あの後、一旦クラウディアスへと戻ることに決めた一行。
フェニックシアを復活させたはいいが、問題の異世界への扉は何処なんだろうか、
セラフィック・ランド連合国の返答を待つことになった。
封印の神殿は完全に消え去り、祠だけが残っていた。
無論、祭壇には”我”を唱えており、その反応は異世界への扉が開いた的な内容が現れたのだが、
それ以外でわかっていることはさっぱりなく、どうしていいのかわからなかった。
すると――
「クラウディアス様、セラフィック・ランド殿がお呼びだぞ」
と、クラフォードがテラスにやってくると、リファリウスが頷いた。それに対してクラフォードは――
「あれ? リリアさんは?」
リファリウスが答えた。
「姉さんはやることがあるからね、不在にしているよ。
そもそもフェニックシア編のあのショックも大きい、私も気にしているところだけど――次は行けって言われたから行くことにしたよ。
あと、私もこれからしなくちゃいけないことがあるんだけど、いずれにせよ異世界での行動になるから、
とりあえず、セラフィック・ランド殿のお話は私が請け合おう。」
そしてリファリウスは立つと、クラフォードに訊いた。
「そういや、なんでキミがいつもセラフィック・ランド殿との橋渡し役なんだろう?」
クラフォードは答えた。
「セラフィック・ランド殿としてはクラウディアス様にお伺いするにあたり、
まずはグレート・グランド殿に”これはクラウディアス様に掛け合ってよろしいのだろうか”と相談してから行動に移りたいんだそうだ」
リファリウスは頭を抱えていた。
「セラフィック・ランド殿はそう来たか――」
クラフォードはニヤっとしていた。
「最近のクラウディアスの特別執行官様とくればやたらとお怒りモードだからな、
アルディアスやルシルメアだってルーティスやデュロンドに意見を求めてから発言しているし、
リオメイラもビビってキラルディアに意見を求めているからな。
その結果、クラウディアス様に直接ものを伝えられている国はあんたのお膝元でもあるディスタード以外はグレート・グランドとルーティス、
それからキラルディアと、あとはセラフィック・ランドでもグラト氏が発言する場合のみぐらいだ」
リファリウスは頭を抱えたまま言った。
「別にそんなつもりはないんだけど。
単に当たり前ベースにしたいことを提案してどうかと訊いただけなのにどうしてそうなるかな――。
まあいいや、それならそれで。そこでまた何か言うと、今度はみんなビビッて発言したがらなくなるだろうし、
最悪クラウディアス連合国を抜けたいとか言い始めたらあらぬ方向に行ってしまう、
せっかくエンブリアで協調しようという試みができたばかりなのに――」
クラフォードはため息をついてから言った。
「いや、むしろあんたの言うことが正しすぎるから逆に何も言えなくなっているのが実際のところだ。
それにあんたのほうが数手先も行っているからな、各国がそれに追いついていないところもある。
追いついていないからこそ、逆に粗相がないようにと気にしているっていう感じだ。
だから不平不満というのはなく、追いついていない国同士で充分検証してから話をしたいという行動のほうが強そうだな」
そう言われてリファリウスは考えた。
「そう言うことか――。
だったらいい考えがある、クラウディアス様ってことになるといろいろと面倒だからね。
とりあえず、その話はまた今度にしようか。」
それに対してクラフォードは首をかしげていた。
そしてリファリウスはアーシェリスとすれ違った。
「よう! 暇人君!」
リファリウスはそう言うと、アーシェリスは少しイラついたような態度をしてから答えた。
「よう、女たらしめ、久しぶりに腹立つこと言ってくれるじゃねえか、懐かしすぎて涙が出てきたぞ。
だが安心したぜ、元気みたいでな。だからまた今度稽古でもつけてくれよ、試したい技が山ほどあるんでな――」
アーシェリスはものすごい殺意を秘め、ニヤッとした表情のまま去って行った。
「なんでもいいが、そういうこと言うか?」
クラフォードは頭を抱えていた。
「なんていうか、言わないといけないような気がしたからね。
なんだかんだでみんなに心配をかけている、フェニックシアだけでなくてほかのいろんな件でもね。
だから、普段通りの私であることをきちんとアピールしていこうかなと思った今日この頃だよ。」
普段通り――クラフォードは思った、その普段通りこそが様々な問題を引き起こすのではと。
1階の会議室、リファリウスはモニタをつけた。
モニタ越しに各国のお偉いさんがクラウディアス様を待ち構えていた、面倒くさい――
「やあみんな、待たせてごめんね。ところでセラフィック・ランド殿がお話したいって聞いたけど――」
リファリウスは面倒くさそうにそう言うとスクエアの役人が話をし始めた。
「お忙しいところ申し訳ございません、クラウディアス様!
