エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第3部 果てしなき旅の節目にて 第7章 クラウディアスの英断

第131節 不穏なる竜巻、世界を脅かすもの

 ある日、それは起こった。
「なんだ、何かあったのか?」
 クラフォードがそう訊くとイールアーズがテレビを見ながら答えた。
「天気だ。グラウガンの地でデカイ竜巻が発生しているらしい」
 竜巻? クラフォードは訊いた。
「竜巻程度でニュースとは……なんか珍しい気がするな」
 クラフォードはそう言いながらイールアーズの隣に座り、テレビを見始めた。
「俺もそう思うが、近年まれにみる大規模の竜巻らしい。 しかもそれが東から西のほうに移動していて被害が甚大なんだとさ、困ったもんだぜ」
 なるほど、それは困ったな――クラフォードはテレビを見ながら言うと、イールアーズに訊こうとした。 だが、言おうと思った時にイールアーズが先に話した。
「俺もずいぶん前に竜巻にやられたからな、いつのことだったか忘れたがずいぶん昔だ。 でもあん時は戦いができねえどころか、拠点ごと吹き飛ばされたのを覚えているぜ、あれから竜巻だけはニガテなんだよな」
 確かに。クラフォードも同感だった、竜巻は苦手だ、それが大嵐になったら最悪だ――あえてそれが何とは言わないが。 ってか、またその話題――クラフォードはデジャヴじゃないかと心配していた。なお、今回は少なくともテンプレではない。
「おい、見ろよ! 海に出たみたいだぞ!」
 と、クラフォードの後ろから声がしてきた、ティレックスの声のようだ。 しかし、それが何の話題かはすぐに分かった、2人が見ているテレビの竜巻の話だった。
「随分長い距離を動いている挙句、さらに海を渡ろうってか、なかなか困った竜巻だな――」

 3日後、テラスにて。
「なるほど、知らせてくれてありがとう。ところでそちらは大丈夫?」
 リファリウスはリモート会議をしていた。どうやら緊急要件のようである。
「こちらは大丈夫です。先ほど南の海を通過しており、問題は特に起きていません」
「そっか、ありがとうね。」
 そして会議を終えると、ため息をついたリファリウス。 そこへヒュウガが現れた。
「終わったか?」
 リファリウスは頷くとヒュウガが言った。
「なんだかやばいことになっているらしいな、テレビ見たか?」
 リファリウスは再び頷いた。
「見てないけど察しはついてるよ、竜巻の件だろ?  実は今しがた、リオメイラから連絡をもらった件っていうのはその竜巻の件なんだ。」
 そうなのか? ヒュウガは訊くとリファリウスは立ち上がって言った。
「グラウガンで出たハズなのにリオメイラの南までって随分と長い距離を移動しているよね、気にならない?  とりあえず、システム・ルームで見てみよう。」

 クラウディアス・システム・ルームにて。
「マダム・ダルジャンの観測データ・ユニットから情報をダウンロードするんだ。 私はライトニング・リュースから情報を取ろう。」
 リファリウスはそう言うと、ヒュウガはマダム・ダルジャンから、 リファリウスはライトニング・リュースからデータを取得していた。
「フィールド・システムのデータと、その2つのデータから取るってことは、確かに結構遠いところまで分析できるな。 まずは竜巻の進路のデータからか?」
 リファリウスは頷いた。
「進路がわかればこれからの予測進路もある程度わかるだろう。 被害も未然に防げるって寸法だよ。」
 確かに――ヒュウガは頷いた。

 そして――
「出たぞ、これが竜巻の発生位置と定点時間の到達ポイント、そして今の場所だ。 グラウガンの東側で発生してそのまま西に……正確にはおよそ西南西方向に進んでいる。 そしてそのまま海を進んでリオメイラ南にまで来ているな――」
 と、リファリウスは言うが、何か異変に気が付いた――リファリウスはおもむろに端末を操作すると――
「なっ!? なんだこれ!? どういうことだ!?」
 ヒュウガは驚いていた、それもそのハズ――
「竜巻というからには普通は自然現象のハズだ。でもその通り、この竜巻は明らかにおかしい。 そう、進路線を見ての通り、ここの竜巻はおよそ西南西方向に――寸分の狂いもなく真っすぐに突き進んでいる、 自然現象でも見るような”軌跡の揺らぎ”というのが一切ないんだ――」
 そう、台風などの進路のように、自然現象だったら本来なら純粋な真っすぐとかではなく、若干歪に進んでいくのが普通である。 だがその竜巻は、モニタに進路を線で表示させれば一目瞭然で、純粋な真っ直ぐの直線上を移動しているということである。 それがどういうことかというと――
「つまりこれは――この竜巻は自然現象じゃない! 何者かが作り出した破壊兵器だ!」
 マジか……ヒュウガは絶句していた。