エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第3部 果てしなき旅の節目にて 第7章 クラウディアスの英断

第132節 クラウディアスの力、命を守るために

 ということで再びリモート会議による緊急招集。 危機的状況ゆえ、クラフォードやティレックスらほかの者も会議室に直接集まることとなった。
「グラウガンで発生した竜巻が破壊兵器ですか――」
 アルディアスは絶句していた。それに対してクラフォードが語った。
「問題はまず、どんな進路をとっているかだ。 クラウディアス特別執行官殿が分析した結果によると――」
 リファリウスとヒュウガはその準備をしていた。
「ヒー様、電源。」
「ああ、ちょっと待ってろ――」
 そしてモニタが付くと――
「みんな見えるかな、本当は画面共有できればいいんだけど準備できてないからね、 モニタからモニタを見るような感じになって申し訳ないけど容赦してほしい。」
 クラウディアス・システム・ルームにデータがあるため、 セキュリティの都合でシェアがそう簡単にできないでいた。 そのため、今はモニタからモニタを見るという原始的な方法をとることにした。 まあ、この後はなんとかその図を共有できるようにしたようだが。
「見えるかな? まさにこういうことなんだけど――」
 それを見た者は全員絶句していた。
「私としては、自然現象でこういうパターンは知らないんだけど、 もし手違いだったらごめんね、エンブリアでこういう事例ってないかなと思って――」
 それに対してデュロンドが答えた。
「デュロンドでもそういう記録はないハズじゃ。 というより、エンブリアではどこに行ってもそのような竜巻の進路があったという事例なぞないことじゃろ。 もし、可能とすれば魔法によって人為的に発生したものであればありうるということ、 つまりは特別執行官殿がおっしゃるように、それは破壊兵器であると考えるのが妥当ということじゃろ――」
 それに対してディスタードのヘルメイズがビビり気味に訊いた。
「ちょっ、あ、あの、その、真っ直ぐ動いているということですが、その進路って、うちには来ませんかね?  その進路の線を伸ばすとうちに直撃するような気がするんですが――」
 ビビっていたのはこれが理由だった。
「いい質問だね、まさにその通りさ。」
 すると、進路予報”線”が表示された。 本来なら予報”円”だがこの竜巻はこのような特別な事情のため、直線だけに絞っていたのである。 無論、予報”円”の用意もあるわけだが――
「これは! ディスタード旧本土島に直撃ですか! これはマズイのでは!?」
 ルシルメアはそう言うとリファリウスは話した。
「ああ、旧本土島はほぼ壊滅だろう。 ガレアは強風はもちろん高波に警戒しないといけないけど、 それについては既に伝えてある、会議にも出れないというのはそう言うことだよ。 その点はヘルメイズも同様だ、今すぐ準備をしてもいいと思う。 予報では5日目の朝に到達することになっているから早いほうがいいよ。 でも、一番気をつけなければいけないのは脇をかすめていくガレアでもヘルメイズでもないんだよね――」
 するとリファリウスはさらに進路予報線を表示させると――
「まさか!? クラウディアス!?」
 アルディアスがそう言うと、それには全員が驚いていた。
「ああ、8日目の夜中にはうちに直撃だ。 すでに正確な経路も計算できていて、まさしくこの場所――クラウディアス城を直撃することもわかっている。 だから、あの破壊兵器の目的はおそらくクラウディアスの破壊なんじゃないかなって考えているわけだ。」
 そんな! それには全員が驚いていた。
「何故、クラウディアス様がそのような目に合わなければならないのでしょうか?」
 リオメイラがそう訊くとリファリウスが答えた。
「それだけクラウディアスを落としたいっていう国がいるってことじゃないかな、 現にかつてそういうのがいたからね……」
 皮肉なことに、それは今回壊滅の可能性があるディスタード旧本土島を拠点としていた旧ディスタード本土軍のことである。
「クラウディアス様――どっ、どうされますか……!?」
 ルーティスが恐る恐る訊くとリファリウスは淡々と答えた。
「大丈夫だよ、こんなこともあろうかと思って、実は用意だけはしてある。 そう、うちにはフィールド・システムというのがあるからね、竜巻についてはおそらくなんとかできると思う。 そのうえで今回緊急招集をかけたのには理由があって、今回は有事の備えが必要っていうことだよ。」
 リファリウスは話を続けた。
「要は渡航制限をかけないといけないことだ。 さらにはあの竜巻は海に出て勢力を強めながら動いているから付近の海は大荒れ、 船舶すべてにも甚大な被害が予想されるだろう、港はすべて閉鎖したほうがいいね。 経済的には大打撃だけど命のほうが大事だからね、そういった観点で各国で制限をかけていってほしいっていうお願いだ。」

 話を聞いた一同はとにかく対応に追われていた。
「クラウディアス民への周知については既に注意報を出すことで決まったから安心してね。 当日は外に出ないようにって――言っても夜中のことだから誰も出ていやしないと思うけど」
 フロレンティーナは端末を操作しているリファリウスにそう伝えた。
「ありがとう、フローラさん。」
 さらにクラフォードは感心していた。
「にしても、あのドデカイ規模の竜巻相手にフィールドで賄えるっていうのはすごいよな、本当か?」
 しかしリファリウスは――
「そんなわけないだろ、だから今は対応に追われているんだ――」
 えっ、どういうこと、大丈夫じゃないのか!?  クラフォードはそう訊くと、同じく端末を操作しているヒュウガが答えた。
「言ったろ、用意だけはしてあるってな、大丈夫とは一言も言っていない。 逆に用意だけしかしていないってこと、つまりは下地だけしかできていないってこと。 その下地ってのがフィールド・システムがあるというだけのことで、 ここに改良を加えないことには始まらないっていうのが実際のところだ」
 マジかよ……クラフォードは頭を抱えていた。
「安心するんだ、用意だけはしてあるってことだからね、つまりは何をどうするかははっきりしていて、 フィールド・システムを純粋に強化するだけなんだ。 これについてはみんなで協力しないことには始まらないから、全力で事に当たってほしいな。」
 何かしないといけないのか、クラフォードは悩んでいた。
「でもまあ、そのほうがクラウディアスらしいよね。 かつては強国として名をはせた大国クラウディアス、その真の強さをまさに見せつける時が来たってことだよ。」
 それは何とも勇ましいことで――クラフォードは茫然としていた。