とにかく、セラフ・リスタートの件の続報についてお知らせいたします!」
リファリウスはクラフォードに指で促すと、彼もまた席についてモニタをつけた。
役人は話を続けた。
「えっと、まずは次の目標地点を改めて精査いたしましたが――」
それに対してリファリウスが言った。
「フェニックシア大陸でなんか見つけたんでしょ? もういいよ、前置きは。
次の目標はフェニックシア大陸のどこか、それ以外はいらないよ。
第一、そのためにフェニックシア大陸を復活させたわけだからさ。」
そう言われた役人はあっけにとられていた。
じゃ、じゃあそう言うことならと、役人は慌てて自分の手元の資料のページを捲っていた。
よくわからないが50ページぐらいは捲ったのではなかろうか。
「で、ではフェニックシア大陸での捜索についてです。
捜索班によると、これまでフェニックシア大陸にはなかったはずの地域が確認されたとの報告を伺っています――」
フェニックシア大陸にはなかったはずの地域――それは興味深い話だったが、
実はそれらしいものは以前にガルヴィスらが復活したばかりのフェニックシア大陸を散策していた折にすでに見つけていたのである。
しかし、その地域には一つ問題があった。
「ただ、残念なことに捜索班によると、
その地域には足を踏み入れることが困難な地域のようで、何やら特殊な制限かなにかがかけられているらしく、これ以上の捜索は断念したということです――」
そこまではわかっていた、リリアリスらが直接確認しているのである。
だがそこは流石捜索班、話がさらに進展していた。
「しかし、どうやらその地域の奥の方には塔のようなものがあるらしく、
それについてはもちろん、これまで確認されたことのなかったものです」
建造物があるのか、それには気が付かなかった。
「なお、これについてはオルザード氏および、ルーティスで研究を続けているクラネシア氏に話を伺ったところ、
その地域にはかつて森があったのではないかということでした」
森? リファリウスは訊いた。てか、クラネシアって――なんか久しぶりに訊く名前だな、寒気こそするが――
「ええ、クラネシア氏が言うには”アルフラドの森”というのがあったらしいということですが、
オルザード氏はそのような森は聞いたことがないとおっしゃっていました。
ご存じとは思いますが、オルザード氏においてはまさにセラフィック・ランドの歴史を研究する第一人者でありますが、
クラネシア氏は――」
リファリウスは悩みながら言った。
「わざわざ聞いてもいないのに向こうからしゃしゃり出てきたと、そう言うことかな?」
そう言われて役人は驚いていた。
「はっ、はい! 急にそのような話を聞かされ、こちらとしても困惑していた状況にございます!
ただ、自分も一応研究者だと言って聞かないので、オルザード氏も困り果てているのです――」
役人は慌てて話を続けた。
「あっ、それから塔の件ですが、オルザード氏によると”始原の塔”ではないかとおっしゃっておりました。
名前からしても恐らくそこに行くべきということがお分かりいただけるかと思います。
ですが、あの地域に踏み入れないことには――」
するとリファリウスは改めて訊いた。
「で、クラネシア氏が”アルフラドの森”があるって言ったんだね?」
役人は考えた。
「まあ――名前はともかく、あれだけの土地があるわけですからね、
何かあってもおかしくはないでしょう、その程度の話です。
どうしてもというのであればクラネシア氏に掛け合ってみようと思いますが、いかがでしょう――」
リファリウスは悩んだ。
「いいよ、わかった、その件については私が何とかしよう。
彼はとにかく面倒だ、キミらに相手をさせるのは得策とは言えない、私が引き継ごう。」
どういうこっちゃ、クラフォードは話を聞きながらそう思った。