アルフラドの森、フェニックシアに広がる森――というわけではない。
「何ともまどろっこしい話だな、一体どういうことだよ?」
ガルヴィスは訊いた。話は既に訊き終えており、リファリウスとクラフォードが説明していた。
ガルヴィスの問いにクラフォードが答えた。
「残念だが聞いての通りらしい。カイトを思い出してみろ、相手はあんなやつだぞ?」
そう言われると……ガルヴィスは何も言い返せなかった。余程だな、あの獄潰し賢者――
「今説明したように、森自体が精神トンネルへの入り口を見立てたものということらしい。
だから物理的な肉体で直接入ることはできないということだ。
つまるところ、純粋に増えて見えている地域に関しては単なる異世界への道標みたいなもので、
本当は精神トンネルへの導線でしかないとか、そういうことなんだろうとか言ってたね。
で、奥にある塔が”始原の塔”で、オルザード氏としても伝説の存在程度でしか言われてないものらしい。」
それについては同席していたオルザードが話した。
「ふむ、まあ――”ネームレス”方の能力と考察でそのように言われるのでしたら本当にそうなんでしょう。
つまりはその”アルフラドの森”というのは森とは言いながら実際には森ではないと――精神トンネルへの入り口がそのように見えるだけということですか……」
リファリウスは頷いた。
「恐らくね。
このあたりは論より証拠、行ってみるほかないということになりそうだね――」
それに対してオルザードが語った。
「いや、そこまではわかりました――というか、理解するしかないということで了承したのですが、
それならばどうやって精神だけの存在になって異世界へ行くというのですか?
今回の問題は恐らくそこだと思うのですが――」
それに対してリファリウスは考えていた。
「わかってる、そこがまさに問題だと思う。
とりあえずフェニックシアに行って方法を考えるしかない――」
リファリウスらは再びライトニング・リュースへと乗り込み、フェニックシアへと渡っていた。
いや、リファリウスにとっては久しぶりだと思うが。
とはいえ、前回は振動問題があったため、
大勢詰め寄って乗船したとしてもあまり空の旅を満喫する気分には至らず、心配のほうが大きかった。
だが――
「まだちょっと気になる程度には揺れているようだけど、前よりは揺れが減ったんじゃないか?」
ティレックスが訊くとリファリウスは答えた。
「早々にアップデートしたからね、でも――」
それに対してクラフォードが訊いた。
「てか、エンジンが原因でなんで船全体が揺れるんだ?」
まさかのガルヴィスが答えた。
「魔法ってか、エーテルエネルギーだろ?
高密度のそれが生み出すパワーだからな、場合によっては大気を伝って振動ぐらいするだろ普通」
そう言われてクラフォードたちはあっけにとられていた。
「そ、そうなのか!? そういうもんなのか?」
「なんだよ、今度は何だ?」
ガルヴィスは狼狽えていた。
「ちっ、説明して何故損した気分にならなきゃいけないんだ――」
まあまあ、ヒュウガはガルヴィスのことをなだめていた。
「ガル君の言う通りのことが原因だけど、今回はそのパワーを別エネルギーに転換してより効率よくフライトするすべを考えたんだ。
もちろん、それを踏まえたテスト・フライトも実証済み、うまくいったよ。
でも、マナの場って結構その日の天気みたいに左右されることもあったり安定しないんだよね。
そのせいかな、まだわずかに気になる振動があるのは――もう少し直さないといけないね。」
まだ突き詰めるんか、クラフォードたちは頭を抱えていた。
リファリウスは”黄昏の入り江”へと巧みに接岸させていた。
「初めてって感じじゃあないよな、いくらシンクロっつってもできすぎなような気がするんだが」
ティレックスがそう訊くと、リファリウスは答えた。
「硬いこと言うなよこの際。
とりあえず、着いたからまずは”アルフラドの森”の存在を確認してきてほしいな。」
そう言うと今度はヒュウガがリファリウスのところへとやってきた。
「俺らは集落に行って話をつけてくるぞ」
「待った、私も一緒に行くつもりだよ。」
後ろからアリエーラがやってきた。
「私にも手伝わせてください!」
集落には既にセラフィック・ランドのお偉いさんが集まっており、事に当たっていた。
「壮観な光景だな、こんな辺鄙な集落にこれだけの人口の数、そして大量のアリヴァール・メタルの数と――」
ヒュウガは高みの見物気味にそう言うとリファリウスは頷いた。
「まさに精神トンネルを抜けるための一大プロジェクトだからね、これから大仕事になる、さっそく始めよう。」
「腕が鳴りますね!」