数日後、東の方から何やらとてつもないものが現れた。
「何っ!? あれはいったいなんだ!?」
その日のクラウディアスは大変なことになっており、多くの者がクラウディアスの東側を眺めていた。
東の方から現れたのは、エンブリアにおいては失われていたハズの空飛ぶ乗り物だった。
「マジかよ!? どうなっているんだ!? なんであれは浮いているんだよ!」
グラエスタにあるグレート・グランドの大使館、イールアーズは窓から眺めていてパニックになっていた。
「あれがそうか……本当に、とんでもないものを作る連中だな――」
クラフォードは唖然としていた。
さらに、クラウディアスのお城にて――
「わー! 大きーい! 早ーい! すごーい!!」
エミーリアがお城の庭で興奮しながらそれを眺めていると、一緒にいるレミーネアが気が付いた。
「あれ? クラウディアスの北のほうに向かっている感じがしない?」
それの進行方向はクラウディアスの北、ウィンゲルの町の方向に向かっているようだった。
「行こう!」
お城の3階にて、ラシルはスレアにそう言って促した。
「空飛ぶ乗り物……夢物語だと思っていたが、まさか本当に――」
ウィンゲルの町の人だかりは空飛ぶ乗り物というまさに夢のような乗り物を一目見ようと考えている人の群れによってすし詰め状態に、
ウィンゲルの町といえばクラウディアス城の背後にある山の上にある町であり、研究所があったり農耕地があったりする以外は特段珍しいものはない。
そういうこともあり、この日のウィンゲルの町はまさにここ一番の人の数を観測していたことになる。
「狭いな……、山道にまで人だかりとか勘弁してほしいもんだ――」
スレアとラシルは山道をゆっくりと歩いて行った。
「魔物の気配も一切ありませんね、空飛ぶ乗り物の気配を察して逃げてしまったのかもしれません」
ラシルがそう言うと、そのうちレミーネアの姿が。
「あら、ラシルとスレアじゃん、あんたたちも来たのね」
スレアが答えた。
「まあな、一応はクラウディアスの異常の一つに数えられる出来事だからな。
にしても、本当にできるとは――」
エミーリアが楽しそうに言った。
「ねえ! 流石はお姉様よね! こんなのまで作ってしまうだなんて!」
すると、その後ろから続いてクラフォードとイールアーズがやってきた。
「お前たちも来たのか……」
スレアがそう言うとクラフォードが答えた。
「ああ。それにしてもすごい人だかりだな――」
「クソっ、こいつら――どこから湧いてきやがった――」
イールアーズはイライラしていた。まあ、そう言うな。
6人はそのまま空飛ぶ乗り物のある場所へとやってきた。
「あれ? 着陸しないのか」
スレアは眺めていた、その乗り物はちょうど谷になっているところに入り込んでいたが、
その谷底から宙に浮いていた。
さらにスレアたちのいる場所からはちょうど橋が架かっており、
乗り物の入り口らしき場所へとつながっているようだった。
そして、ブリッジの入り口付近にはフラウディアがいた。
「やっぱり来ていたんだな」
「フラウディア!」
スレアとエミーリアがそう言うと、フラウディアが楽しそうに答えた。
「あっ、スレア! エミーリア! それからみんな!
お姉様から連絡もらっていたからいち早く来ていたんだよ!」
連絡って……そんな連絡、いつ……すると、
「一応、あれが来てシステム・ルームに行ったらウィンゲルに着陸するとかモニタに書かれていてだな――」
と、クラフォードが言った、そういえば――スレアとラシルは反省していた、
そういえば通信の情報を一切見ていない。
「あっ、見て見て!」
と、エミーリアが指さしながら楽しそうに言った。
乗り物のほうからブリッジらしきものが伸びていた。それを見たクラフォードは……
「マダム・ダルジャンのやつを彷彿させるな」
確かに。やっぱりあれにもそういう機能が付いているのだろう、容易に想像がついた。
そして、ようやく搭乗員たちが外へと出てきた。
「とりあえず、テスト・フライトは無事に終了ね。」
リリアリスが出てきてそう言うと、ティレックスが後から続いて出てきた。
「俺……まだすごいドキドキしてる――」
彼はなんだか興奮していた。
「お姉様たちってすごいよね! あんなの作っちゃうんだ!」
ユーシェリアも楽しそうだった。
「ふふっ、ユーシィちゃん♪ ありがと♪」
ルルーナも得意げだった。そういえばあの人もいるのか、クラフォードは悩んでいた。
「あっ! フラウディア! 見て見て! とうとう出来たんだよ!」
ユーシェリアが楽しそうに言うとフラウディアも楽しそうに答えた。
「うん! 本当にすごいよね! まさか本当にこんな乗り物ができるだなんて!」
するとリリアリスは言った。
「さあさ、それよりも早く報告しないとね。」
報告? ラシルは訊いた。
「技術提供してもらったフローナスよ、向こうでも経過を教えてほしいって言ってたからね。
テスト・フライトも無事に終わったことだし、いろいろとやることから片付けないと。」
そう言うと、リリアリスの一団はそのままお城のほうへと向かっていった。
そして女性陣もついていく。
残された男性陣――
「なんつーか、大掛かりな機械なのに音がほとんどないのがすげーよな」
スレアがそう言うと、クラフォードが言った。
「俺もそれ思った。言われてみればマダム・ダルジャンのそれもすごい静かだったな、
うち(ティルア)で持っている船なんかに比べても全然静かだ。
だからこの空飛ぶ乗り物のこれも多分あの女ならではってところなんだろうなきっと――」
そしてその近くにあるウィンゲルの研究施設、クラウディアス王立研究所からラトラが現れた。
「さてと、そろそろ来るハズなんだけど――」
何が来るんだろうか、ラシルがそばによって話しかけた。
「あっ、みんな来ていたんだ。
それにしてもすごい人だかりだなあ、これは作業が始まるまでに時間がかかりそうだぞ……」
ラトラがそう言った、どういうことだろうか、スレアが訊いた。
「あの乗り物にいろいろとデバイスを乗せるんだって。
でも人が多いからね、運搬用のトラックがここまで来るのに結構時間かかるかも」
そういうことか……クラフォードが頷いた。
「いつもおんぶに抱っこだからな。
もちろん、向こうからの要求があれば、こっちからやってやることも多いが、
どちらかというと、むしろ俺らのほうがやられっぱなしだしな――」
と、クラフォードはイールアーズに促すと、彼は言った。
「ちっ、仕方がねえな、こういうことは今回限りにしてもらいたいもんだ」
どういうことだ、スレアは言うとクラフォードはイールアーズがどこかに行ってから言った。
「簡単に言えばクラウディアスの特別執行官様への恩返しってやつだ。
イールもああ見えて結構いろいろと世話になっているからな、
だからどっかで借りを返したいだろうしちょうどいい機会と思ってな。
言っても世の中持ちつ持たれつ、俺は別になんでもいいんだけどさ」
そう言うとクラフォードもイールアーズについていった。
そして、残されたラシルとスレアは顔を見合わせて言った。
「これもクラウディアスの仕事ですよね?」
「だな。仕方がない、やってやるか――」
2人がその場を去ると、ラトラはにっこりとしていた。
「さてと、僕も改めてマニュアルの確認をしておかないとな――」