エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第3部 果てしなき旅の節目にて 第6章 果てしなき旅の節目にて

第124節 不穏なる小悪魔たち、謎の邂逅

 リファリウスは今度、”アリヴァール・メタル”を用いて武具を作っていた。 だが、やっているのは単なる鍛冶ではなく、武具の改修である。
「はい、花鳥風月。”アリヴァール・メタル”でちょうどいい具合に補修しておいたよ。 残り半分が見つかったらまた改めて何とかしてあげるね。」
 リファリウスはそう言いながらカスミに扇”花鳥風月”を手渡した。
「嬉しい。あのままだとちょっとかわいそうだった、いい感じにしてくれて扇も喜んでる」
 カスミは嬉しそうに受け取った。するとイツキが言った。
「それって鉄扇ですか?」
 カスミは頷くとリファリウスが言った。
「しかもいわゆる仕掛けナイフの類だね。 折りたたんだ状態だと小刀としての用途がある。」
 へえ、そうなのか――イツキはそう思いつつ、カスミから手渡された扇を手に取って確かめていた。
「なるほど、これがそうか――」
 するとイツキはおもむろに――
「こんな感じです?」
 と、扇を巧みに操り、足を小さく滑らせつつ華麗に舞っていた。 それに対してリファリウスとカスミが少し興奮していた。
「えっ、今の!?」
「こっ、これは――」

 リファリウスはリリアリス、そしてアリエーラとカスミは話をしていた。 そしてその目の前には――
「なっ、なんだかちょっと照れますね――」
 1人の女性が照れていた、ディアナである。 ディアナとは――この際だからもういいだろう、女性の中でもかなりの長身の美女である。 長身リリアリスよりもさらに背が高いことでも知られている。 彼女は涼やかなドレス姿で清楚にふるまい、上品なお姉様を演出していた。
「背が高くてスタイル抜群だから、何を着ても様になるね!」
 リファリウスは楽しそうに評価しているとディアナは照れていた。
 さらに――
「うふふっ♪ こういうのっていいですよねー♪ 楽しみー♪」
 彼女はルルーナである。 彼女は可愛らしいワンピース姿できっちりとキメていた。 こちらはリリアリスとアリエーラを足して2で割ったような印象の美女で、身長は2人よりも若干低い。 だが、リリアリスと同じく今世紀最大の残念な美女としての顔を併せ持つヤバイ女として有名である。
「まったく、犯罪クラスの女よね、ルルーナったら。 でも、可愛いから許されるっていうのがまさにルルーナって感じよね。」
 リリアリスは嬉しそうに評価していると、ルルーナはにっこりとしていた。
 そして3人目がいる。その3人目というのが――
「なんか、あえて着てみてくれって言われるとちょっと恥ずかしいですね――」
 と、そこには2人よりも低身長の美女だが、こちらもかなり決まっていた。
「でも、こういうのも案外楽しいものですね!」
 こちらはさらに可愛げなワンピース姿で男心をくすぐりそうな感じの女の子だった。 ポテンシャルで言えば、ユーシェリアやフラウディアといい勝負という感じであった。
「これは可愛いですね! 素材がすべて出そろっているというのはすごいと思います! カスミさん、いかがです?」
「犯罪。だがそれがいい」
 2人も興奮していた。
「ようし! これで作戦開始よ!」
 と、リリアリスは得意げに言った。作戦って何の作戦だよ、このメンツなので嫌な予感しかしない――

