すると、イーガネスの遺体からなにやら禍々しいものが――
「なんだこれ?」
フィリスの近くだったこともあって彼女が一番先にそれに気が付いた。
禍々しいものは徐々に浮き上がると、何やら闇の空間の中へ誘おうとしていた。
「いや、見た目はあんなだけど、遠くには懐かしい光景が広がっている、そんな気配がするよ。
もしかしたらイーガネスたちがエンブリアを貶めるために使った”標”かもしれないね。」
と、リファリウス。”標”ということはつまり――
「つまりは帰り道ってことだな。
ハルメアの状況からしてここにいるのは得策とは言えなさそうだ。
こっちで何かするにしろ、一旦戻った方が良さそうだな」
と、ガルヴィスが言うとリファリウスが言った。
「あれ、せっかくこっちに来たんだからこのまま行っちゃうのかと思ったよ。」
ガルヴィスはため息をついた。
「それも考えたんだけどな。
だが、どうやらそれで終わるほど、ことはシンプルではないらしい。
そもそもどうして・どうやって俺らがエンブリアにいたのかも気になるところだしな。
記憶まで消えているのがよくわからないし、そこの”標”についても思うところがあるしな。
逆にこっちに来たところで特に何事もないようだし、記憶もちゃんと依然と同じままだと思う、
いろいろと釈然としないことだらけだからな、しばらくはテメーらと一緒にいることにしようかと思ったってわけだ」
ティレックスが起き上がると、ヒュウガが「おっ、気が付いたな」と言った。そしてティレックスが話を続けた。
「俺もだ、アンブラシアが回帰への道の先ってことは、俺らのルーツもこっちにあるってことなんだよな、
前も言った通り、アルディアスとしても見過ごせない問題があるかもしれないし、
俺としても異世界だなんて興味があるから、ぜひ同行させてくれ――」
リファリウスは頷くと、立ち上がった。だが、その手は依然として震えたままだった。
「ともかく、早いところ戻ろう。でもこの”標”の先、どこに出るんだろう――」
少々不安だが、心配するほどではなかった、場所はフェニックシア大陸の封印の神殿跡のあたり、祠の上であった。
するとそこへエンブリア側で待機していた面々が彼らを温かく迎えたのである。
そして、ヒュウガの操縦でライトニング・リュースは発進、クラウディアスへと舞い戻って行った。
3日後――いつものテラスにて、リファリウスはペンを握りしめて何かを書いていた。
「あれ、痙攣止まったのか?」
クラフォードがそう言うとリファリウスは答えた。
「おかげさまでね。それでリハビリがてらに動かしていたところだよ。」
動かしているって――クラフォードは訊いた。
「それはいいんだが、また大掛かりなものを書いているんだな……リハビリで書くようなもんじゃないと思うんだが――」
リファリウスは長い物差しを使い、思いっきり線を引っ張っていた。
「よし、まずはこんなもんだろう――」
そして汗をぬぐうと、なんだか満足したような感じだった。
それを見たクラフォードは――
「なあ……これ、間違いなく”兵器”だよな?」
しかしリファリウスは否定した。
「違うよ、みんなで”兵器”・”兵器”言うもんだからそう言われないようなものにしようと思って新作を考えていただけだよ。
ったく、すぐに”兵器”だって決めつけるだなんて、キミって本っ当にひどいやつだなあ……」
いやいや、てことはつまり”兵器”だろ――クラフォードはそう思って頭を抱えていた。
「悪かったよ。とにかく元気だったらいい、それを確認しに来ただけだ」
クラフォードはそう言うとリファリウスは言った。
「つまりはまた面倒ごとを押し付けようと。いけないなあキミは。
いくら私が元気だからといってそういうのは良くない。」
クラフォードは再び頭を抱え、そして首を振っていた。
「違う違う。今後の”アンブラシア編”はどうするるんだって話だ、それ以上でもそれ以下でもない」
そういうことか、リファリウスは考えていた。
「まあ、とにかく行くことは行くよ。
だからその前に、ほかのみんなの動向がちょっと気になったから休暇がてらに待っているだけだよ。
それに――今後を考えるとイーガネスの例のように私の既存の武器で太刀打ちするにはちょっと荷が重すぎる。
だから、武器のほうもチューンアップしておかないといけないなと思ってね♪」
と、なんだかノリノリな様子で設計図を書いていた。
なんだか見事なデザインで、本当にそれを剣として実装するのか疑わしいようなものがくっついていた。
「よしよし、久しぶりに紙で設計図を描いたけど、鈍ってないみたいでよかった。
さてと、第2形態はっと――」
第2形態……はい”兵器”確定。
決めつけなくたって”兵器”は”兵器”じゃねーか、クラフォードは呆れていた。