エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第2部 果てしなき旅へと連なる試練 第5章 天使の再起動・最終章

第111節 封印の塔、来る決戦の時

 一行はそのまま町まで走ってきた。
「ったく、コボルトの群れに襲われるなんてついてないな、 馬車で飛ばせば襲われずに済むもんな普通――」
 リファリウスは悩みながらそう言うと、アリエーラも言った。
「そうですね、普通なら馬車か船のどちらかですからね。 でも、とにかく街道の宿場町が近くてよかったです――」
 それに対してヒュウガが言った。
「いや、ここはただの宿場町じゃないな。見ろ、奥に塔がある――」
 一行はその塔のほうへと向くと、シエーナが言った。
「確かに、街道の宿場町という規模にしては大きな町ですね。 そしてあの”封印の塔”――」
 封印の塔!? エンブリア勢は首をかしげていた、それは何だ、と。 するとガルヴィスが答えた。
「”封印の塔”っつったら”ハルメア”にある塔のことだな。 つまりここが”ハルメア”ってことか、確かにあの塔がなければ”ハルメア”であることに気が付かなかった可能性もあるな――」
 特徴がそれしかない町というのも……。 しかし、その塔からは異様な何かを感じていた。
「あの塔はただの観光地程度の役割でしかないんだけど、なんだかみんなですごい警戒しているようだね、なんなんだろう?」
 リファリウスはそう言いつつ、塔のほうへと向かった。ほかの者もそれに続く。

 異様な気配どころか、周囲には人の気配さえなかった。それもそのハズ――
「3人の遺体、こんな街の中で戦いの跡――」
 オリエンネストはしゃがみながらそう言うとイールアーズが反応した。
「ほう、不届きなやつがいたもんだな、そういうやつこそぶっ倒してやらねえとな」
 しかもなんだか楽しそう――不謹慎なやつだ。
「それはそうなんだが、問題はどこにいるかだ――」
 クラフォードが言うと、リファリウスが答えた。
「これは塔の中にいるな、しかもこの気配……さっきのコボルトとは比べ物にならないほどの力を感じる――」
 なんだって!? 一同は驚いた。
「この気配、おそらくは……。そして、この邪悪に燃え滾るような強烈なオーラ……なるほど、そう言うことか――」
 すると、リファリウスは意を決して塔の中へと入って行った。
「リファリウス! 俺らも行くぞ!」
 ガルヴィスはそう言って後に続いた。
「なんか、これはやばそうなオーラだな、リファリウスの言う通り、とてつもない強烈なオーラを感じる。 俺らエンブリア勢でかなうかどうかも怪しい力だな――」
 クラフォードは警戒していた。それと同じく、イールアーズも至極ビビっていた。
「何故だ、何故体が動かねえっ! くそっ、俺よりも強いやつがいるってのか!」
 いるに決まっているだろ、フィリスはそう思いながらリファリウスらに続いていった。
 すると、エンブリア勢に対してアリエーラが説明した。
「みなさん、目的の大ボスはこの上ということですよ。」
 えっ、どういうこと!? エンブリア勢は訊くとアリエーラが言った。
「邪悪に燃え滾るような強烈なオーラというより、邪悪なる炎を操る”インフェリア・デザイア”の気配がするということですね。 そしてそれの使い手といえば、”魔人イーガネス”ぐらいしか思い当たる者がいません――」
 何っ!? ”イーガネス”だって!?
「私たちは”イーガネス”を討ちに行きます! みなさんは……皆さんの判断でお願いします――」
 そう言うと”ネームレス”勢改め、”アンブラシア”勢は塔を昇って行った。

 残されたエンブリア勢、召喚獣であるカスミが促した。
「どうする、行く?」
 ティレックスは答えた。
「いや、行きたいのは山々なんだが、ちょっと流石に強すぎないか?  この気配、まったく歯が立ちそうにないんだが――」
 クラフォードも答えた。
「確かに、想像はある程度していたが、これはちょっと違うんだよな、だからそう考えると――」
「私も……ちょっと怖いな」
 ユーシェリアもビビっていた。
「アンブラシアの連中っていうのはこういうのを相手にしていたんだな、 そう考えればリファリウスが強いのだって頷けるな、こういうのが普通にいる世界だもんな――」
 アーシェリスもため息をつきながら言った。 しかし、ディスティアとフロレンティーナが塔の階段を昇ると、エンブリア勢のほうを向いた。
「私たちはいきます。 なんていうか、不思議と行くべきだと思えてならないのです。 それに――やはり仲間のためを思うのであれば、行くのが正解と判断しましたので――」
 フロレンティーナは頷いた。
「ええ。 私もこっちの世界の住人の血が流れているからね、そう考えれば私も行くべきと判断したまでよ。 もちろん、私の中で眠っている彼女も行くべきって思っているからね!」
 2人はそのまま階段を昇って行った。すると、カスミもそれに続いていった。
「私行く、みんな無理はしない」
 それに対してユーシェリアは言った。
「そうだよね、こんなところで止まっている場合じゃないよね――」
 クラフォードも言った。
「そうだな、すでに覚悟を決めてきたはずなのに、ここへきて怖気図いている場合じゃないよな」
 ティレックスはため息をついていた。
「そうだな、行くか――」
 イールアーズも奮起していた。
「上等だ! イーガネスだかなんだか知らんが、この程度のことで俺が引き下がると思ったら大間違いだ!」
「そうだな、行くしかないか、行って確かめよう、俺たちの世界”エンブリア”を脅かさんとしているそいつの正体をな――」
 アーシェリスはそう言って締めると、エンブリア勢も頷いて塔の中へと入って行った。