一方の”ネームレス”勢は苦戦していた。
「愚かな、鬼の首を取ったように粋がろうとするからこうなるのだ。
どうだ、手も足も出るまい――」
リリアリスは”兵器”を携え、しっかりと構えていた。
「なによ、思ったよりもやるじゃないのよ――。」
メルターバーグは呆れながら言った。
「まあよい、お前たちはいずれ死ぬのだ、ただそれが少し早まるだけのこと。無論貴様もだ”アナ・メサイア”!
例によって貴様もオリジナルの存在をずっとどう倒すか考えているのだろうが、もはや考えずともよいのだ!
オリジナルはこの我が葬ってやるから安心しろ! さあ、今すぐ楽にしてやる!」
力が集中!
「げっ、やば――」
集中して生成されたエネルギー弾はリリアリスめがけて発射!
リリアリスは慌てて避けたがしかし――
「きゃあ!」
背後でうずくまっていたシオラに被弾!
「しまった!」
「甘いぞ!」
すると、そのエネルギー弾を巧みに操り、自らの背後からこっそり襲い掛かってきていたガルヴィスめがけて命中!
「ぐはあっ! クソっ……」
ガルヴィスは倒れた。
「ふん、貴様はよく避ける女だな、流石は”アナ・メサイア”。
だが、ほかの者はもはや避けられまい?
なまじ仲間思いすぎる貴様のその性格が災いしたようだな!
仲間など捨て置けばいいものを! 何故、そいつらをかばうのだ!
我々は我々らしく、常に自らのことのみ考えておればよいのだ!
”世界に仇名す存在”らしくな!」
”世界に仇名す存在”!? こいつらの本性はそういうことか、リリアリスは考えた。
するとリリアリスは言った。
「いいじゃないのよ別に、そういうことをしてみたくなるのが人の性分ってやつでしょ?」
それに対してメルターバーグは――
「何を言っているかさっぱりわからんが――まあいい、元々”アナ・メサイア”とはそういうやつか。
ふっ、無駄話が多すぎたようだな、そろそろ終いにしようか――」
メルターバーグは力を集中! それが複数個発生し、リリアリスに狙いを定めていた!
「次は避けられまい――」
リリアリスめがけて発射!
「いやあっ!」
リリアリスはその場で崩れ落ちた――
「ふっ、他愛のない――」
そして、メルターバーグは力をためた――
「さて、これで終わりだ。
お前も知っての通り、この部屋全体のゴミを掃除するための法で始末してやろう――」
ところが――
「痛っ! なんだ!?」
メルターバーグは攻撃が飛んできた方向を向いた!
「なっ、貴様! いつの間に!?」
そこにはなんと、精神体のあの存在が立ち上がっていたのである。
「私にとどめを刺さなかったのが運の尽きというやつだ。
お前は今のリリアリスの抵抗で十分に力を使いすぎている、
私のつけ入るスキも十分だろう」
何!? リリアリス!? まさかこの女! メルターバーグはリリアリスのほうへと向くと、そこにはリリアリスがいなかった。
「間に合ったわね! まさか、こんな展開になるとは思わなかったけれど。」
リリアリスは膝をついたままそう言うと、話し相手はアリエーラ、彼女は言った。
「やられたフリして彼女を助けに行ったらどうかっていうリリアさんの読みが当たりましたね。
確かにこのエンブリアにおいて単騎で”インフェリア・デザイア”に挑もうなんて言う戦士、
どう考えても只者じゃありませんからね――」
なんと! またしても策士リリアリスかっ! つくづくだな! やっぱりお前は孔明か!
「私が”アナ・メサイア”だと信じ込んでいれば弾の無駄遣いをどんどんしてくれると思ってね。
例のチャージ技も結構な大技、弾数が限られているだろうし、そこで中断されようものなら最悪よね。
2度ならず3度も妨害され、そろそろ向こうも余裕がなくなってきているハズよね。」
それに対して精神体の戦士は反応した、精神体はどうやら女性のようだ。
「ふっ、相変わらずの冴え具合ねリリアリス。
どうやら記憶がないようだけど、それでも相変わらずの策士っぷりね、恐れ入るわ。
でも、そのおかげでコイツを斃すことができる――さあ、覚悟なさい!」
女戦士はメルターバーグに立ち向かった!
ガルヴィスは気が付くと、昔懐かしい光景がそこには広がっていた。
「なんだここは!?」
起き上がると自分はベッドの上に横たわっていた。
しかし、そのベッドと言えば――
「おっ、起きたな坊主!」
そして、それを呼ぶそいつの声――何もかもが懐かしかった。
「おい、まさかここって!」
ガルヴィスは立ち上がり、慌てて部屋の外に出ると、そこはとても熱い気が漂う鍛冶の現場だった。
「あちっ! なっ、何がどうなってるんだ!?」
だが、その工房にいたのはガルヴィスが知る光景のその人ではなく――
「気付いて早々騒々しいやつね、もう少し休んでたらどう?」
そこにいたのはリリアリスだった。彼女は剣を打っていた。
しかし、彼女と共にいたのはガルヴィスにとっては忘れもしない人物だった。
「ははははは! 言われちまったなガルヴィス!
確かにこの嬢ちゃんの言うとおり、お前は寝てたほうがいいぜ、相当ひどい攻撃を食らったみたいだからな――」
忘れもしない人物、ガルヴィスは”おやっさん”と呼んでいた人物で、
フェニックシアの孤児の時代にお世話になった人である。
おやっさんにそう言われると――ガルヴィスは意識がぼんやりとしていた。
そして我に返ると、身体が崩れ落ちそうになっていた――
「おとと、言わんこっちゃないよ。
まったく、いつも無茶ばっかするんだからこの子は――」
ガルヴィスにとっては忘れもしない人物その2、こちらは”おっかさん”である。
おっかさんになんとか助けてもらい、ガルヴィスは椅子に座り込んでいた。
「悪い――」
「まったく、手のかかる子ねぇ……」
そう言われてガルヴィスは心中複雑な思いだった。