「こんにちは、ティレックス君!」
 ディアナはティレックス君の元へとやってきた。
「えっ、あんたまさか――」
 また何を始める気だ、ティレックスは頭を抱えていた。 彼女に対してではなく、リファリウスかリリアリスに対してそう思ったのである。 ティレックスとしてはこの人がそもそも何者か以前に女性陣に対してこりごりなところがあった。
「ユーシェリアちゃんのこと、大事にしてる?」
 そう言われてティレックスは固まっていた、何故そんな心配をされることになるのだろう――
「大事にしてあげないと、ゲンコツですからね!」
 この人のゲンコツは相当にやばそうだ――ティレックスは狼狽えていた。
「そっ、それには及ばないですよ! 大丈夫です、大丈夫ですから――」
 何ちゃんと返事しているんだ、俺、ビビりすぎだろ――ティレックスは言ったわきから後悔していた。
「うんうん♪ それでいいんですよ! お姉様、お聞きになりました?」
 お姉様? すると、近くの物陰に隠れていたリリアリスが出て来て言った。
「ええ、ちゃーんと聞いたわよ。そのうえでティレックス君には試練を課さないとね♪」
 何の試練だよ――ティレックスは悩んでいた。
「ほら、四の五の言わずに行くよ!」
 相手がリリアリスではある程度は仕方がない、ティレックスは悩みながらも彼女の言う通り、その場を一緒に歩いて行った――
 すると、後ろからリファリウスが現れた。
「ディアナ様はほかにぶつけられそうな相手がいないもんだからね、ぶっちゃけ言うと……余っちゃったな――」
 しかし、ディアナ様は嬉しそうにリファリウスの小脇をつかんで言った。
「それではこうしませんか? リファリウスさん、私と一緒にデートしましょ♪」
 そっ、それは! リファリウスは少し興奮気味だった。
「あのな……女装男児相手になに嬉しそうにしているんだテメーは――」
 その様をアーシェリスが冷ややかな目で見ていた。だが、リファリウスは――
「何を言っているんだねキミは、失礼にもほどがあるだろ?  女装男児じゃなくてディアナ様だ! ったく、これだからキミは――」
 するとディアナ様は優しくリファリウスを包み込み――
「ふふっ、リファリウスさん、いかがです?」
 なっ、なんと! ディアナにお姫様抱っこならぬ、ディアナによるお姫様”が”抱っこを発動!  リファリウスはなんだか無茶苦茶嬉しそうで、もはや言葉にならない状態なぐらい興奮していた。 そのまま2人はどこかへと去ると、その様にある種の異常性を覚えたアーシェリス。
「なっ、なんだありゃ……なんか、見ちゃいけないものを見た気がするぞ―― いや、見なかったことにしよう、あれは気のせいだ――頭が割れそうだ……」

 次に、ルルーナはもはやあからさまと言わんばかりにクラフォードを揶揄いに来た。
「帰れ」
「つれないですねぇー、クラフォードさんってば。 ただ、ウィーニアさんとの仲について訊きに来ただけじゃあないですかー♪」
「訊きに来るな、俺から話すことは何もない。 そもそもウィーニアとは通信で話し合っているんだろ? それで十分だろ?  そのうえで何が必要なんだ? だが、改めて言うが、俺からは何も言うことはないからな」
 ぶー! ルルーナは可愛げにほっぺたを膨らましてそう言った。この女はマジでやっている。
「彼女が喜びそうなプレゼントとか考えたりしないんですか?」
「で、それを何故頼んでもいないのにあんたに相談しなければいけないんだ?」
 言われてみればそうかもしれないが、ルルーナは臆せず答えた。
「私ぐらいの土足おねーさん相手だったらなんでも話せるのかなーと思ってねー♪」
 なるほど、そう言われてみれば確かにそれもそうか、クラフォードは思った。 むしろ、今までリリアリスとはまともに話をできていたが、ルルーナには冷たかった気がする、 どちらも似たような土足おねーさんだ、彼女のほうを避けていた理由はなんだったのだろうか、 ああ、そうだ――少し前の夢で彼女に……いや、あれは墓場まで持っていくんだ、振り返るな、俺! クラフォードはそう思った。
「悪かった、そうだ、なんか知らないがいつの間にか苦手意識を持っていたようだな。 つっても、そもそも苦手な事については変わらんのだが」
 そもそもリリアリスが苦手、彼女も同じである。クラフォードは続けた。
「確かにウィーニアに何かプレゼントをしてやりたい。 何がいいか聞いてないか?」
 しかし、ルルーナは首を振った。
「そんなの、聞いてるわけないじゃないですかー!  自分で考えるものですよ、そういうのはね♪」
 やっぱり訊くのは間違いだった、自分で考えろって――それができないから困っているのに! すると――
「というと、絶対に困ると思ったのできちんと考えてありまーす♪」
 なんだよ、妙案があるのか、クラフォードはちょっとだけ安心した。
 だがこの振り回し残念女、この後クラフォードは思う存分振り回わされることをまだ知らない。 まあ、それについては――ある程度は想像可能だと思うので略すことにしよう。

 そして3人目の美女は、フラウディアと一緒に歩いていた。
「ジュリちゃん可愛い!」
 名前はジュリと言うそうだ。
「そんな! 嬉しいな! フラウディアちゃんこそ可愛いじゃん! 素敵なカレシもいて!」
 フラウディアも嬉しそうだった。するとそこへ――
「えっ、誰?」
 その、フラウディアのカレシが現れ、ジュリの存在に首をかしげていた。
「あっ! この人がカレシさんですね! 初めまして! 私、ジュリって言います! よろしく!」
 おっ、おお――スレアは少々狼狽え気味に答えた。そして――
「じゃあね、ジュリちゃん!」
「うん、またね、フラウディア!」
 ジュリは去っていた。彼女の後姿を見ながらスレアは目が点になっていた。
「えっ、いや、誰? クラウディアス民?」
「うん、そーだよ♪ 仲良くなったんだ♪」
「そっ、そうか……」