一方そのころ、アリエーラさん率いる女性陣は次なるエンブリスの祠を攻略していた。
今回はスクエアから島が隣接していることもあってか、
スクエア復活後に祠が直接見えるかどうかを既に確認していたため、場所は突き止めていた。
無論、すぐに行くという選択肢もあるにはあったのだが、”インフェリア・デザイア”が襲撃してきていたこともあり、
リファリウスの妙案でわざとタイミングをずらしたのである、その効果のほどは何とも言えないところだが。
といったことで――
「全部予定通りに事が運んだわね!」
フロレンティーナさんがそう言うとアリエーラさんはにっこりしながら返事した。
「はい! 難なく通過しましたね!
ですが、”インフェリア・デザイア”はなんらかの策を講じていること自体は確実でしょう、それには注意が必要です。
ともかく、あとはフェニックシア大陸だけのはずです、とりあえず見てみましょうか。」
女性陣は外へと出てくると、周りの状況に非常に驚いていた。
周りにはなんと、ローブをきた人々がたくさん――
「えっ、何ここ!?」
フロレンティーナさんは驚いているとアリエーラさんは気が付いた。
「エンブリス神殿!
そうでした、エンブリスの祠は神殿の内部にあるという話でしたね――」
だがこの状況、どうしようか。
エンブリスの僧たちが驚いた様子で女性陣を見つめていた……
すると、御殿の奥から高僧らしき人物が現れるとアリエーラさんたちを丁寧に促していた。
接客の間、高僧は話をした。
「お話はグラト氏から伺いました。
まだ要領を得ぬ状況ではございますが、
あのフェニックシアがなくなった状況を奪回するということでしたらエンブリスとしても協力を惜しみません!」
なるほど、グラト氏はそう言う説得の仕方をしているのか、アリエーラさんはそう思った。
さらに高僧は話を続けた。
「それにしてもエンブリスまでもが同じ目に合うとは――
否、エンブリスだけではなく、セラフィック・ランドのほとんどの都市までもが――」
するとアリエーラさんは訊いた。
「あの、そこでなんですけど、フェニックシア大陸がどのあたりにあったのかご存じでしょうか?」
高僧はにっこりとしながら答えた。
「もちろんです! ”ちょうどいい場所”をご案内いたしますのでどうぞ、こちらへ――」
そこはロープウェイ乗り場の入り口だった。
だが、フェニックシア大陸が消えて以降、その機能は完全に停止していた。
「浮遊大陸なのにロープウェイで渡るの?」
消えたのはかなり昔の話ということもあってかエンブリア民でも知らない者も多いらしく、ユーシェリアはそう訊いた。
「はい、私も3回ほどあちらに行ったことがございます。
実際、ロープウェイを通すなどとはなかなか難しいということで一度は計画自体がとん挫したのですが、
1,000年ほど前に現れたエンブリスの使いの手により実現したのです、まさに神の御業と言えましょう――」
1,000年ほど前のエンブリスの使い、またしても産業の神が絡んでいるようだった。
それを言われると彼女らはすぐに納得した、リリアリスなら作れてもおかしくはないという発想からの納得である。
だが今はフェニックシアは消滅し、行くすべはない。さて、どうしたもんだかと考えていると――
「あっ、見てください! あれ!」
シオラが何かに気が付いて上空を指さしていた、それは――
「あれはまさか!」
高僧はすぐに気が付いた、上空にあったのはまぎれもなく――
「まさか”封印の神殿”!?」
封印の神殿? フロレンティーナさんは訊いた。
「フェニックシアで地中に埋まっている状態で発見された神殿の遺跡です!
年々なぜかフェニックシアの地層が隆起して地上に姿を現すようになったのですが、
まさか此度は神殿の姿だけで相まみえることになろうとは!」
ちょっと待った、フェニックシアの祠って発見されていないんだっけ。
でも神殿が姿を現した、ということはまさか――アリエーラさんは考えていた。
それからほどなくして、アリエーラさんたちはクラウディアスに戻ると1階の会議室で話をしていた。
「封印の神殿……神殿と言えば――」
リファリウスは考えているとガルヴィスが頷いていた。
「あれしかないだろ、あの忌々しい神殿だ」
そう、あの出来事が起きた神殿だった、フェニックシア勢にしてみれば忘れもしないあの神殿である。
「でもよ、何故あの神殿が出てくるんだ?
だって、フェニックシアってまだ封印されているんだろ?
それに祠はどうしたんだ?」
シャディアスは悩んでいるとヒュウガが言った。
「フェニックシアではあの神殿が祠扱いってことだ、それ以外に言いようがないだろ」
カイトは頷いた。
「結果論だけど、それしか考えようがないよね」
シエーナは考えながら言った。
「まさに因縁の地ということですかね。
恐らく、ここまで来たからには敵も本気だと思います、心してかかりましょう」
全員は頷いた。確かにここまで来たからにはヤバイのが待ち構えているに決まっているだろう。
「でも――どうやって行くんだよ? 空を飛ぶ手段ってできているのか?」
シャディアスは言うとカイトはリファリウスに促した。
「えっ……ああ、とりあえずそれらしいものはできているよ――」
なんだ、どうしたんだ? ガルヴィスはそう訊くとリファリウスはなんだか悲しそうな顔をしていた――
「ごめんよ、しばらく一人にしてくれないか――」
リファリウスはそう言ってその場を後にした。
「こんな時に――まあいい、あれじゃあ流石にどうしようもない。
俺もちょっと出てくるな」
ガルヴィスはそう言ってどこかへと去って行った。
彼としてはらしくない行動だが、あの神殿での一件については彼自身も相当堪えている、
それだけにその時の光景を直接目の当たりにしているリファリウスにとってはもっとだろう、それは流石に察していたガルヴィスだった。
すると――
「アリ、行ってあげたら? こういう時こそあなたの出番でしょ?」
フロレンティーナさんはアリエーラさんに対して優しそうにそう言った。
「そうですね、私、行ってきます――」
アリエーラさんは頷くと、明るく振舞いながらその場を後にした。