エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第2部 果てしなき旅へと連なる試練 第5章 天使の再起動・最終章

第99節 黄昏の入り江、魔界への入り口

 そして、何人かはライトニング・リュースへと搭乗すると、さっそくフライトに出発。ところが――
「やっぱダメね、西に向かうにつれて揺れが激しくなってきた。」
 どっ、どういうことだ! ガルヴィスは膝をつきながら訊いた。 例によってティレックスたちは膝をついているが、例によってリリアリスたちは宙に浮いていた。 そう、せっかくの空の旅を満喫するほどの余裕はなかったのである。
「おそらくエーテル場というか、マナの影響ね。 力場が濃いエリアの影響でエンジンが暴走気味になっているのよ。」
 暴走ってまずいんじゃあ!? 何人かがそう言うとリリアリスは答えた。
「もちろん、一定以上のマナ・エネルギーは受け付けないようになっているから、その点は大丈夫。 でも、マナが多くなっていくとその分だけエネルギーをより吸収して消費しようとする力が働いて、 その反動で振動を生み出してしまうみたいね。 でも、とにかく今回はこれで我慢してもらうことにして、次の課題にしておくわね。」
 テスト・フライトしたんじゃなかったのか! 何人かはそう言うとリリアリスは言った。
「したわよ。アルディアスからエネアルド上空、そしてキラルディアまで行ってきたわよ。 でも、いずれもマナの力場がそこまで多くない場所ばっかりの通過だったから、忘れてたわね。」
「じゃあなんでマナの力場が多い場所は通ってないんだ!」
 ガルヴィスが蹲りながらもんくを言っていた。
「純粋にそんな場所がエンブリアには多くないからってのと、そして純粋に時間がなかったから。 テスト・フライトの目的はそもそもフライトができることと、マナ・エネルギーが少ない力場でも安定してフライトできることだけ。 エンジンには安全装置がついていてマナ・エネルギーが多い場合の制御もかかっているし、 それを踏まえたエンジン単体テストもパスしているから今回は仕方なく省略したのよ。 そもそも飛行技術の復刻自体が最終目的はフェニックシアでなくて世界各国で世界共通エネルギーでの使用を見越したそれだから、 エンジンについてはあくまで二の次三の次よ、だからちょっとぐらい我慢しなさい。」
 何がちょっとだ、無茶言うな――何人かは項垂れていた……いや、状況的に項垂れるしかない状況だが。

 地獄のフライトの末、神殿周りはなんだか不気味に静まり返っている状況だった。 リリアリスたちのいる場所はまだライトニング・リュースの中だが、神殿のある島よりも高度を飛んでおり、 島の様子を見ていた。
 また、意外にも上陸しようとしているその島の大きさがかなり大きめであることにも気が付かされた。
「振動が落ち着いたのか? マナの力場を抜けたのか?」
 クラフォードが狼狽えながら訊くとリリアリスは答えた。
「いいえ。 振動はそれだけでなくてスピードを上げた際にも発生するようね、今は速度を落としたから落ち着いたんじゃあないかしら。 今は上陸地点を計算しているから少しだけ待ちなさい。」
 するとリリアリスは――
「あら、ちょうど終わったわね、上陸地点はあそこ――」
 何かに気が付いた、それは――
「あそこって、まさかの”黄昏の入り江”じゃない?  確かに、あの神殿もその近くだったからちょうどいいのかも――」
 ん、それってもしかして――カイトは訊いた。
「”黄昏の入り江”ってことはもともと陸地がないところにこいつを停泊するってことか。 ということはつまり、フェニックシア復活を考えて船を予め逃がしておく必要がないってことかな」
 そのようだ。
「海の船についてはいつもソフトに押し出されていたが、あれは海の上っていうだったからある程度は大丈夫なんだなと思っていた。 今回は空の船だから同じ手が通用するのかと思ったが、そもそも心配がないところに着けられるってことか」
 クラフォードが言うとリリアリスは頷いた。
「みたいね。とりあえず、接岸するよ――」
 リリアリスは意を決して”黄昏の入り江”へと船を着けた。

 フェニックシア大陸に着くと、そこはなんだか不気味なぐらい瘴気漂う――まさに魔界と言っても過言ではないような恐るべき島だった。 そして、奥に構えている封印の神殿は魔王城か? そんな感じの様相だった。
「これは想像以上の展開だ、上空にこんなものがあるだなんて。 まさにエンブリア編ラストダンジョンって感じだな。 まさか、勇者の剣がないと入れないとか言わないだろうな?」
 ヒュウガがそう言うとリリアリスは頷いた。
「まさにそんな感じね、初っ端からいきなりボス戦が始まりそう。 私らは今後、異世界編に突入するわけだから、いよいよ物語も大詰めってところね。」
 ディスティアは力強く言った。
「つまりは佳境というわけですか。 いずれにせよ、どこまでも付き合いますよ!」
 それとは裏腹に、クラフォードとティレックス、そしてアーシェリスは頭を抱えていた。
「やれやれ、とんだ物語に付き合わされるハメになるとはな――」
「ホントにさ、こんなことになるなんて――」
「もう、俺の知っている世界の話じゃない――」
 それに対してイールアーズは――
「ふっ、つまりはあそこに俺らの世界を脅かしている大ボスが構えているってワケか。 上等だ、やってやろうじゃねえか……」
 ……こいつ。
「これまでの祠の目的からすると大ボスが構えているとは限らんが、とにかく行けばいいんだろ?  だったら、んなとこで話なんかしてないでさっさと行くぞ」
 と、ガルヴィスが言った。まあ、それが正論だろうか。
「んだよ、いねえのかよ!?」
 イールアーズがそう言うとクラフォードが言った。
「この様相からすると居る可能性はなくはないが、これまではあくまで”祭壇”が目的だったからな。 ”祭壇”の前に番兵程度の敵ぐらいならいるとは思うが、それ以外では可能性は100%じゃねえってことだ」
 だが、イールアーズは前向きだった。
「ふっ、つまりは何かしらが確実にいるってワケか。ならそれで十分だ、敵とあらば全部ぶっ飛ばしてやるぜ」
 ……こいつ。