」
しかし、それについてリファリウスが発言した。
「いや、その前に一つ聞いてほしいことがある。
今回の問題の竜巻なんだけど、破壊兵器という向きがあるということはみなさんご存じの通りなんだけど――
そう、つまり破壊兵器なんだよね。
要するに、あれは何かしらのカラクリがあって動いているということ。
それらしいのがデュロンドさんも言っていたように、魔法による力であるということ――確かにその線が濃いと思う。
もし、その使い手がかなり強力な使い手だとすると、あれを食い止めるのも並大抵のことじゃないハズだ。
でも、ひとつだけやれるとすれば、どういうカラクリで動いているのかを調べることができるかもしれないということ。
そうすれば、あれをやった犯人を割り出すことも可能だ。
そのための最低条件として、まず、フィールド・システムの力を使って最大限にクラウディアス自体を防衛しきることが先決だ。
竜巻がクラウディアスに来た時、フィールド・システム側で魔力の根源を解析しないことには始まらない。
つまり、フィールド・システムが直にあの竜巻の魔力を受け続けることでそれをするということが必要になってくるんだ。
そのためにはまず、フィールド・システムがあの竜巻にある程度耐えることがどうしても必要で、
ということは魔法の使い手たちはそのためにどうしてもフィールドに魔力を送り込まないといけないということになる。
つまりフィールド側で解析が完了したからと言って途中で投棄してしまえばもちろん竜巻の餌食になる――」
リファリウスは続けた。
「要はそういうこと、確かにあの破壊兵器を耐え凌ぐには結構な労力が伴うことは明らかで、
デッド・アラートが出ている以上は命の危険もある。
だからクラウディアスを投棄して命を守ることを優先するか、
それともクラウディアスに残り、あの竜巻を確実に食い止めて犯人を挙げることを考えるか――
我々はまさに究極の選択を迫られたってことになるわけだ――」
それに対してカスミが言った。
「私の居場所、クラウディアスしかない。みんなとここ居たい、だから残る、異論認めない」
それに対してリファリウスが言った。
「もちろん、私も残るよ。
私としてもこの国は見捨てておけない、思い出の詰まった国だからね。」
そしてアリエーラも――
「リファリウスさんが残るのなら私も残ります!
気持ちはリファリウスさんと同じ、思い出の詰まったこの国を見捨てることなんてできません!」
さらにリリアリスも――
「そうね、その通りよね――」
オリエンネストも――
「僕もです! リリアさんたちの為にも僕は残りたいです!」
ラシルもエミーリアもレミーネアも――
「思い出の強さと言ったら僕だって! ここで生まれてここで育ったんですからね!」
「そうだよ! ここは私の国、私たちの国なんだから!」
「ええ、私たちの国、守り切るわよ!」
ラトラもスレアもアラウスも――
「僕にもやれることはあります!」
「今までいろんなことがこの国を襲ってきた、それに比べたら――」
「僕がいないことには始まりませんからね!」
フラウディアもフェラルもフロレンティーナも――
「私はこの国が大好き! だからなんとしてもここを守るよ!」
「孫もこう言っていることですし、私はこの国を守ることにしましたので、流石に退くことは叶いませんね」
「そうね、私たちに手を差し伸べてくれた安住の国、夢にまで見た桃源郷――この手で守って見せるわ――」
プリシラとフィリスも――
「こんな素敵な国、あんなものにやらせるわけには!」
「そもそもほかに行くところないからね、私。ここがないとマジで困る、ね、ティオ♪」
そう言われたティオは笑顔で答えた。
続けてヒュウガとガルヴィスとロッカクが――
「ったく面倒な竜巻だな、頼むから大人しく消えてくれよな」
「なんでもいいけどさっさとしようぜ」
「あ? 要はあの竜巻を何とかすりゃあいいんだろ?」
さらにレイビスとシオラが――
「やれやれ、大変なことになったな。ま、ここで逃げ出すわけにはいかねえけどな!」
「魔法でしたら私もお手伝いします!」
そしてララーナとトトリンが――
「私たちを受け入れてくださった国の為ならなんでもいたしましょう」
「ええ! まさしく、その通りですね!」
また、ハイドラ、シャアード、イツキが――
「確かに、この国にはだいぶ世話になっているからな」
「やるしかねーよな!」
「これから忙しくなりそうですね――」
最後に、シャナン、ディスティア、エレイアが――
「リアスティンの代より仰せ使ったこの国――安易に投棄などするものですか!」
「賢者様として迎え入れてくださったのにここで逃げたら賢者の名が廃りますね、
まあ、逃げるなどという選択肢はそもそもありませんが――」
「うん! 私はディルについていくだけだから!」
それぞれそう言って決意を新たにしていた。
「いやいやいや! じゃなくて! 俺を忘れるんじゃねえっての!」
ああ、そうそう、ヴァドスも。