エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第3部 果てしなき旅の節目にて 第7章 クラウディアスの英断

第130節 異様な物体、備えあれば憂いなし

 重さとくれば、とある名うての女剣士の出番である。 無論、文明の利器を使えばわけないのだが――。
 彼女は今や、クラウディアスの顧問騎士としての立場である。
「すごい特殊能力ですね、そこまでわかりますか?」
 シャナンは彼女のことを絶賛していた。 ”蒼眼のシャナン”と呼ばれた御仁を以てして絶賛するほどの人物は非常に珍しい―― そう、例の女性のことである。
「そうですね、おおよそのものであれば大体持った感じでどのぐらいかわかりますね。 これはだいたい1Kg程度、正確には1,250g程度でしょうか?」
 持っていたのは大きな剣、それを計量計の上にのせると、値はなんと!
「1,263g! すごいです! 確かにほぼおっしゃられた通りの値です!」
 シャナンは興奮していた――そう、彼女はフェラル、かつて”白銀の貴公子フェラル”と呼ばれた伝説の騎士である。
 すると……
「すごいすごい言っているところ悪いけど、これはどうだろう?」
 と、クラフォードがリファリウスから”兵器”を借用して持ってきた。
「ああ、それですね。確か形態ごとに重さが違うんでしたっけ」
 と、フェラルが言った――いや、それってどうなっているんだよ……ますます意味が分からなかった。 するとフェラルはおもむろに――
「えっと、確かこんな感じでしたっけ――」
 彼女はいろいろと魔力を込めて確かめた。すると――
「変わったぞ! ……そいつは棍ってやつだな――」
 と、一緒に来ていたイールアーズがそう言った、何気にトラウマとなっているその棍…… リファリウスの得物ではないが、似たようなリリアリスのその得物でかつては3名まとめて叩きのめされた苦い記憶が蘇る。 いや、クラフォードとティレックスも最近、大嵐にこの棍でぶん殴られたトラウマが――
「ふむ、なるほど――重さは変わりませんねえ、470……いや、480gってところでしょうか?」
 するとなんと! 計量計は480gを出していた! それもすごいが、恐るべきは当然――
「いや! どう見ても絶対480って見た目の重さじゃねえだろそれ!」
 と、イールアーズの言うように、そっちの方が問題である。すると――
「何っ! ちょっ、いくらなんでも軽すぎないか!?」
 イールアーズは手渡されると――確かに見た目以上にあからさまに軽かった。 そして、フェラルは500mlのペットボトルを出して言った。
「比較対象で言えば大体これと同じぐらいの重さでしょうか?」
 イールアーズはそれぞれの手にそれぞれを持って確かめると、まさにそうだった。 それでも500mlのペットボトルのほうがわずかに重いのだが。
「初期の形態は重さそんなに大きく違わないハズですから割愛しますね――」
 すると、彼女はおもむろにその”兵器”に魔力を込めて形を戻すと、今度は刀身が少し大きくなり、持ち手が長くなった――
「あれ? その初期形態ってやつと槍の柄が付いているやつって別々だったのか――」
 アーシェリスが言うと何人かが同じことを考えていた。それに対してディスティアが答えた。
「あれ、ご存じありませんでした?  知っての通り、あの方はスカイ・アタッカーでもありますので、 やっぱり槍形態も欠かすことができないようですね」
 そうだった、イーガネスを大ジャンプで叩き斬ったときも柄が長かった。 実は刀身がやや広がるのと柄が長くなるというだけの差であるためか、あまり目立たない違いである。
「言われてみればな。 でも、あの刃であのリーチを使いこなせるとかマジでヤバイやつだよな。 一番恐るべきはそれが自作ってところ。 デザイン的にも妙にまとまった感があるし――デザインもただの飾りじゃなくていわゆる特殊能力を積ませるためのものだろ?  つまりは無駄がないんだよな――」
 クラフォードがそう言うとフェラルは頷いた。
「確かにそう思います。 ちなみに、これは700……いえ、740ぐらいでしょうか、500mlペットボトルよりも重いハズですしね――」
 計ったらそれがまさかの740! 恐るべし、白銀の貴公子フェラル!
「いや、さっきのは480っつったな、端数がないのは多分偶然じゃなくてやつの拘りに違いない――」
 と、クラフォードは言った。恐るべし、リファリウス!
 ところで重さなんか計ってどうしたんだとクラフォードは訊くと、シャナンが答えた。 自分たちについてはただの興味本位だが。
「ただの物品確認ですよ。 重さも計量しておかないといざというときに困りますから、フェラルさんにも協力を仰いでいるところなんです」
 そしてフェラルは得意げに言った。
「ふふっ、昔の腕はまだまだ衰えていないようですね。この生体計量計にお任せくださいな♪」
 そのセリフはとある人物を想起させる、あえて誰とは言わないが。 ともかく、彼女のおかげで計量の作業の手間が省けていることは言うまでもない。