モルデウズを相手にしていたメンツはとうとう命運を分けていた。
「このやろう、いい加減に、いい加減にしやがれ……」
イールアーズがとにかく力の限りを尽くしてそいつにとどめを刺していたのである。
「おっ、おのれぇ、小癪な……」
モルデウズはその場で倒れた――
「くそっ、やっとくたばりやがったか、この野郎――」
イールアーズはそう言うと、その場で倒れた。
「終わったな、やっと倒した――」
ロッカクも倒れた。
「んだよ、お前”ネームレス”だろ? ”ネームレス”のクセにヘバるの早くねえか?」
「はぁ? なんだよ、いいじゃねえかよ別に。
言ってもお前こそ、エンブリアでは”鬼人剣”って名前持ってる強豪だろ?」
すると、イールアーズは立ち上がった。
「上等だ、そこまで言うんならやってやるぜ。
おら、”ネームレス”! さっさとついてこいや!」
ロッカクも立ち上がった。
「言われなくたってそうするぜ! お前の指図なんか受けねえからな!」
そんな光景をシオラはほのぼのとした表情で眺めていた。
「なんか、どうなっているんだろう、あいつら――」
アーシェリスがそう言うと、シオラが嬉しそうに言った。
「いいじゃないですか、なんだかんだ言って互いを奮い立たせているみたいですからねー」
モルデウズを相手にしていたメンツがそのまま次の踊り場フロアにやってくると、そこにはクラフォードが佇んでいた。
「ったく、何が死神の剣だ、刺さんなきゃ意味ねえだろうが――」
と、そばにいたシャディアスがそう言うと、クラフォードが言った。
「そいつは俺のセリフなんだが――まあいいや。
とにかく、助かったぜ、礼だけ言っとくぞ」
「礼? 別に要らねーだろ、俺はただ必要と思ってやっただけだからな。
さて、さっさと行くぜ……」
なんか、あたりは無数の刃が切り裂いたような跡が痛々しく残っていたようだが、全員何とか生き残っているようだった。
「酷い攻撃だな、生きているのが奇跡というべきか、それとも――」
フェリオースは悩んでいた。
そして、ハシュラムを相手にしていたはずのリファリウスとアリエーラの2人だが、何故か踊り場フロアの真ん中で抱き合って泣いていた。
「なっ、何があったんだ!? まさか、誰かがやられちまったのか!?」
クラフォードは愕然としていると、リファリウスは言った。
「いや、そう言うわけじゃないよ。
ただ――いや、今はいいや、目的はイーガネスだけだ! 行こう、アリエーラさん!」
リファリウスは手を差し伸べると、彼女はリファリウスの手をつかんで立ち上がった。
「はい、リファリウスさん、行きましょう!」
2人は涙をぬぐうと、再びイーガネスの元へ行こうと進み始めた。だが――
「どうなっているんだ、この敵は!」
クラフォードが驚いていた――ハシュラムの肉体はズタズタに引き裂かれ、原形がわからないような状態だったのである。
「おいおいおい、またものすごい性能の”兵器”だな、ここまでされれば敵も本望だろうな――」
アーシェリスがそう言うと、リファリウスは――
「そうか、本望か! あははっ、そいつはいい――」
楽しそうなそのセリフとは裏腹に、その顔は怒りに満ち溢れていた。
すると再び”兵器”を取り出し――
「だったら、影も形も残らないようにしてやろう!」
強烈な風魔法剣を行使し、文字通り、塵一つ残らないほどにまで切り刻んでいた――
「ったく、ただの粗大ゴミのクセして形ばかり偉そうに残してるとはどういう了見の所業だ?
ええ!? なんか言ってみろよ! この粗大ゴミが!」
やっぱり何故かキレてる……なんかやばいことが起きていたことは想像に難くない。
それについてフェリオースはアリエーラに訴えるような目で訊こうとしたが、彼女は少々怖い顔をしつつ、そして目をつむると首を振っていた。
どうやら触れないほうがいいということらしい。
そして、おそらく最後の踊り場フロアでは、ガルヴィスらが敵を倒していた。
「”ボーケスト”だ。
ここまで来て弱い敵を相手にすることになるとはな。
まだハシュラムのほうが格上だったか――」
ガルヴィスがそう言うとリファリウスが言った。
「あの虫けらはイーガネスの右腕だからね、言うなれば猛攻派閥のナンバーツー、つまりはそういうことだ。」
それに対してガルヴィスが訊いた。
「お前があれほど怒り狂う相手ってことは、つまりはそういうことか?」
するとリファリウスは何も言わず、ただ「想像に任せる。」とだけ言って先を急いでいた。
そう言われてガルヴィスはため息をついていた。
ん、どういうことだ、それに気が付いたティレックスがガルヴィスに訊いた。
「つまりはリセリネアさんっていう人の仇ってことか」
ガルヴィスは頷いた。
「らしいな。あいつの態度で伝わってきたのは怒りじゃなく、恐怖そのものだった。
あいつのあんな態度、見たことがない。あれを見せつけられると――」
ティレックスは頷いた。
「後始末しているところを見たよ、あまりの惨さに目を覆いたくなるような光景だった。
それにアリエーラさんの顔もちょっと怖い顔だったし、もしかしたら2人分……いや、
リリアさん含めて3人分の怒りが合わさって恐怖になったとか、そういう感じかもしれないな――」
ガルヴィスは考えていた。
「シンクロってのも厄介なもんだな、思いとか考えとか共有しているだけじゃなく、その人数分だけ合体するってわけか――」