そしてジュリはさらに進むと、そこにはティレックスがリリアリスとデートしている現場が――
「ねえティレックス君♪ これなんてユーシィに似合うんじゃない?」
「えっ、そうかなぁ? どうだろう――」
「私はこういうの好きだけどなー♪ あっ、じゃあさ、こうしない? 私に買いなさいよ♪」
「ええー!? なんで!?」
「なんで!? ちょっと、ずいぶんな言いようね! 今までずっと面倒見てあげてきたのに、それで言うことがそれ?」
えぇ……ティレックスは引きつっていた。すると――
「わっ、わかったよ、買います、買いますよ……」
ティレックスは渋々お金を支払っていた。
「うふふっ♪ ありがとうね、ティレックス君♪ お礼に後でイイコトしてア・ゲ・ル♥」
えぇ……ティレックスは再び引きつっていた。そして――
「あれ? もしかしてリリアさんですか?」
ジュリは何食わぬ顔でそう訊くと、リリアリスは答えた。
「えっ? ええ、そうだけど――もしかしてジュリちゃん?」
ジュリはにっこりとして答えた。
「はい! そうです! やっぱりリリアさんだー!」
ジュリは改まった。
「ところでリリアさん、何をしているんです?」
するとリリアリスは楽しそうに言った。
「ええ、それがねえ、ティレックスったら巨乳でセクシーな美人のリリアリスおねーさんとデートしたいって言うもんだから、なんだかんだ言いくるめられてそうすることにしたの♥」
えっ、言いくるめてって、まさか――ジュリは手で口元を抑えて言った。
「やっ、やだ、ティレックスさんたら……ユーシェリアさんっていう素敵な人がいながら浮気ですか……!?」
はっ!? ティレックスは耳を疑った。
てか、そもそも巨乳でセクシーな美人のリリアリスおねーさんとデートしたいなんて一言も言っとらん!
つーかこのジュリって人、なんなんだよ! ティレックスはキレ気味だった。
「やだ! ティレックスさんの裏切り者! ユーシェリアさんに言いつけてやる!」
ちょっ、ちょっと待って! ティレックスはジュリにそう言って遮ろうとするが、リリアリスに手をぎゅっと握りしめられ、行く手を阻まれた。
「えっ、ちょっと、リリアさん! あの子誤解したまま行っちゃったんだけどどうするんだよ!」
するとリリアリスは言った。
「いえ、無駄ね、こういうことは一度誰かの耳に入るとどうにもならなくなるわ。
だからすぐにでもこの国を発ちましょう!」
嘘だろ! ティレックスは耳を疑った。
「何言っているんだよリリアさん! 話せばわかるって! なあ、きちんと説明しよう!」
リリアリスは首を振った。
「無駄よ。それに……もうここまで来たら浮気って認定されるだろうからあえてそう言うけど、
あなたの浮気相手はこの私、クラウディアス特別執行官のこの私よ。
平たく言うと、クラウディアスの法律ではクラウディアス重鎮軍はたとえ僅かな粗相があっても浮気と認定されるし、
そして法律の下で厳しく罰せられるルールがあるから、これで私も晴れて犯罪者の仲間入りってワケね。」
マジかよ――ティレックスはがっくりとしていた。
「俺のせいだ……俺が、きちんと対応していればこんなことには――リリアさんを犯罪者にせずに済んだんだ――」
ティレックスは落胆していた。
「確かにこれを招いた責任は私にもあるからね、あなたの言う通り、やっぱり出頭しようかしら?」
出頭? ティレックスは訊いた。
「な、なあ――厳しく罰せられるって、どうなるの?」
「そうね、最悪で死罪もあるうるわ――」
嘘だろ! ティレックスは耳を疑った。
「本当よ、これはプリズム族やラミア族を迎え入れる際に作ったルールでもあるの。
まだ国民のほうには適用されていないけれども、試験運用的に私らのほうに適用して設定したのよ。
私が死罪になることで国民への見せしめにもなると思うし、そういう意味では――」
それに対してティレックスは怒りながら言った。
「冗談じゃない! そんな、ちょっとした手違いでそんなことになるなんて!
だってリリアさんは悪くない! だからリリアさんが最初に言った通り、この国を出よう!」
リリアリスはニヤッと笑った。
「ふふっ、優しいのね、ティレックス君は。
でも、よくよく考えるとあんまり逃げる場所なんてないかもね。
だって、こんなことになると多くの国からにらまれることになるし、
それこそ逃亡者はアンブラシアの住人である私、つまりほかのアンブラシア民たちが私を捕まえに来るかもね。
そうなったら、私でも逃げ切れるかどうかは――」
するとティレックスは――
「いや、逃げるんだ! 地の果てでもどこまでも逃げるんだ、リリアさん!
リリアさんのことは俺が守ってやる! 一緒に逃げよう!」
これは――本当にいろんな意味でヤバイ展開である――
ということで、ティレックスとリリアリスはクラウディアスを発ち、2日が過ぎた。
マダム・ダルジャンを使うと位置情報がばれて即座に足が付くため、
民間の連絡船を使いながら遠い地へと逃げ出したのである。
「なんていうか、こんなところまで来たのは初めてだな。
リリアさんは来たことがある?」
「いいえ、全然わからないわね。
流石にこのあたりは私にもわからないわね――」
するとリリアリス、ティレックスのそばに寄って話をした。
「本当にありがとう、何やっているのかしら私……」
ティレックスは面倒くさそうに言った。
「そんなのいいだろ別に、今更どうでもいいよ。
さて、明日も早いからな、早く寝ようよ――」
すると、リリアリスは――
「ねえ、寒くない?」
ティレックスは答えた。
「大丈夫だ、焚火の炎が暖かいからな」
そっか――リリアリスはにっこりしながらそう言った。
翌日、なんだか気候がだんだん寒くなっていった。
すると、遠目には――
「まさか、雪!?」
一面銀世界が広がっていた。するとリリアリス――
「ごめんねティレックス君、ちょっと休みたい……」
リリアリスはヘトヘトになっていた。
「あっ、ああ、じゃあ、このあたりで休もうか――」