「大丈夫ですか、リファリウスさん!」
アリエーラは願いを込めてリファリウスを回復した!
「うっ、アリエーラさん、助かったよ……」
リファリウスは起き上がった。
「ごめんごめん、慌てて防御フィールドを張ったけどね、自分を守るまでには足らなかったようだ――」
よかった――アリエーラは安心していた。だが、
「イーガネス!」
リファリウスは振り向くと、そこでは未だにイーガネスと激闘を繰り広げている状態が続いていた。
「……この場で思いっきり本音をぶちまけるのもアレなんだけど。
……辛っ! いくら何でも強すぎだろ、エンブリア勢もいるのにいくら何でも強すぎね? 加減しろよ、あの魔人……」
そっ、それは――アリエーラは冷や汗をかいていた。でも、リファリウスが元気になったということで安心はしていた。
「うーん、何か弱点ってないんですかね――」
弱点、弱点か――リファリウスは考えていたが、
「炎の魔人、だからその通りの氷属性が弱点。
でも、言うほど効果がないんだよね――」
アリエーラは頷いた。
「ええ、まあ。当然、皆さんそれを考えてちゃんと使っていますし。
でも、相手が硬すぎるせいでそこまで大きな効果が見込めないのです。
それに、相手のあの激しい攻撃を受けながら技を決めるのは非常に厳しいと思いますし――」
それもそうか……リファリウスは悩んでいた、これじゃあ結局じり貧か……。
「立て直そうにもこの炎の壁の中、逃がしてくれそうにありませんからそれも難しいことでしょう。」
すると――
「ぐっはぁ!」
「うわあっ!」
再び、破壊の炎でイールアーズとフィリスたちが勢いよく吹き飛ばされてきた。
「くっ、これまた、派手にやられたもんだね――」
フィリスは背中をさすりつつ、起き上がった。
「あれ、リファリウス……目が覚めたんだ、そりゃよかったわ」
彼女はそう言うとリファリウスは頷いた。
「ああ、まだ意識がもうろうとしているけど、とりあえずね。
ところでフィリス、何か気が付いたことある?」
リファリウスは再び漆黒の炎を行使していて、それを阻止されているイーガネスを見ながら訊いた。
「そうね――唯一、あいつの弱点とすれば……火力は御覧の通りよ、必殺には至らないことぐらい。
もっとも、あの漆黒の炎がフルチャージされようものなら必殺は免れられないかもしんないけど、
そうでなければあれが最大って感じで間違いなさそう――」
なるほど――リファリウスは考えた。
「つまりは体力お化けってことか、持久戦にはめっぽう強いやつだ、厄介だね――。
私もその分には得意な方だと思っているけど、向こうのほうが防御力が高い以上はそれも無理な相談か――」
すると、今度はガルヴィスが破壊の炎で吹っ飛ばされてきた。
「ガル君も派手に吹っ飛ばされてきたか――」
ん、待てよ!? リファリウスは気が付いた。
「そうだった、私としたことが――肝心の技を使うことを忘れていたとは。
別に力なんか頼らなくたって、一番力が入る攻撃手段っていったらアレがあるじゃないか!」
だから、そういうのは早く思いつけよ――ヒュウガはクレームをつけていた。
リファリウスは吹き飛ばされてきた勢と一堂に会し、作戦を練っていた。
「そのために全力でひきつけろってか、なんだ、そんな簡単な方法があるんだったらさっさと言えよ」
ガルヴィスが言うと、リファリウスは照れたように言った。
「ごめんごめん。
ただ、問題はそれでもちゃんとうまくいくかどうかが怪しいところだね、あいつはまさに耐久力の塊、
この私の技一つ決めたところでそれでちゃんと行けるかどうかは何とも言えないのが残念なところだ。」
それに対してイールアーズが言った。
「んなこと、お前が気にしなくたって十分だろ、狙うところは決まっている、だろ?
だったらお前はそれだけに集中すりゃあいい、ほかのところは俺らで何とかする、それでいいだろ。
せいぜいヘマしないようにするんだな、でなけりゃ俺がやつにトドメを刺しちまうぞ!」
なんだかんだで仲間想いの発言をするやつだった。
てかその発言、この状況でそれがやれるんなら早よやれやと思った人のなんと多いことか。
作戦は開始された。恐らく最後の作戦となることだろう、それは誰しもが予感していた。
やるべきはそれしかない、これほどの強敵相手にやれることはただ一つであった。
すると、そこへディスティアが吹き飛ばされてきた。
「ディア様、またずいぶんと粘ってたね――」
リファリウスはぼんやりとしながら言った。
「後ろで話し合いをしているところが見えたもので下がってきました。
クラフォードさんから一通り話は聞きましたが――何かお手伝いしましょうか?」
ディスティアは吹っ飛ばされた割にはなんだか余裕だった、
そもそもしっかりと受け身をとっていたし。
すると、リファリウスは一瞬考えてから言った。
「いや――ないよ、何も。ディア様は疲れただろうから休んでいるといいよ。」
えっ、なんで――ディスティアは訊きなおした。だが、リファリウスは――
「違う違う、そういうことじゃない。
もう一度言うよ、ディア様は休んでいるといいよって言ったんだ。」
なんのこっちゃ――
しばらくするとリファリウスが戦線復帰、その手には大剣を携えていた。
「リファリウス!?」
クラフォードが驚いていた。
「やあクラフォード君! 敵をあざけるにはこれぐらいしないといけないと思ってね!
それにせっかくだからこのアリヴァール・製の剣の切れ味を試すことにしてみたよ、
切れ味よりも純粋に打撃力が必要そうだからね!」
なっ、なんだよその態度――クラフォードは頭を抱えていた、
相変わらずわけのわからないやつだな、と。
しかしまあ、それで作戦がうまくいくのであれば全然かまわないのだが。
とはいえ、リファリウスの剣さばきには目を見張るものがあった、そのあたり流石である。
「いくよっ! このっ!」
斬撃、斬撃からの横っ飛びに続いての蹴り、
そして、敵の破壊の炎が来たら大剣によるガードからさらに反撃と、すべての流れが軽やかだ。
「小癪な! 貴様から始末してくれるわ!」
リファリウスは調子よく攻撃を繰り出し続けていると、今度はイーガネスの注意が向いた。
「おいおいおい、そんなんで作戦行けんのかよ、さっき言っていた作戦だとそれじゃねえって感じだが」
ガルヴィスが言うとリファリウスが答えた。
「いいんだよ、これもすべて作戦のうちさ。これは必要枠だからね。」
とはいえこいつのことだ、今までのことが大体物語っている、とりあえずいいことにしよう。
「必要ならそれでいいや」
フィリスは淡々とそう言った。