エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第3部 果てしなき旅の節目にて 第6章 果てしなき旅の節目にて

第121節 果てしなき旅の節目にて

 ある世界でのお話。
 物語はとある大きな国から始まる。 その国、大きな草原帯の真ん中にある王国、草原や森林が三日月状に囲っていた。

「こんなもんで大丈夫かな。」
 三日月状の一部にて何人かが集まって作業を行っている様子。 リファリウスとアリエーラ、そしてカスミとティレックス、アーシェリスが草花の手入れを行っているようだ。
「アリエーラさん、こんな感じかなあ。」
 リファリウスはアリエーラに訊ねた。
「リファリウスさん! 流石に上手ですね!」
「アリエーラさんに誉めていただけるなんて、嬉しいなあ。」
 2人は仲睦まじく話をしていた。 その様子を快く思わないアーシェリス、その2人の仲へと”いちゃもん”をつけるかの如く進撃してきた。
「おい、こっちも終わったぞ。アリエーラさん、それからリファリウス! あんな感じでどうだ?」
 リファリウスはアーシェリスをたしなめるように言った。
「こらこらアーセイス君、そんなつっけんどんに――呼び捨ては良くないでしょう、呼び捨ては。」
「おーい、こっちも多分終わったぞー」
 ティレックスがそう言うとカスミがそれを見に行った。
「……いいんじゃない」
「そっ、そうか……」
 カスミはボソっとした小さな声で言った。ティレックスはそのペースに戸惑っていた。
「さてと、カスミんもティレックス君も終わったということで、ここはひとまず撤退しますか。」
 アーセイス……いや、アーシェリスはそれを遮って言った。
「ちょっと待て! 俺のはいいのかよ?」
「うん、やり直しだね。」
 リファリウスはすかさずそう言うとアーシェリスは怒り心頭だった。
「どこがだよ! だったらお前やれよ!」
「どこがって……もちろん心を込めてやったのかどうかだよ。」
「うるせえな! きちんとちゃんとやってるだろ! それでいいだろ!」
 だがリファリウスは気にしない。その様子に対してアリエーラさんは、
「もう、リファリウスさんってば――」
 と、苦笑いしていた。

 帰り道、何人かと合流して話をしていた。
「それにしても、リファリウス君とアリエーラさんって仲がいいよね!」
 すると、リファリウスがその声に反応した。
「その声はオリ君じゃないか、どこへ行っていたのかな?」
「うんと、ボクはあっち」
 オリエンネストは指を差した、その方向にはエミーリアの姿が。
「そっか、お姫様と一緒だったんだね。」
「うん、エミーリアさんと一緒。ね、エミーリアさん!」
 するとエミーリアは言った。
「あっ、リファリウスお兄様とアリエーラお姉様! ちょうどいいところに!」
 呼ばれた2人はキョトンとした。
「どうかいたしましたか?」
 アリエーラは優しく返事をした。しかしエミーリアは特別な用事があるわけでもなく、 その真意はただただ2人に会いたかっただけという無邪気な子供のような動機でしかなかった。
 リファリウスとアリエーラの2人、美男美女で非常に仲の良いこの組み合わせ、それなりに人気が高い。

 その集団は、今度はお城の食堂へと場所を移し、昼ご飯を食べていた。
 お城の食堂ではお昼ご飯のカレーにありついている、その集団でにぎわっていた。
「あれ? 俺のメシはどこだ?」
 ヒュウガが訊ねた。
「はい、”ヒー様”。欲しい人は自主的に来るように。」
 リファリウスがご飯を手渡しながら言った。
「なーんか、結局”ヒー様”で定着してしまったみたいだな――」
「ははは、だって、慣れないんだもん。”ヒナタ”君だっけ?」
「”ヒュウガ”だ」
「え? 根暗君?」
「ぶん殴るぞ、わざとやってるだろ?」
「あはははは! そんなわけないだろう! まあいいや、やっぱり”ヒー様”でいいや。」
 ヒュウガは呆れていた。そして、また別の男がカレーを食べながら漏らしていた。
「フン、まあまあだな」
「また憎たらしいやつが一人いたな。ガル君、せっかくなんだからオイシく食べようよ。」
 リファリウスはガルヴィスに対してそうたしなめるように言った。しかし彼は拒否した。
「やれやれ……。」
 すると、今度は艶めかしい猫なで声が――
「うふふふふっ、リファリウス様♪  こーんな美味しいものを作ってみんなの心をイチコロにしちゃうなんて流石ねぇ♪  お礼に今晩、私があなたの心もイチコロにしてア・ゲ・ル♥」
 リファリウスは楽しそうに答えた。
「これはこれはフロレンティーナ様じゃあないですか♪ 楽しみにしてますね♪」
 そして、それが気に入らないアーシェリス――
「あの女ったらしめが! やっぱり貴様はそういうやつじゃねえか! 今度こそ絶対にぶっ飛ばす!」
 ガルヴィスも追随。
「ったくだ。今度、貴様のその腐った性根を叩ききってやるからな!」
 それに対してリファリウス。
「うん、ヤダ。断固拒否する。暴力反対。飯時なんだから落ち着いて食べよーよ。」
 2人はそんなリファリウスの態度にとにかくイライラを募らせていた。
 すると、今度は威勢のいい声が。
「おかわり!」
「欲しい人は自主的に来るべし♪」
 発言したティレックスに対してそう軽くあしらった。
「じゃあ――」
 ところが、ティレックスは立ち上がったが、一足遅かったようだ。
「リファリウス君、おかわりくださーい!」
 あのオリエンネストが自主的にやってきた。
「よかったねえキミ! これで最後だよ、ゆっくりと食べてね。」
「やったー!」
 オリエンネストは喜んだ。
「えぇ……最後……」
 ティレックスはがっかりしながらそのまま座り込んだ。
「あははっ! ティレックスってば、ざんねーん♪」
 ユーシェリアは楽しそうに言った。
 そしてリファリウスは座り込み、隣のアリエーラと話をし始めた。
「ったくもー、人が食べ始める頃にはもう食べ終わっているやつとか平気でいるし。」
「ええ、リファリウスさんが作る料理はどれもおいしいですからねえ、競争率が激しいのでしょう。」
「競争って……もっと味わって食べてほしいな、野獣じゃあないんだから。」
 すると、フィリスがそれに横槍を入れた。
「無理なんじゃないかな、ほとんど野獣ばっかなんだしさ」
「それもそうだね!」
 リファリウスはその返事に賛同した。
「2人とも……」
 アリエーラは苦笑いしていた。

