リファリウスはできた剣を取り上げ、上に掲げた。
「できた! これをスタンダードにしよう! さあ、そういうわけでよろしく頼むよ、皆さん、おやっさん!」
フェニックシアの職人たちは舌を巻いていた。
「こいつは、流石になかなかの代物を作るな。
確かに作るモノとしては選択ミスって気がしないでもないが――
ここから先はまさにエンチャント職人の出番ってわけか――」
「確かになあ、”マインド貫通”ってのがイメージできないが、この刃なら幽霊にもエレメント系の魔物にも切れ味抜群だな!」
「ああ! これでまた一儲けできそうだぜ! ……需要が狭いのがネックだが」
「それに切れ味の割にコストがな……。
とはいえ、需要的に一定数売れれば赤ではないしエンチャント職人でも立派な武器ができるんだぜってアピールにもなるから、
これはこれでいいか――」
「ああ、特性の都合、何はともあれ細く長く売れることだけは間違いなさそうだしな」
新しくできた”マインド貫通”の武器は賛否はあれど、少なくとも否ではない程度の成果物として収まった。
確かに”体のない存在を切りつける”という触れ込みはインパクトこそでかいが、
その実態はせっかくの”アリヴァール・メタル”が台無しという面が含まれていた、
値段も純粋な”アリヴァール・メタル”製の武器に比べると手間暇かかっているため割高だし……。
しかし、それを差し置いての”マインド貫通”特性については人によってはどうしても避けては通れない代物となることは必至である。
特に、これから精神トンネルを通ろうとする者にとっては――
そして、森の捜索班についても決着がついた、それは――
「なるほど、祠がまさに入り口だったってことか――」
クラフォードたちがそう言うとカイトが説明した。カイトとシエーナが合流したのである。
「アリエーラ女史の話を聞いてなかったのかい?
精神の入り口なんだからそもそも物理的なトンネルがあるなんていうのが間違いだってことだよ」
「んなこと言われたって、あの祭壇の裏にそれがあるなんて誰だって気が付くハズねえだろうが!」
ガルヴィスはもんくを言っていた。すると――
「おっ、おいでなすったな――」
クラフォードは精神トンネルのほうをじっと見つめていた。そこには”マインド・クリーチャー”がぞろぞろと……
「専用の得物とやらを用意しているみたいだからな、試し切りは後でのお楽しみだ、一旦引くぞ――」
ガルヴィスはそう言うと一同はその場から抜け出した。
その日、一行はフェニックシアで夜を明かすことなった。
こんな田舎に泊まるところなどほとんどないため、多くがライトニング・リュースの中で寝泊り、
そして役人たちは帰ったが、
フェニックシアが復興したことでエンブリスとを結ぶロープウェイまでもが復活し、
それを使って行き来することができるようになっていたのである。
そして、夜が明けた!
「ゆ、有料!? なんでだよ!」
リファリウスがその旨を伝えると何人かからクレームが。
「仕方がないじゃないか、結構手間暇かかっているんだし、
そしてそれをフェニックシアの人たちにも手伝ってもらった、流石に報酬なしというわけにはいかないよ。
もちろん国民の血税で買い取るということもしたくないから、ここは個人支給ということで手を打ってくれないかな。」
すると、クラフォードが前に出て言った。
「じゃあ、俺は買うか。大剣をくれ、1ついくらだ?」
フェニックシアの取扱店の人が慌てて対応していた。
「あっ、はい! えっと、大剣でしたら1つ62,000ローダーです……」
クラフォードは驚いた。
「62,000!? 純粋なアリヴァール・メタルの大剣が40,000だった気がするがずいぶんと高いな!
まあいい、そんだけ手間暇がかかっていると見た、1つくれないか?」
そう言われると、お店の人は慌てて武器を用意していた。
そして渡された武器を持ち上げたクラフォードは――
「こう見て見ると62,000とか明らかにぼっているようにしか見えないんだよな。
でも、実際に標的を切ってみないことにはコイツの真価はわからないってことか」
それに対してリファリウスが言った。
「お誂え向きにこの大陸の西側にエレメンタル系の魔物が潜んでいるエリアがあるから、
”マインド・クリーチャー”相手にする前に試してみたい人は試し切りをしてくるといいよ。」
そう言われてクラフォードは頷いた。
「確かにそれはちょうどいいな。どれ、やってやろうか――」
リファリウスは頷き、クラフォードは去ると、リファリウスが話した。
「1本お買い上げだね。まあ、彼はもともと購入には前向きだったし――
いくらでも積んでやるって言ってたっけ、だったら100,000でもよかったか――」
こらこら、なんてこと言ってるんだこいつ。
「おい、本当に62,000の価値があるんだろうな――」
ガルヴィスは怪しそうに言うとリファリウスは言った。
「だったら見てくればいいじゃないか、先陣切って買った人がいるんだ、どれほどのものなのか確認してくればいいさ。」
そう言われ、消極的な男性陣はリファリウスをにらめつけながらクラフォードの後ろをついていった。
「ということは、私はどうしようかな――」
フィリスは腕を組み、悩んでいた。
「そっか、それこそあんたは体のないエレメント系の敵を素殴りできる特殊効果を持っていたんだっけ」
と、ヒュウガが言うとフィリスは頷いた。
「何故そんなことができるかわかんないんだけどね」
それについてはアリエーラが言った。
「ではヒュウガさん、精神トンネルのところに行ってフィリスさんと一緒に試し切りを兼ねて行ってみるのはどうです?」
彼女にしてはちょっとぶっ飛んだ発言だった、
確かにヒュウガは密かに自分の武器を”マインド貫通”対応用にちゃっかりと改造済だが、いきなりぶっつけ本番とは――
「そうだな、今更エレメント相手にするほどの必要性もないしな、
元々俺の武器は”エレメント貫通”実装していたわけだし」
「キミは買うよね、アルディアスの名家の御曹司にとって100,000はおろか200,000なんてはした金だからね!」
リファリウスはそう言う――んなわけあるか、ティレックスはそう反論した。
「ついでに彼女にも買ってやれよ」
ヒュウガはトンネルに行く去り際にニヤっとしながらそう言った、
あいつめ――ティレックスは殺意を覚えた、どいつもこいつも――。
「わーい♪ ティレックス、買って♪ オネガイ♪」
ユーシェリアは可愛げにそう言ってティレックスを困惑させていた。
「御曹司様! 1ダースのお買い上げありがとうございます!」
リファリウスは調子に乗ってそう言った。
「はーい♪ 御曹司様が1グロスをお買い上げでーす♪」
そんなに買わねえ。もう勘弁してくれ――。