その後、あの集団は各自テキトーに過ごしていた。
今のこの状態については平穏無事とは言い難いようだが、波が収まっているこの状態はいつまで続くのだろうか。
とにかく、ここに至るまでに各々でいろんな出来事があった、激動の時代を乗り越えてきたと言っても過言ではないだろう。
そんな中、とある者はお城の南西部の森の中にある”幻界碑石”と呼ばれる、軽いビルほどの大きさがある巨大な一枚の石板が立っているその場所へと足を運んでいた。
「……思えばこの碑石がいろんな意味で発端だった気がするね。
この国は常に一歩先を前進するようになったけれども、まさにこの碑石がそのきっかけだったんじゃないかな――。」
リファリウスだ、そいつは碑石に手をつき、その石から強大なパワーを感じ取っていた。さらに――
「ええ、まさにそうだと思います。
もしかしたら私もこの碑石に導かれてこの地にやってきたのかもしれません。」
アリエーラさんだ、彼女もまたリファリウスと一緒にそこにやってきていた。
「ならば、また行きますか。」
「あっ、はい! ではすみません、よろしくお願いいたします!」
「いえいえ、お気になさらず。それでは拝借。」
リファリウスはアリエーラを抱えると、アリエーラはリファリウスにしっかり抱き着いた、横抱き――通称”お姫様抱っこ”というやつである。
リファリウスは頭上の”幻界碑石”の側面にあるちょっとしたくぼみに狙いを定め、そこを目がけて飛び上がった。
その調子で上の次のくぼみへと移り、頂上へ到着した。
「はい、どうぞ。」
リファリウスはアリエーラをおろした。
「いつもありがとうございます。それにしても、一気に行かれないんですね? 珍しい気がします――」
アリエーラはそう訊くとリファリウスは頷いた。
「この碑石はパワーソースのある意味中心にあるような存在だからね、それ故に近づくと位置感覚が歪んでしまう。
だからここは一気に頂上を狙おうとはせず、刻んでいくのが確実だと思ってね。」
「なるほどです。
てっきり、私が太ったかなーと思って心配しちゃいました――」
「えっ? いやいやいやそんな、スリム体型のアリエーラさんがそんなわけ――」
それに対してアリエーラは口を押えて笑っていた。リファリウスも拳で口を押えて一緒に笑っていた。
それにしてもここからの眺めはなかなかいい。
西と南は海が広がっていて今は夕日が沈もうとしている時間帯、ちょうどよかった。
それから2人は碑石の頂上にしゃがみ込み、いろんな話をしていた。
「またあんな上に……好きだよな、あのバカップルも」
ティレックスはそう言った、今度は彼ら数名が碑石のところまでやってきていた。
「こらティレックス君、アリエーラさんに向かってバカとはなんだ。」
「違うだろ、テメェにバカっつったんだ! んなこともわからねぇのか!?」
アーシェリスがそう反応した。
「おお怖い怖い。それより、みんなどうしたのかな?」
ティレックスは答えた。
「いや、いつものテラスにいないからどうしたのかと思ってさ、そしたらなんかここにいるって聞いてやってきたんだ。
例の件、とりあえず収拾着いたぞ、あんたがいい加減にしろって一喝したおかげだな」
リファリウスは得意げになっていた。
「当然でしょ、私を誰だと思ってる? クラウディアス特別執行官様だぞ?」
「バカじゃねえか?」
アーシェリスはすかさず、あからさまに敵意むき出しにそう言い放った。
そのうち、いつの間にかあの集団がそこへと集まり、リファリウスとアリエーラもその輪の中に加わっていた。
「”幻界碑石”、この国のルーツか――」
ティレックスは碑石に手をつき、その石からものすごいパワーを感じ取っていた。
「というか、一体なんなんだ、”幻界碑石”って。
いや、わかってはいるつもりなんだけど、具体的にはあまりよくわかっていないんだよな」
アーシェリスは訊いた。
「”幻界碑石”、向こうの私の世界とつなぐ、大きな力通り道。
戦闘や私生活で”魔法”などが使える、その通り道のお陰」
カスミが小さな声でそう言った。
「ど、どういうこと? ”標”ってことは、あの精神トンネルのあれと同じ考え方でいいのかな?」
オリエンネストがそう訊くとティレックスが言った。
「要するに、この石は平たく言うと”幻界”っていう世界とつながっていて、
石自体はこの世界とをつなぐトンネルの役割をしているんだよ」
「てか、この石のトンネルが解放されたのって、比較的つい最近って話だろ?
その前からも”魔法”とか普通に使われていたと思うんだが、何故この石の力が必要不可欠になるんだ?」
ガルヴィスは疑問をぶつけてきた。
「いや、必要かどうかと言われれば、むしろ必須ではないというのが正式らしいな。
実は、昔に比べたら魔法の力というのは強化されている。
つまり、解放前に使えなかったスゴイ魔法が今ならその当時よりも普通に使えたりするというのが真相らしい。
俺が知っているのはせいぜいこの程度だ」
アーシェリスは淡々と答えた。まさに精神世界の中枢とも言えそうな幻界という世界、
魔法に与える影響は計り知れないものがあったということらしい。
「そうか、カスミさんって召喚獣だから、つまりはそのトンネルを通ってきたってわけだね!」
オリエンネストはそう言うとカスミは頷いた。すると、彼女に対してティレックスが言った。
「それにしても――カスミさんって、まさに見かけによらないよな。
最初は本当に見たままの子供って印象でしかなかったんだけど、
そのあとすぐにとんでもない剣術を見せられたりとか――
それから実は思いのほか長い間生きてるとか、最初のイメージからまたずいぶんと変わったな、もはや人生の先輩か……」
カスミはなんだか得意げな様子だった。
「おねーちゃんの言うことはちゃんと聞きなさい」
……例のあの人のまねはしなくていいんだが。
しかし、オリエンネストは何やら悩んでいた。
「……うーん、僕はそもそも話が見えなくてよくわからないところがあるんだけど……。
言うなれば、僕なんかは途中参加で案外わからないところが多かったりするんだ。
”幻界碑石”とか”幻獣”とか、ほかのみんなもなんか導かれてやってきたみたいな感じになっているけど、
実際にはどうしてみんなここに集まっているの? それぞれお国は別々なんだよね?
確かに僕もそのうちの一人みたいだけど――いろんな人が妙に集まっている感じだから、
それが何でなのかがすごく不思議な気がするんだよね――」
オリエンネストはティレックスに訊いたがティレックスは前向きに答えた。
「そいつはいい質問だ。というのも実は、多分早い段階で参加しているハズの俺ですらまだ理解が追い付いていないことが多い。
だから今はとりあえず同道しているだけの状態なんだが――
それでもやっぱり結局何がどうなってここにいるのか全然わからずにいるんだ」
それに対してオリエンネストはがっくりとした様子で言った。
「わからないと言えば、僕は”ネームレス”なんだそうだけど……
そもそもどうして僕はここにいるんだろう、僕は一体……」
ティレックスはなだめるように言った。
「だっ、大丈夫か? 気を落とすなよ――」