 その後、あの集団は各自テキトーに過ごしていた。
 今のこの状態については平穏無事とは言い難いが、 波が収まっているこの状態は、果たしていつまで続くのだろうか。 とにかく、ここに至るまでにいろんな出来事があった、激動の時代を乗り越えたと言っても過言ではないだろう。
 そして、とある者はお城の南西部の森の中にある”幻界碑石”と呼ばれる、家ほどの大きさがある巨大な一枚の石板が立っているその場所へと足を運んでいた。
「……思えばこれがいろんな意味で発端だった気がするね。 この国は常に一歩先を前進するようになったけれども、それこそ、まさにこれがそのきっかけだったんじゃないかな。」
 リファリウスだ、そいつは”幻界碑石”に手をつき、その石から強大なパワーを感じ取っていた。さらに――
「ええ、まさにそうだと思います。 私も、ある意味この”幻界碑石”に導かれてこの地にやってきたのかもしれません。」
 アリエーラさんだ。彼女もまた、リファリウスに続いてそこにやってきていた。
「ならば、また行きますか。」
「あっ、ええ、ではすいません、お願いします。」
「いえいえ、まったく構いませんよ。それでは拝借。」
 リファリウスはアリエーラを抱えると、アリエーラはリファリウスにしっかりしがみついた、お姫様抱っこである。
 リファリウスは頭上の”幻界碑石”の側面にあるちょっとしたくぼみに狙いを定め、 そこ目がけて飛び上がった。その調子で上の次のくぼみへと移り、頂上へ到着した。
「はい、どうぞ。」
 リファリウスはアリエーラをおろした。
「いつもありがとうございます。それにしても、一気に行かれないんですね? 珍しい気がします――」
 アリエーラはそう訊くと、リファリウスは頷いた。
「この碑石はパワーソースのある意味中心にあるような存在だからね、それ故に近づくと位置感覚が歪んでしまう。 だからここは一気に頂上を狙おうとはせず、刻んでいくのが確実だと思ってね。」
「なるほどです。 てっきり、私、太ったかなーと思って心配しちゃいました――」
「えっ? いやいやいや、そんな、スレンダーな体型のアリエーラさんがそんなわけ――」
 それに対し、アリエーラは口を押えて笑っていた。リファリウスも拳で口を押えて一緒に笑っていた。
 それにしても、ここからの眺めはなかなかいい、西と南は海が広がっていて、今は夕日が沈もうとしている時間帯、ちょうどよかった。
 それから2人は碑石の頂上にしゃがみ込み、いろんな話をしていた。

「またあんな上に……好きだよな、あのバカップルも」
 ティレックスはそう言った、今度は彼ら数名がそこへとやってきた。
「こらティレックス君、アリエーラさんに向かってバカとはなんだ。」
「違うだろ、テメェにバカっつったんだ、んなこともわからねぇのか」
 アーシェリスがそう言った。
「おお、怖い怖い。それより、みんなどうしたのかな。」
 ティレックスは答えた。
「いや、いつものテラスにいないからどうしたのかと思ってさ、そしたらなんかここにいるって聞いてやってきたんだ。 例の件、とりあえず、収拾着いたぞ、あんたがいい加減にしろって一喝したおかげだな」
 リファリウスは得意げになっていた。
「当然でしょ、私を誰だと思ってる? クラウディアス特別執行官様だぞ?」
「バカじゃねえか?」
 すかさず、アーシェリスはあからさまに敵意むき出しにそう言い放った。