エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第2部 果てしなき旅へと連なる試練 第4章 脅威たちの襲来

第87節 知の使い手、圧倒的な戦術

 すると、ゼドラスめがけて風の刃が放たれた。
「無駄だ、この空間でのそれはものの役にも立たん」
 ゼドラスは動作を止めることなく魔法を打ち続けた。だが、
「何っ、またか? 無駄だといっているだろう?」
 再び、ゼドラスの元へ風の刃が飛んできた。言うまでもないが、リファリウスの技である。
「大丈夫、私の技は魔法をそのままぶっ飛ばす仕組みだからね、だからたとえ何であれ効果はちゃんと届くはずだ。」
 ゼドラスは言った。
「ふん、だが、たとえそれが通ったとて、我に通用しなければ同じことだ。 無駄なことなどせずに終わりゆく命の思いを馳せていることだ」
 と、再びゼドラスは魔法を構えようとしたが、それに対して再びリファリウスが風の刃で横やりを挟む。
「通用はしないけど妨害力だけはいっちょ前なんだ、せっかくの機会なんだし、最期の悪あがきぐらいさせてよ。」
 するとゼドラスは笑っていた。
「ククク……ハハハハハ! 確かにその通りだな! だが邪魔などさせぬわ!」
 するとゼドラスはその黒い気を操り、リファリウスの元へと襲撃させた!
「うわっと! 危ない危ない、そんな攻撃も持っているのか――」
 ゼドラスは得意げに言い放った。
「ふん、相手の力を見誤らぬことだ。 それに……どうやら貴様以外はもはや虫の息、先に貴様を始末すれば残りを掃除するのもたやすいということだ、 つまり、貴様に的を集中すればよいということがわかっておる。 だが貴様は、それがわかっていたとてどうすることもできん! 覚悟することだ!」
 ゼドラスは再び黒い気を集中! するとその時!
「そんなことはさせません!」
 アリエーラさんが魔法を発動! リファリウスに防御強化呪文を放った! しかし――
「ほほう、そう来たか。だが、そのようなものは――」
 ゼドムスはなんと、爆散させようとしていたその黒い気を膨張させ――
「くっ、しまった、ちょっと早すぎたか!」
 リファリウスは焦っていた、そして――
「詰めが甘い! さあ消え去れ!」
 そして黒い気が解放された! ところが――
「ぐはあっ! なっ、なんだ!?」
 ゼドラスはその場でいきなり弾き飛ばされた!
「行きますっ!」
 そのスキをついてアリエーラさんは相手のマナをドロー!
「くっ、小癪な! その程度のもので――」
 だが、ゼドラスはそのまま地に足をつけることができなかった!
「なっ、なんだ!? くっ、身体がいうことを利かぬ!」
 そして、
「今だ! カスミん!」
 リファリウスはありったけの魔法の力を振るい、その力をゼドラスの後ろから迫ってきていたカスミにパス!
「なっ!? いつの間に!?」
「苦しまないようにぶち殺す」
 カスミは抜刀、そしてリファリウスが放った魔法を受け止めると、そのまま魔法をまとった刀の一撃でゼドラスの首を跳ね飛ばした!
「この空間で剣振るうの重い――」

 そして、引き続き祭壇に向かう道中。 言うまでもないが黒い霧は既に晴れ、ほかのみんなも既に回復済みである中、クラフォードたちは当然のごとく質問をぶつけていた。
「で、一応、事の一部始終は見ていたつもりだが、 何がどうなってああなったのかが全然わからん。説明ぐらいしてくれるよな?」
 ヒュウガが言った。
「解呪効果を放った時にはじけ飛んだな――てことはつまり、いよいよやりやがったか」
 何を? ガルヴィスは訊くとリファリウスは答えた。
「やりやがったもなにも、それしかないからね。 今回の課題は如何にして攻勢に転じるかこれしかりだ。 何とかしてスキを作りたいが、相手の攻撃が一方的かつ激しすぎて、 キミたちも知っての通り普通の方法じゃあまず無理だ。 じゃあどうすればいいかと考えたときに、物理的手法同様に相手の攻撃をいかにしてガードし、攻撃の手を緩めるかを考える。」
 魔法をガードして相手をひるませる――とはいうが、接近攻撃でもなし、そのようなことを実現させるのは困難。 じゃあ、それを実現させるにあたり、一体何をしたのか――クラフォードはそう訊くとリファリウスは答えた。
「そこで考えたのが解呪トラップだ。 みんなもよく知っている”スペル・プロテクト”系の能力を利用したんだ。」
 名前の通り、強化魔法などを分解する”ディ・スペル”などの魔法があるが、 ”スペル・プロテクト”はそれに抵抗するための魔法として知られている。
「でも、相手の魔力は圧倒的に高かった、あんたの魔力も高いんだろうが、 それでもあんたらが苦戦していたところを見るに、あんたらの”スペル・プロテクト”だけでは力が足りない気がするんだが――」
 ティレックスはそう言うとリファリウスは頷いた。
「足りないことはわかっている。 現にアリエーラさんの防御魔法だけど、ほとんど持ってかれてしまった、それぐらい効果がなかった。 でも、私が利用したのはあくまで”スペル・プロテクト”の効果ではなく、その魔法による効果の反動だ。」
 反動? それに対してシオラが言った。
「確かに”スペル・プロテクト”がかかっている相手に”ディ・スペル”をぶつけると、 無効化の有無にかかわらず何かが弾き飛ばされるような音がしますが、それでしょうか?」
 リファリウスは頷いた。
「まさにそれだよ。 解呪呪文に対して強い反発力がある”スペル・プロテクト”だけど、それを改良したんだ。 名付けて”ディ・スペル・リフレクション”、”スペル・プロテクト”の効果に加えて解呪効果を使った相手を弾き飛ばす効果があるんだ。」
 また酷い魔法を考えるやつだな、これだからこいつ嫌だ。 つまり、アリエーラさんの”オーロラ・フィールド”による守護魔法はいわばフェイク、 無論、より強力な守護魔法であることから相手は解呪を狙おうとするのは必至、 つまりは相手が解呪魔法を使うことを誘発させるための罠そのものだった。
 無論、それを見越してリファリウスは自分に予め”ディ・スペル・リフレクション”を使用しており、 そして狙い通りゼドラスは解呪呪文をしてくると、見事にぶっ飛ばされ、大きなスキが生まれた。
「あの規模の解呪魔法を私に集中させたからね、勢いよくはじけ飛んだよ、想像以上だったね。」
 リファリウスは得意げに言った。
「それでブローを与えたのはいいが、そのまま相手の身動きが取れなかったのは、それは?」
 アリエーラさんが説明した。
「リファリウスさんの使う”パニッシュ・ドロー”を覚えておいででしょうか、あれと似たようなものを私が使ったのです。 リファリウスさんみたいに相手の体勢が保てなくなるほどのマナを奪うことはできませんが、 中途半端に奪うことでマナの状態を不安定にすることができます。」
 そして、不安定にすることで重力場が一時的に崩壊してしまうのだという。 そう、それによって相手は重力の檻から解放され、うまい具合に体勢を整うことができなくなっていたのである。
「なーんかあんたらさあ、そろいもそろって酷い能力を備えているんだな――」
 ティレックスは呆れながらそう言うとリファリウスは得意げに言った。
「そんなのお互い様だよ。 だって、相手だってあんな魔力による暴力で一方的に殴ってくるんだ、 そっちがその気ならこっちだってやるしかないだろう?」
 まあ……それもそうなんだが。