「以上よ。」
システム・ルームにて、リリアリスは話をしていた。その相手はもちろんフローナスの大総統である。
「なるほど、これは素晴らしいアイデアだ。
にしても魔法エネルギーとは……そこいらのエンチャント品を作るのならともかく、
まさかこのような大掛かりなものにまでその技術を転用するとは――」
それに対してリリアリスは言った。
「エンブリアでは魔法エネルギーであんな機械を動かすなんてあんまり一般的ではないみたいね?」
大総統は答えた。
「私の知る限りではそのような例はない。
その理由ははっきりしていて、エネルギーの維持ができないためだ。
航空機の場合は大掛かりなものを浮かすという都合上、
まずは浮かせるために膨大なエネルギーを消費する時点で終わってしまう。
だからはつまり――お前だけが知る特別なアルゴリズムとやらがキーと言うわけだな……」
それに対してリリアリスは「知りたいって言うの?」と訊くと、大総統は答えた。
「ふっ、いいや、そもそも魔法動力かつ動力を動かす仕組みもそれ専用と言っていたな。
仕組み自体も複雑で、さらには膨大な魔法エネルギーを要するとも言っていたか。
極めつけはほかに使用している国は何処にもおらず、精霊クラスのエンジニアが必要とも言っていたか。
わが国はエンチャント素材こそ豊富だが、魔法エネルギーの扱いや、
ましてや精霊等という存在についてはそもそも要件を満たしていないものでな。
当然、そちらからのエンジニアを受け入れるという用意もあるが――
動力についてはこちらで考えたほうが建設的のようだ」
大総統はさらに続けた。
「だが、それを差し置いても飛行原理については素晴らしいものを見せてもらった、
これを利用してわが国でも航空機産業を本格的に始動しようと考えている」
リリアリスは照れたような態度で言った。
「いえいえ、フローナスの飛行原理の基礎があったからこそ”ライトニング・リュース”ができたのよ。
でなければ未だに私らは地面を這いつくばっていたに違いないわね。」
あの乗り物は”ライトニング・リュース”というのか、ティレックスは考えていた、
ライトニングはわかりそうだが、リュースとは?
それにしても、リファリウスは何処に行ったのだろうか、
ティレックスはそう思ってテラスに行くと、そいつはいた。
「おや、どうかした?」
ティレックスは答えた。
「いや、リリアさんが下でフローナスと話をしていたけど、あんたはどうしたんだろと思ってな」
リファリウスは答えた。
「私は連合国向けにいろいろと考えている最中だよ。
ちなみにだけど、やることがどうやら多いらしくてね、私はフェニックシアにはいけなくなった。
だから次回は姉さんに全部任せることにするよ。」
なんでそんな急にどうして? ティレックスは訊くと――
「いや、だから、やることが多いからだってば。
行きたいのは山々だけど、これはちょっとやばいね――」
いや、確かにそう言ったけど――
「それに……あの神殿はちょっと辛いところがある、だからそれを含めてもパスしておこう。」
そういえばそれもそうか、だったら無理強いさせるわけにもいかないか。
すると、そこへどういうわけか、ヒュウガの姿が――
「あれ!? ヒュウガ!? あれ!? お前、下にいたんじゃあ!?」
そう、ヒュウガはリリアリスと一緒にいるルルーナのはずである、ティレックスの中ではそう認識していた。
だがそれがどういうわけか、今目の前にヒュウガの姿が?
「ん? なんだ? 俺がどうしたって?」
いや、あり得ない! なんでヒュウガがここに!? ティレックスは改めて訊ねた。
「何が何だかさっぱりわからんが――どういうことだ?」
ヒュウガはリファリウスに訊くと、リファリウスもお手上げの状態で「さぁ?」と答えていた。
「どうしたのティレックス? 何かあったの?」
と、後ろからユーシェリアが訊くとティレックスが答えた。
「えっ……だって、下の階にヒュウガいたよな? なのになんでここにもいるんだ!?」
それに対してユーシェリアも首をかしげていた。
「ん? どゆコト? 下の階にヒュウガさんいたの? 私は見てないけど――」
いや、一緒にいたじゃんか! ティレックスは慌てふためいていた。
すると――
「どうかしましたか?」
な、なんと! 後ろからルルーナが現れた! そして彼女はヒュウガと対面した――
「あら♪ ヒュウガったらここにいたのね♪ どこに行ったのかと思っちゃった♪」
と、ルルーナは楽しそうに言うと、ヒュウガが言った。
「姉さん、いたのか――」
嘘だろ……!? まさかこの2人って同一人物じゃなかったのか……!? ティレックスは冷や汗をかいていた。
だが、そうだとするといろいろとつじつまが合わないことがある、ティレックスは悩んでいた。
それよりも、
「あんた、行かないって?」
リリアリスがリファリウスに訊いた。
「わかるだろ、姉さん。今回は交代だ、姉さんがフェニックシアに行ってほしい。」
リリアリスは考えながら言った。
「まあ、行くけど――来ないのね?」
「神殿に入るのがちょっと怖くてね、私はここから姉さんを介して見ていることにするよ。」
「怖いくせに見るだけ見るのね。」
「まあね、結末だけはしっかりと見ておこうかなと思ってさ。」
こちらもこちらでなんだか異様な光景だった、似たような2人が話し合っている光景――なんだか不気味にさえ思えた。